夜不可視 ~ よふかし

 

遠いものが見えなくなって
近いものが見えてくる

月が光の遠矢を放つ
しんしんと夜も更けたころ
空を仰ぐシルエットが
未知なるものを求めて
宇宙と交信を始める

地上に広がる黒い海に
キラキラ落ちた月の矢は
漸深層で深海魚となり
ネオン色に発光して
光の届かない
暗黒へと消えてゆく

何も見えない暗闇に
心が描いた丸い水平線

そこから生まれる
ガラクタのような
宝石のような
幻想を眺めて
きょうも
夜ふかし