"SWING ADDICTION"
<REPORT-PART.2>
by 田家秀樹
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ロサンジェルスのスタジオでの話をしなければいけない。あの空間でのGLAYの
4人と氷室京介の有り様こそ、今まで書いてきたことそのものだったからだ。
いくつかの光景を予測していた。その中の一つに、ロック少年に戻ったGLAYとい
う場面があった。分かりやすい例えをすれば、10代の頃に戻って当時の"思い出話に
花が咲く"的な和気あいあいさとでも言おうか。そんな予測をしていたこと自体が恥ず
かしい。そう思わせる空間だった。
「ANSWER」は東京とロスをインターネットでデータ化した音源をやりとりするという過
程を経ている。それも今のレコーディング環境に対しての一つの"ANSWER"だろう
が、最新テクノロジーに関してのお互いの関心の深さは明らかに未来を見ていた。
そればかりではない。スタジオの機材の解説やロスと日本の音楽シーンの現状、さら
には写真や絵画、小説や映画を巡る話題。休憩の合間のロビーは、まさしく表現者同
士の会話に終始していた。氷室京介はGLAYの4人の表情や体調を気遣いつつ、彼
がアメリカで何度も組んでいるエンジニア、ニール・ドーフスマンと日本の作業を手が
けたエンジニア、競 紀行氏とコミュニケーションを図って行く。そこには懐古的な安
っぽい感傷が入り込む余地はなかった。
「成功したも同然だね」--。
氷室京介は、ロスでの全ての作業が終えた打ち上げの席で、GLAYのメンバーに
そう言ったのだそうだ。作品は一曲でも、そこには人間的な信頼や連帯があってこそ生
まれている。そして、そこまで求めて行くという姿勢こそが、氷室京介が音楽に対して
持っている誠実さであり、GLAYが彼に惹かれていたことだった理由でもあったに違い
ない。
LOVE IS BEATIFUL--。
「ANSWER」はそう歌っている。2006年の今、音楽に求められている答えは、"人"に
対しての愛情なのかもしれない。
8月5・6日。味の素スタジアムで、彼らはどんな"ANSWER"を見せてくれるのだろう
か。そして客席のあなたはどんな"ANSWER"に出逢うのだろう。