闇夜の美声 ~ クロウタドリ

 

午前3時というのは、夜中なのか夜明けなのか…
そんな時間まで起きていることがたまにある。
ベッドに入って目を閉じて、さぁ夢の世界へと目を閉じると
鳥の鳴き声が聞こえてきた夜があった。

ミュージカルの主役のように鳥は得意げに歌う。
すべての生き物が寝静まった夜の舞台には
歌唱を邪魔するもは何もない。
暗く深い谷に迷い込み仲間を探すかのように
その声は闇夜に朗々と響き渡る。

夜中の美しい鳴き声には神聖な趣きもあるなと思いつつ
聴きいるうちに少し幻想的な気分で眠りに落ちる。


それはクロウタドリ(黒歌鳥)と呼ばれる鳥だった。
英名はブラックバード(Blackbird)
その名の通り、黒い身体に黄色いクチバシ、体長は30cm弱。
童話に出てきそうな可愛らしいシルエット。

むかし、ドイツに滞在していた時に公園などでよく見かけた鳥だ。
地上にいるときは、静かに地面をつついてエサを探していることが多く
鳴き声はいつも木々の間から聞こえてきた。
滞在していたアパートの裏の林で鳴き始めると、その自由な旋律に
いつも聞き入ってしまったものだ。

まるでおしゃべりでもしているような、自作の歌を唄っているような…
ときには、2、3羽で鳴き交わすこともあり、
そういうときはお互いに競いう合うような節回しになったりする。
それがまた実にうまいので聴き飽きることがないのだった。

この鳥はドイツではアムゼル(amsel)と呼ばれていた。
日本にも棲息していると知ったのは、夜中に鳴く鳥がきっかけだった。
この鳥について調べていくうちにクロウタドリにたどり着き、
その画像を見てアムゼルにつながった。

生息地を調べてみると
ヨーロッパ全土とアフリカ、中近東、インド、中央アジア、中国、オーストラリア、ニュージーランドの一部…となっている。日本は入っていない。
けれども、クロウタドリという鳥は存在する。

ドイツでは昼間に楽しんだ鳴き声だったが、日本では日中に聴いたことはなく、夜中(夜明け)だけ…ここが不思議なところだったのだけれど…
雑音に紛れて聞こえないだけなのかな?などと思っていた時、ビートルズの曲に「Blackbird Written by John Lennon / Paul McCartney」というのがあるのを見つけた。(クロウタドリも共演してます)

真夜中に唄う鳥
手負いの羽根で空を目指すこの瞬間を
ずっと待っていたんだね

といった感じの歌詞だ(拙訳)

やっぱり夜にも鳴く鳥だったんだ、だから黒いんだ…と合点がゆく。


<MEMO>
大型ツグミの一種、「黒つぐみ」と呼ばれることもある
ヨーロッパでは春の訪れを告げる鳥
スウェーデンの国鳥
戦略偵察機の非公式愛称(ロッキードSR-7)
マザー・グースの6ペンスの唄に歌われている
クロウタドリのさえずりを採譜して作られた曲…「世の終わりのための四重奏曲」及びフルート曲「クロウタドリ」(オリヴィエ・メシアン)