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2013年  明日香文明会長のお言葉

 月  お 言 葉
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 2  SB食品からDeNA陸上部に移籍した瀬古利彦監督の誘いを「指導者に従うつもりはない」「僕が尊敬するのは市民ランナーだ」「Dなんとか社から声がかかったけど」と会社名も覚えてないふりをした、公務員市民ランナーの川内優輝(25埼玉県庁)、どこ迄も真っ直ぐな性格の男だ。
1月18日開催のエジプト国際Mに招待された。成田空港ではパスポートを忘れたことに気づいて、母親に頼んで空港まで持ってきて貰ったものの、主催者が用意した便に乗り遅れた。
やむなく2時間後の便の利用となったが、主催者は子の分まで負担しない。しかも正規の往復運賃は80万円、3ケ月の給料に近い額だ。普通に考えたら、参加を取りやめにするところ、なにせ真っ直ぐな男、出場の約束を破れないと自腹を切ってチケットを購入して、エジプトに向かった。名誉挽回のために頑張ったのか、本番では2:12:24の大会新記録で優勝したのだ。優勝タイムのレベルからもわかるように、賞金のないレース、たとえ賞金がでても、真っ直ぐな性格の彼は公務員を自覚して、副業禁止規定があるとしていつも賞金受取りを辞退してきた。エジプト大使館の働きかけで帰路は無料となり、チケットはキャンセルできたが、25万円の払い戻し。結局は55万円の自己負担。滞在中はピラミッドの観光すら余裕がなかった。
 3  WMM(ワールドマラソンメジャーズ)に加盟し、世界6大都市のMのひとつに昇格し、高額賞金の獲得競争となった2月の東京M、予想されたとおり超ハイレベルのランナーが都心を駆け抜けた。一見いかにも万々歳に見える。
しかし、レースの裏では一般ランナーのマナーの悪さが主催者を悩まされている。スタート後の新宿駅の大ガード下では、壁に沿ってランナーの立ち小便がひっきりなし、悪臭と湯気立ち込め、小便ミストによるP2.5という状態なのだそうだ。 なにせ3万人の参加者だから、スタート前に簡易トイレをどれだけたくさん並べても、スタート時間までに済ませられないランナーが出るのだろう。ましてや寒い時期の開催で、早朝スタート、緊張感も災いして生理現象が襲いかかることはやむお得ないともいえる。しかしそれだけに、ランナーはこんなことを承知して、スタート前の準備をしっかりとする義務があるのではないか。
参加案内には「トイレは指定の場所で」とあるようだが、ランナー間で勝手に指定場所が新宿駅の大ガード下になったのでは困ったことだ。その地域人が沢山歩行するし、翌日は通勤の人たちが、いつまでも残る悪臭を肺の奥まで吸い込みながら歩行しなければならない。東京Mだけでなく大阪Mでも大阪城のお堀の水かさを増す連中が絶えないのだそうだ。
 4  スタートからゴール迄一直線にコースがあり、全コースに起伏がなく平坦であるにもかかわらず超過酷なマラソン大会がある。それはシベリアのバイカル湖国際Mだ。
3月3日に開催された大会には、日本からもツアーが出て、大会全参加者は180名。透明度が高く南北に600kmの細長い湖だが、冬季は湖面が凍結する。その幅の狭い両岸を結んで丁度42.195kmとなる地点を選んでコースを造った。景色は純白で雄大、息を呑む美しさ、一度参加するとやみ付きになるそうだが、何せシベリア、時には-20℃以下にもなる寒さ。
個の寒さが体から熱を奪い続ける。幸い今年は暖かく-5℃だった。 それでも寒さで体が悲鳴をあげる。 その上に湖面をよぎる冷たい風、体感温度は気温よりも更に低くなる。
足元は平坦とはいえ氷、滑って前進することが難しい。コースの途中からは湖面に積もった雪路、風に吹き飛ばされない雪が湖面にこびりついているので、いくら靴に工夫をしていても雪が足元にまつわり付き急激に体力を奪って行く。 トップのゴールは3時間7分、一般の大会では勝ち目のないランナーがここでは優勝するのだ。
 5  日本の「マラソンの父」金栗四三(1891〜1983)は1912年のストックホルム五輪に出場した。北欧とはいえ、マラソン当日は40℃の高温、記録的な暑さで参加者68名中、半数が途中棄権、1名は倒れた上翌日死亡という過酷さ。金栗も、船とシベリア鉄道を利用しての20日間もの長旅による練習不足、到着後の白夜影響での睡眠不足、食事が体に合わない等で大不調。スタートから15km、日射病で意識を失い倒れ、近くの農家で介抱された。意識が戻ったのは競技の翌日の朝であった。棄権の意思が五輪本部に伝わっていなかった為「競技中に失踪して行方不明」として取扱われた。 時は流れて1967年3月、ストックホルム五輪五十周年記念式典が開催された。そして五輪委員会が、金栗を式典にで正式にゴールさせるという粋な計らいをした。式典の場で、競技役員が見守る中、金栗は走りながら競技場内のゴール地点に用意されたゴールテープを切った。この時場内アナウンスが流れた。「日本の金栗四三、ゴールイン。記録は54年8ヵ月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回オリンピック、ストックホルム大会の全日程を終了しました。インタビューに対し金栗は「長い道のりでした。この間に孫が5人できました」とユーモアで答え、大喝采を受けた。
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着用してマラソンしたとすると、4時間完走の人なら「5分」もタイムを短縮することができる、とてつもないウエアが発売された。米国スポーツ界で話題となり、すでに米国では一流のアスリートが着用しているウエア「KOAR(コア)が日本に上陸した「KOOARハイブリット アスレチックフィット」だ。
機能性のスポーツウエアの世界でいま主流の筋肉を圧迫するコンプレッションウエアとは違い、医療分野で使われる技術がルーツ。複数の物質を特殊粘着素材で接合した素材で結合した組織「コアテック」(KOAR TECH)が生地にコーティーングされ、さまざまな機能を発揮するように構成された次世代のテクノロジー。このことに話題になったのは効果だ。フランスの大学の研究う発表では、着用者の酸素消費量が、2.9%アップすることが分かった。
酸素をたくさん取り込めるとそれだけ運動能力があがるため、マラソンは必然的に記録がよくなる。 さらに、この素材が実力を発揮するのは「運動後」。乳酸の分解に必要な酸素を体内で消費しやすくすることで最大乳酸濃度が平均5%も下がり、回復を助けるという。 値段は、S,M,Lで6300円(税込み)で我慢の範囲だから、誰か試しに着用をして効果を判別して戴きたいと思う。
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大相撲の徳勝龍(26)が今場所始めて幕内に昇進したので、6月30日に祝賀会が橿原ロイヤルホテルで開催され、出席した。徳勝龍は、本名が青木誠、父は元警察官、生まれは高取町で、飛鳥小学校に低学年の時に在籍、柔道を習った。その師匠が私の寺(常谷寺)の隣に住む水之江隆臣さんで少年柔道の大家、明日香代表を全国大会で準優勝をさせた経歴の持ち主。そんな縁もあって、明徳義塾高から近大を経て相撲界に入った青木誠を応援してきた。入門当時は番付表をみても位置を探すのが一苦労で小さな字で虫眼鏡が必需品だった。徳勝龍のしこ名がついたのも、幕下時代、3年間、苦労を重ねてやっと十両に這い上がった時には、祝賀会を行った。それまでは、給料もなく、祝賀会に来た時も貴乃花の名前が入った浴衣姿で質素そのものだった。今年三月の大阪春場所前に激励会を行ったが、羽織、袴に博多帯の出で立ちで顔立ちも艶やかで鮮やかな姿に変わっていた。相撲界で生きるのは大変、勝って少しづつ這い上がって行く。幕下以下は虫けらの同然。大半は無給のまま辞めて行く。十両まで上がるのは一握り。その上、けががつきまとう。力士の多くは痛みに耐えて頑張っている。徳勝龍に会えば、素直で心やさしさを感じる好青年。だから一喜一憂しながら見守っている。
 8  2020年の東京オリンピックは本当に実現するのだろうか?1964(S39)年東京五輪と言えば、女子バレーの金メダルと共に、マラソンで優勝したエチオピアのアベベ、ゴール前200mで英国ヒートリーに追い抜かれ3位になった円谷幸吉を思い出す。円谷幸吉は1940(S15)福島で生まれ、S37陸上自衛隊に入学、S38年毎日マラソンで君原健二についで2位となり、東京五輪代表に選ばれた。次のメキシコ大会に向けて期待が高まっていったが、S43.1.9右頸動脈をカミソリで切って自殺、血の海と化したベッドの上で野28歳の期待の若者の死は世間に大きな衝撃を与えた。当時の選手は、現代の選手のように「自分のために勝つ」のではなく「国の代表として国のために勝つ」意識が強烈で、「愛国心に殺された」「五輪至上主義への警鐘」という論調がマスコミをにぎわした。
2通の遺書が残されたが、1通は家族に宛てた遺書で、「父上様、母上様、幸吉はもうすっかり疲れきってしまって走れません。何卒お許しください。気が休まることもなくご苦労、ご心配をお掛け致し申し訳ありません。幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。」と書き綴っている。
作家三島由紀夫は追悼文の中で「傷つきやすく、美しい自尊心による自殺で、この崇高な死をノイローゼや敗北という言葉で片付けるのは許しがたい」と述べている。
 9  8月は激務の毎日が25日迄続いたので、毎年のことながら、月末は骨休めの休暇と相成った。近年は世界中で治安が良くない上に、ファミリーでの旅行をするには、遠距離の海外は多分無理がある。そこで涼しさを求めて北海道の留寿都(ルスツ)リゾート村へ出掛けた。支笏湖と洞爺湖の間で羊蹄山が近い所にある。 広大な敷地に遊びとスポーツの楽しめる施設や結構大型のホテルが二つあり、温泉の湧き出るリクリエーション村だ。ルスツは気温が低く、日中も半袖は無理で、皆が長袖、野外プールもあるが、泳いでいる人はいない。ただ、走るにはとてもいい気候だった。ホテルを出て、国道を村外れまで走る。真っ直ぐな道路で歩道が広くしっかりついている。車の数も少ないが途中で取締をしていて、捕らまっている車もあった。村外れまで来て、その先は人家が見えない。折り返そうとしたとき、婆さんに話かけられた。「どちらから来なすった?」「奈良県の明日香村からです。」「遠いところからじゃのう。きのうも自転車で北海道を廻ってる人がここで一休みしとったじゃ。顔が真っ黒だった。ジュースを一本あげたよ。それにしてもあんたは色の白いきれいなお顔しとうるの〜〜。」どうやらこの婆さん、走っている姿より、顔の白黒のコントラストに興味があったようだ。私にジュースはくれなかった。
 10  2020年の夏のオリンピックの開催地が東京に決定したのは結構なことだが、陸上競技のマラソンや長距離はアフリカ勢、短距離はジャマイカやアメリカの独断上となっている。
日本選手が決勝に勝ち残ることは今後はもっと難しくなる。 そこで日本選手が陸上競技で、これらの国の選手と対等に競技できるようにするにはどうすればいいのか、その研究と対策が深く静かに進められている。 過去の教科書では短距離を早く走るためには、「ももを高くあげる」「腕を大きく振る」などと指導されてきた。しかし、これは欧米の骨格の選手が速く走るために知った経験則であって、これが出来る日本人選手が100bを9秒台で走れたという事実はない。こんな従来の走り方をいくら踏襲しても決してウサイン・ボルトのような選手には到底対抗できないのだ。 そこで、運動の仕組みを生理学的、力学的に解明して、骨格や筋肉の動かし方を見つけ、鍛え方を見つける「バイオメカニクス」を取り入れて、日本選手の骨格体型でも100bを9秒台で走れるようにするという計画が進んでいる。 分かってきたことは「股関節で走ること」「股関節を中心に脚をムチのように回すこと」「そのために、ももを上げる腸腰筋、ももを下ろす大臀筋、ハムストリングスを鍛えること」「膝から下の下腿部は軽いのが望ましいので、太くならないように鍛える」MRIで全身を調べ分析して、鍛える部分と強さを決める等が行われることになる。さあ、結果はどう出るだろうか。
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市民ランナーの参加するフルマラソンは、今や大盛況でエントリーも運まかせの抽選で決まったりしている。しかし第一線の強豪ランナーの世界では、フルマラソンはもはやいつまで持つのか火が消えそうな状況になっている。もはや、ケニア、エチオピア等のアフリカ勢には、欧米選手もアジア選手も勝ち目がないことがはっきりしてきた。国際レースは賞金獲得を競うプロ競技となっているが、アフリカ勢がかっさらってしまうとなれば、殊に欧米の選手にとっては苦労しながら実入りがない魅力のない競技になったようだ。かつては、スペイン、イタリア、ポルトガルからも超一流のランナーが出た。 いまこれからの国からマラソンランナーがいなくなった。賞金が入らなければ生活にも困るし、「やっちゃおれん」という状況に追い込まれたのだ。 日本でも状況が悪くなっている。不景気の長期化も影響したが、実業団ランナーは走る広告塔だから勝てるのなら意味もある。しかしアフリカ勢に離されたランナーは殆どテレビ中継にも映らないから広告効果が期待できない。だから企業も実業団チームを維持する意欲を失ってきているのだ。 かつては、とても熱心だったSB食品ですら、実業団を廃部にした。市民ランナー出身の川口優輝や無職ランナー藤原新がでてきているのも実業団ランナーが弱体化しているからだ。そして指導者のいない彼らに国際レース制覇を期待するなんて無理に決まっている。この世界は甘くはないのだ。
 12  プロ野球の日本シリーズは楽天が優勝し、東北に元気をもたらしたが、なによりも凄かったのは、マー君こと田中将大が、第6戦で負けながら160球を投げ、第7戦でも締めくくりで15球を投げたことだった。
これには、彼の獲得を目論むメジャーリーグのスカウトたちも生きた気持ちがしなかったようだ。 アメリカでは肩は消耗品、消しゴムみたいなもので、使えばすり減っていくと考えるのが常識。そのためにPAP指標が使用されている。Pitcher Abuse Points(投手酷使ポイント)というもので、数式は(投球数-100)の3乗で表す。ただし、100球以下は0とする。 メジャーリーグでは先発は100球で交替させられるのは、このためだ。 100球を超えると肩の疲労は飛躍的に増大するから、このPAPができている。そして1シーズンで10万ポイントを超えないようにしているが、監督の腕でもある。
2013年シーズンの年間PAPランキングは@ティム・リンスカム(ジャイアンツ)13万2001AC.Jウイルソン(エンジェルス)10万8692Bダルビッシュ有(レンジャーズ)9万8298でPAP10万以上はたったの二人だけだった。これの対してマー君は1試合だけでPAP21万6000になり、メジャーリーグの年間PAPの誰よりも遥かに大きいPAPになる。
ランナーの脚や膝も同じだろう。消耗品と考えれば、過酷なレースに頻繁に参加することは考え直した方がよさそうだ。