孤高の翼

 

翼がほしいというけれど
あの空に放り出されたら
一体どこに向かって
飛んでゆくのだろう

高く昇れば昇るほど
ものに溢れた地上から
遠ざかる
煩わしい柵(しがらみ)から
遠ざかる

自由という
翼を得て
果てしない空に
ただひとり


街々を越え
山々を越え
国境を越え


荒れ模様の鈍色の
東シナ海の上空に
一羽の鳥影があった

躊躇のない飛翔で
嵐を呼ぶ巨大な黒い雲の中へと
消えていった

その瞬間
乱れた羽音を聞いたような
気がした

翼をつけた人間の孤独なんて
たかが知れているじゃないか

あの鳥の孤高と比べれば

それは
ほんとうの自然に属するものの
神がかった姿だった