空の原・月の海

 

記憶とは幻想である
レイ・ブラッドベリ
が言った

わたしは想像した

存在という砂粒が
前方から飛んできて
一瞬人の形になり
間を置かず
背面から後方へと
散ってゆく

わたしが
ここに在るのは
ほんの束の間
未来と過去の間

そして残像が
あたかも
実存するかのように
存在し続ける

私であった砂は
いったいどこへ
霧散したのだろう

ウソのように青い空と
マヤカシのように
美しい花々が彩る
空の原か

夜の菌糸類が点滅し
カラスウリの花が
白いレースを纏う
樹海の奥の
月の海か

砂が築いた幻の世界は
いつも
わたしの後ろにある