"SWING ADDICTION"
<REPORT-PART.1>
by 田家秀樹
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最高のパフォーマンスが激突するドキュメンタリー
一曲のプロモーションビデオが伝えるもの。「ANSWER」には特別な仕掛けがあ
るわけではない。億単位のセットが組まれたり最新のCGが使われたりしているので
はない。全精力を注ぎ込んだ歌と演奏で、その曲の本質を伝えるという意味で言え
ば、最もオーソドクスで正統派のビデオだろう。氷室京介もGLAYも最高のパフォー
マンスで激突する一瞬を切り取ったドキュメンタリー。それでいて映像はとびきり幻
想的で、あり得ないセッションであることをより印象づけてくれる。
あの映像は、わずか2テイクしか撮影されなかったのだそうだ。それも監督が、念の
ためということで敢えて依頼したという二回だったと言うのである。それがなければた
った一回だけのセッションだったということになる。
その話を聞いた時、背中に鳥肌が立つような気がした。それを撮影と呼ぶのだろ
うか。通常のプロモーションビデオの撮影は、映画と同じように何小節ごとに分けて
撮影されることが多い。「ANSWER」はそうではなかった。それはまさしくライブと言っ
た方が良いのだろう。その時、その瞬間でしかあり得ないこと、それぞれの側の想い
の深さが"撮影用"という"壁"を不要にしたのだと思う。「ANSWER」には、それだ
けの背景と必然と長い長い物語が秘められている。
「音楽をちゃんと真面目にやっていると良いことがあるんだと実感している」--。
今回の取材の中で、GLAYの誰もがそんなセリフを口にする。
言うまでもなく氷室京介はGLAYの4人が憧れた存在である。彼がBOO/WYと
いうバンドを始めなければGLAYも存在しなかったかもしれない、という仮説は決し
て大げさな例えではない。
少年時代の憧れと出逢う。全ての人にとってそんな体験自体がまずあり得ないだ
ろう。極端なことを言えば、自分が大人になる前に、この世を去ってしまうヒーローも
少なくない。しかも、相手はまだ現役であるばかりか、当時よりも更に大きな存在にな
っているそんな相手と同じ土俵で向かい合う。それがどのくらいドラマテイックなこと
かは誰にでも容易に想像できるに違いない。「ANSWER」はそういう曲だ。
このPVがメディアから流れるのはもう少し先になる。待ちかねているという人も多
いのだろう。でも、GLAYが、この瞬間を迎えるためにバンド結成以来18年を要して
いることを思えば、期待を膨らませるのにちょうど良い時間と言えないだろうか。