{9月の花}秋の野の花
(2008年9月18日 奈良新聞より転載)
秋の風が吹き始め、花屋さんには秋の花が登場し始めました。花を生け、飾ることで季節を体感することができます。今回は秋の七草も少し取り入れて季節感のある花を生けてみましょう。秋の七草は萩(ハギ)、薄(ススキ)、桔梗(キキョウ)、撫子(ナデシコ)、藤袴(フジバカマ)、葛(クズ)、女郎花(オミナエシ)で万葉集の中で山上憶良が詠んだ歌に由来しているそうです。春の七草は「七草粥」にして食べますが秋の七草は眺めて楽しむものです。一度に七種の花材を見つけることはなかなか難しいので、その時手に入った花を生けて秋の風情を楽しみましょう。
今回はキキョウ、オミナエシに黄緑色が美しい羽毛ケイトウ、葉のカーブが美しいシランの葉を取り合わせてみました。やわらかな秋の日差しを浴びて明るく輝いているような自然の情景をイメージします。
器は自然素材のものやその風合いを持つものを選ぶことで花とよく合います。写真では円錐形の籠に吸水性スポンジを器より少し高くセットしています。
今回シランはこの作品の動きを大きく左右する花材です。葉のカーブ、向きをよく見てのびのびと生けましょう。続いて細長い羽毛ケイトウものびやかに入れ、全体の構成を決めます。次にキキョウですが清楚な印象のこの花はシンプルにその花の姿をそのまま生かすようにすると趣が出ます。花の姿をよく見ながら生けていきましょう。オミナエシで秋の光を表現し、赤いセロシア(別名:野ゲイトウ)をアクセントとして入れます。最後にナルコユリの葉でベースをまとめて完成です。
キキョウは水揚げの悪い花材ですので必ず水切りをしましょう。また生ける前にひどく水が下がっている場合は湯あげ(花、葉の部分を新聞紙などで包み、茎の切り口を10秒ほど熱湯に付けた後、すばやく水に戻すこと)をするのもひとつの方法です。秋の草花は水が下がりやすいので水の管理に気を付けましょう。
秋の七草を取り入れたアレンジメントは和の印象でまとめるといいでしょう。合わせる花材は華やかで大きな花よりも、茎が細く軽やかで清楚な印象の花を選ぶのがポイントです。これからでしたらコスモス、秋明菊、リンドウ、ワレモコウなども花屋さんに出てきます。
身近にある秋の花材を使って、移り変わる季節を感じてみましょう。
(使用花材)キキョウ(紫)、オミナエシ、シラン、羽毛ケイトウ(黄緑)、セロシア(紅色)、ナルコユリ
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