南蛮茶碗

径15.2×13.0cm 高さ8.5cm

陶磁器の中での「南蛮」という範疇は、茶方の概念である。 その意味では「粉引」や「井戸」なども同類であって、 瀬戸、唐津、信楽、備前といった概念とはまったく異なる。
後者は茶道成立以前からあったが、前者はなかった。 もちろんそれらの焼物が存在しなかったわけではないが、 南蛮や粉引あるいは井戸としてはなかったのである。
パラドキシカルではあるが、南蛮と呼び習わされてきた焼物は、 南海招来であっても、茶方が発明した日本の焼物である。
ところで、伝世する南蛮の中に、茶碗をついぞ見かけない。 水指、花入、建水といったところが主で、茶碗がない。 硬く焼締まった土物は元来茶碗むきではないのだろう。
この茶碗もがっちりと焼締まった土物ではあるが、 柔らかなねっとりとした泥の感触そのままに焼き上がった。
土に含まれている硫化鉄がぼつぼつ吹き出ている。


粉引茶碗→

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