2007年のお言葉へ

2008年のお言葉

1月 今年もマイペースで春夏秋冬の変化を明日香の野に味わいながら楽しく走りましょう
2月 世界最高峰エベレスト(8848m)の初登頂わ34歳で達成したエドモンド・ヒラリー氏が1月11日に88歳でなくなった。少年時代は体育嫌い、跳び箱苦手で虚弱児だったが、一家はニュージーランドで養蜂業を営んでいたため、40キロもある巣箱を抱えて運ぶ仕事を手伝っているうちに、筋力がつき足腰が鍛えられ、心肺機能が高められ、登山家として成功をもたらした。
苦労の多い仕事も自分を鍛える糧になることを私達は学ぶことができる。
エベレストには、英国が過去8回の登山隊を送りながら撥ね付けられ、9回目に初めて達成した。 登頂直下の岩場は人を寄せ付けぬ難所、高さ12mの垂直の岩と氷壁、落ちて当たり前だが滑落すれば一気に2500m下の氷河まで止まらない。
岩と氷壁の隙間に体入れじりじりせり上がる。 背中には重い鉄製の酸素ボンベ。
足の踏ん張りだけが命を支える。 30分かけて通過し、初登頂に成功したのは不可能を可能に変える体力と勇気と決死の実行力だった
3月 北京オリンピックを5ヶ月後に控え、多くの日本選手が昆明で心肺機能を高めるための高地トレを行なっている。マラソン選手や長距離陸上選手だけでなく競泳の選手も多い。現地は標高1900m、空気中の酸素濃度は約17%(21%)に低下する。
この低酸素の環境下では筋肉への酸素供給が制限され、平地より相対的に運動強度が高くなる。 酸素を運ぶ血液中の赤血球やヘモグロビン(Hb)濃度も一時的に上がる。 高地トレは男子よりも女子の方が効果があるようだ。
なぜかといえば、女子は男子に比べて血中Hb濃度が低いので、この濃度を高めるのびしろが大きいからだ。 血中Hb濃度が0.3g/dl増えるだけで、最大酸素摂取量が1%、持久力が2%向上するとされている。血中Hb濃度の許容基準は男子17g/dl、女子16g/dlとされているから、効果の大きさがわかる。
しかし、高地トレで競泳選手が死亡し、9000万円の損害賠償の訴訟もある。
とかく危険と隣り合わせのようだ。
4月 3月9日の名古屋国際女子Mでは、新星の中村友梨香(天満屋)が、32キロからスパート、2:25:51で優勝、北京五輪の代表に選ばれた。21歳とまだ伸びる余地があり、初マラソンであったから、世代交代が遅れていると言われる中で、明るい希望を抱かせる快挙であった。若さがものを言うスポーツの世界で哀れなのは、落ち目の熟年選手だ。特に恩師の小出監督を捨てて独立した高橋尚子(35)は絶対に優勝しなければ五輪の夢が消える試合で、10キロ待たずに失速、完走はしたものの2:44:18の27位に終わった。
走りこみ過ぎては故障することを繰り返してきた高橋は、膝の手術の経緯、昆明での食あたりを明かしたが、同情心よりも言い訳にしか聞こえないものであった。
なによりも顔につやと張りがなく、老化したなという印象を与えてしまったようだ。
独立後のスポンサーの資金援助が切れないようにするためには、より強いアピールが必要になる。
東京、大阪、名古屋の三国際女子Mに出るとの表明はこんな裏事情が見え見えだ。
5月 ことしの夏には、異様な雰囲気の北京五輪が見られそうだ。
縁起の良い8を並べて8年8月8日午後8時8分に開会式が挙行されるが、チベット虐殺から世界に知れ渡った人権弾圧を世界が黙認することは今後もありえない。 世界の批判を国内の愛国心高揚で蓋をしようとすれば、観衆が五星紅旗ばかりを振りまくり、他国選手へのいやがらせで国際競技の雰囲気を台無しにしてしまう。 アスリート達は必死だから、どんな状況になろうときにしないだろうが、テレビをみて五輪を楽しむ人達は紅旗の波や観衆のマナーに不愉快な気分になるだろう。
季節も最悪、40℃近い気温で蒸し暑いとなれば記録も期待できない。
その上選手村には風呂がなくシャワーだけで我慢しなければならない。 それほど北京は水不足が深刻なのだ。 さらに大気汚染も深刻でマラソン選手が汚れにまみれてゴールするのは、健康上の問題も大きい。 さらに食品安全性にも不信がある。 どうみても異様な五輪になりそうだ。
6月 合同練習会はご苦労さまでした。成功裏に終了し、感謝の中にお礼申し上げます。
ところで、伊達公子さん(37)は26歳で引退後、テニスコートに復帰し、最初の大会となる国際女子オープンダブルスで優勝、シングルスで準優勝を果たし世間をあっとおどろかせた。
なぜこんな成績をだせたのか、その理由はマラソン練習にあった。
7年前にレーサーのミハエルさん(38)と結婚した翌年にも復帰を試みたが左アキレス腱断裂で途中棄権、リハビリのために長距離走を始めた。
04年春にはロンドンマラソンに出場、3:27:40で完走。とにかくマラソン練習で徹底的に鍛えなおした。その成果で体力が増進、とくに持久力がついたことが厳しい試合を耐え抜く原動力になっている。 世界ランキング4位だった現役時代よりも今のほうが持久力がよくなっているそうだ。マラソンは体力年齢をいつまでも若く保つに最も効果的なようだ。
7月 北京オリンピックの水泳競技は、どうやら英国スピード社の水着を着ることが日本の選手にも認められることとなった。スピードとレーザー・レーサーという名前からしていかにも速い記録が出そうではないか。でも大変だ、生地は透けるほど薄いのに着用に20〜30分はかかる。体をそこまで締め付けて圧迫して医学的に問題はないだろうか。きつすぎて一人では着用不可能な水着なんて不自然すぎないか。一廻りスリムな体型に変身して水の抵抗を少なくするから新記録がでるのもうなずける。でもレース前に余り早くつけると体の圧迫時間が長くなり苦しいし、着ける時間が遅いとレースに間に合わず失格しそうだ。体きつすぎるからレースが終わればとにかく早く脱ぎ捨てたくなる。もはや世界の競技レベルは鍛え上げた肉体と技術で戦うだけではどうにもならない処まできている。世界新記録に挑戦するには水着を使った肉体改造をしないと不可能ということなのだ。
8月 8月8日から酷暑下に北京オリンピックがはじまる。
競技場はどれも素晴らしい施設ばかりのようだ。 陸上競技の舞台となる鳥の巣は、見易さ抜群の設計で、外観はあまり好きになれないが、中に入ると素晴らしい施設のようだ。
中国選手の金メダルが最初に続出するように、競技日程が組まれていて、まず女子重量挙げとかで金、金、金とくる。でも日本選手にも同じように金が期待される柔道や競泳が9日から始まるので早い時期からオリンピック熱が盛り上がるかもしれない。
今や北京はテロ警戒で市民も余りの徹底ぶりに辟易して夜の外出を控えているようだ。

競技場の近くには地対空ミサイルが配置された。もはや空気汚染や食品安全とかの生やさしい問題ではない。 テレビ放送は中国向けには10秒送れて放映される。独裁政治下に隠された様々な姿が世界中に知れ渡ってゆくのも見所だ
9月 野口みずきの北京五輪欠場は、気の毒な出来事だった。でも原因は過酷すぎる練習をやりすぎたことにある。
昆明での高地トレに続いて、スイスでの高地トレ。高地トレは酸素吸収能力を向上させる反面、過酷さから体に危険なことが指摘されており、よく練った合理的なスケジュールを実行する必要がある。野口の場合も、生身の体が悲鳴をあげているのに、金を目指さなければならない立場からか、無理を重ねてトレをやりすぎたから、壊れてしまった。「練習は裏切らない」が野口のモットー。でも彼女がこれを過信して自分からやり過ぎたのか、コーチが合理性のある指導をする能力を欠いていたのか、「練習に裏切られた」のであった。
五輪直前から野口が走れない状態になったという情報が流れていた。一度故障が出ると、次々と故障箇所が出てくる。高橋尚子がそうだった。そして第一戦から消えてしまった。野口は、根性の素晴らしい選手、もっと練習法に賢くなって再起し、ロンドンを目指してほしい。
10月 アフリカ人の持つ運動能力には、ただ驚く以外ない。 9月28日のベルリンマラソンで通称「皇帝」の、ハレイ・ゲブラシェラシエ(35)が人間の能力の限界と言われてきた3分台の2時間03分59秒、100mを17秒06のペースで走り通したことになるが、前半1:02:05、後半1:01:54というから全く疲れを知らぬ怪物だ。35kmまではラビットがついたそうだが、並みのランナーではラビットは到底つとまらなくなった。
気管が弱くて喘息もちとの理由で北京オリンピックではマラソンを回避したが、そんな体でも人間の限界に挑戦し、磨きをかける姿勢にはただ感服以外にない。
エチオピアでは実業家で、不動産業、ホテル、映画館、自動車輸入業等400人の従業員抱え、持ちビル10を所有する。事業と両立させるため、出勤前に3時間の早朝練習夕方から再びトレーニングが日課だからこの点でも超人中の超人だ。
年齢と闘いながらどこまで進化するのだろうか。
11月 平城遷都1300年祭が2010年に行なわれる。その公式イベントとして、2010年秋にフルマラソンが開催されることが決まった。
県下の走友会が連名で知事に要望書を出していたが成果があったようだ。奈良陸協と遷都記念事業協会が、準備事務局を設置し、来年3月末をめどにコースを決め実行委員会を立ち上げる。陸連公認のフルマラソンのコースができれば、昭和24年の全日本陸上競技選手権大会以来となる。
鴻池競技場をスタートして南下するコースが有力で、1万人規模の大会となる。
さて意気込みは素晴らしいがうまく実現するだろうか。交通規制からコースには警察が厳しく意見を出す。 住民の反対エゴがまかり通ることもある。シルクロード博(昭63)に際して当時フルマラソンが計画されたが、ハーフになった。
今回も同じ経緯をたどる可能性が大きいと思われるのだ。
12月 シドニー五輪で金メダルを獲得し、その後小出義雄氏との師弟関係を断って独立、米国コロラド州ボルダーで高地トレを積み重ねていた高橋尚子(36)が遂に引退を決めた。
 春の名古屋国際女子マラソンで27位と惨敗をした時点で、もはや優勝を競うだけの体力、気力が見られず、年齢的にも前途はないことは誰が見ても明らかであった。
東京、大阪、名古屋の三大会マラソンにも出場を宣言していたが、実現できなくなった。
引退後は各地の健康マラソンにゲスト参加の申し込みが殺到しているようだし、れーす解説者としても当面は仕事はあるから結構リッチな生活が約束されている。
どんな名ランナーも行く先は、健康マラソンだ。
これ迄健康マラソンを続けてきた私達の立場が、ランナーの生涯を通して考えると、結局はこれにつきると再確認されるのだ。