『まぼろしの国』
そんな印象の曲(tunes)に導かれる世界
作者は常田大希(tuneta Daiki)
などという言葉遊びはさておき…
つかもうとしてもつかめないもので満たされている都会
それはTOKYO
1曲目の Tokyo Rendez-Vous がまぼろしの国への入口となっている
そこは異次元、まぼろし次元
いくつかの曲を聴くうちに
歌詞の意味をつかもうとするのをやめて
ただ音楽空間に浮遊している自分に気づく
宇宙飛行士が味わう無重力とはこんな感覚だろうか
などと思いつつ
ときどき漂ってきたリリックを捉えてはみるが
叙情的なイメージをひらめかせた途端に霧散する
言葉の意味を考えることがただの徒労に思えてくる
絡み合うような旋律はあたかも
色々な手法の絵画を思い浮かべるように編まれていて
精緻な織物の一つ一つの織り目もまた観察に値する
井口理(Iguchi Satoru)のボーカルはそこにうまく織り込まれ
ひとつの特異な楽器として
心地よいムジカ・インストゥルメンターリスの役割を果たしている
かくして、無限の宇宙に漂う儚くも美しい織り布を思い浮かべつつ
無数の光が降ってくるようなサマーレイン・ダイバーで幕は下りる
最後に現実界への小さな出口を用意して
いや、ここから出てもまだ幻想?
ふと頭をもたげる疑問は後でゆっくり検証すればいい
そこはかとなく物悲しく
そこはかとなく病みつきになる世界の余韻を楽しんだ後で…
King Gnu - TOKYO RENDEZ-VOUS King Gnu official YouTube channel
<付記>
『音楽綱要』(De institutione musica、『音楽教程』)全5巻を著したボエティウス(古代ローマ末期のイタリアの哲学者、政治家)による音楽の分類
▶ムジカ・ムンダーナ:世界の調和としての音楽
▶ムジカ・フマーナ:人間の調和としての音楽
▶ムジカ・インストゥルメンターリス:楽器や声を通して実際に鳴り響く音楽