時わすれの景色

 

しくしくと降り続いた雨が
止んだ

白練色の雲が
大きな龍に従うように
山腹を横切った

山間の家々が
霧の向こうに
閉じ込められた

雲が山を覆い隠すと
灰白の空に
逢魔国(おうまがくに)に属する
見知らぬ景色が現れる

ここではない
どこか
紗の国の色合い

それは
夜が訪れる前の
薄墨色の空に
やがて
溶け失せてゆく
時わすれの景色