水素の軽さになって

 

フィンとマスクをつけて
地球上の異世界へと
潜りゆけば
海の天井はゆらゆらと
太陽の光芒と踊る

イソギンチャクと戯れる
オレンジ色のクマノミ

海面近くの明るみを泳ぐ
黄色い頬のゴマモンガラ

冥色のドロップオフに並ぶ
銀色のサメの群れ

音のない世界の振動と
重力のない世界の波動を
海の生き物たちと共有して
宇宙が生まれたときの
水素の軽さになって遊ぶ

頭上の光に誘われて
海面を突破すれば
遠くに見えるのは
揺るぎなき水平線

白サンゴの砂浜では
太古から変わらぬ
波折りの音が
悠久の時間を
刻み続けている