追憶の森

 

追憶の森深く降る
雪のような光を
手にとれば
かすかに煌めいて
やがて温かくなり
とけてゆく

そして
ほんのしばらく
春になる

春もまた
とけてゆき
手の平に
|花弁《はなびら》の
存在感のような
重さだけが残る

存在するもの
しないもの
質量をもつもの
もたないもの

記憶の花弁は
やがて風にのり

青い可視光線に
満たされた
空へと消えてゆく

全ての存在を受け入れて
天空で回り続ける
地球のどこかに
質量もなく
目にも見えない
追憶の森がある