お十夜について
十月から十一月にかけて全国の浄土宗寺院でひろく行われる念仏会です。「お十夜」「十夜法要」「十夜講」「十夜念仏」などともいい、正しくは、「十日十夜(じゅうにちじゅうや)法要」と呼ばれます。もともとは陰暦の十月五日の夜から十五日の朝まで、十日十夜にわたる法会(ほうえ)でした。 この法会は、浄土宗で最も大切な御経の一つ『無量寿経(むりょうじゅきょう)』の巻下に、 「この世において十日十夜の間善行を行うことは、仏の国で千年間善行をすることよりも尊い」と説かれていることによって、その教えを実践したもので、十日十夜にわたり不断(ふだん)念仏を称えて別時の念仏を修し、阿弥陀様のお慈悲に感謝する法要であります。 この法会が初めて営まれたのは、今から550年ほど前(永亨年間)、伊勢守平貞経(いせのかみたいらのさだつね)の弟、貞国(さだくに)が、京都の天台宗の真如堂(しんにょどう)で修したのが始まりとされています。その後、明応四年(1495年)に、現在、浄土宗の大本山の一つになっている鎌倉光明寺の第八世の観誉祐宗上人(かんよゆそうしょうにん)が、後土御門(ごつちみかど)天皇に招かれ、宮中で、『阿弥陀経』の講義をされ、さらに真如堂の僧といっしょに引声(いんぜい)念仏を修し勅許(ちょっきょ)を得て、光明寺で法要を行うようになりました。これが浄土宗でのお十夜の始まりで、今では浄土宗の大切な法要となっています。 お十夜は、お念仏の尊さを知り、感謝の気持ちを込めて、これをお称えする大切な法会です。今日ではその期間も十日間から五日、三日、あるいは一日と短縮されて行われていますが、この大切な念仏会に参加し、仏の国での千年の善行にも勝る善行を、ぜひ積んでいただきたいものです。 |