つれづれに・京都あれこれ (2016年発表分)

【西行・山家集より】

雪に喜び人に会う(2016年12月)

   「あととむる こまのゆくへは さもあらはあれ うれしく君に ゆきにあひぬる」

 吉例の顔見世興行が、始っています。今年は、南座ではなく、先斗町の歌舞練場。南座のほほ半分の大きさで、役者とも観客どうしとも距離が近い。それはともかく、五代目・雀右衛門の襲名披露。演目が、道行旅路の嫁入、廓文章、娘道成寺とは、楽しみ。山城屋、成駒屋、松嶋屋の関西勢に、江戸から成田屋の海老蔵が一人で挑む。これも楽しみ。
 「奇跡は誰にでも一度おきるのに、それに誰も気がつかない」。そうして、アイが残った。この愛すべき梅図かずおの漫画を、フィリップ・ドゥクフレが演出し、振付する。まりんは高畑充希、さとるは門脇麦、しんごは成河。ああ、このミュージカルには、どんな感動が待っているのか。「わたしは真吾」は、23日から3日間、ロームシアターで。
 京都の誇り、日本画家の堂本印象。彼には意外な、こんな世界があったとは。「天才!! 印象ワールド」と題した、展覧会に行ってみよう。油彩の肖像画、旅先で描いたペン画、茶道具の絵付け、豪華婚礼衣装の下絵、風呂敷原画、「地中海」と名付けられた茶釜などなど。平野の堂本印象美術館で、25日までです。
 今、蔵開き真っ最中の伏見の日本酒が、四条烏丸に集合。COCON烏丸の、「京都伏見SAKEZO‘S BAR」です。定番の酒から貴重な酒まで、17蔵が立ち飲みスタイルで堪能できます。しかも、和洋中の料理も楽しめる、月曜日はお得なセットあり、水曜はレディースDAYとなれば、もう行くしかない。太秦麗さんに、会えるかも。11日まで。
 これは京都では珍しい。黄金のファラオと大ピラミッド展が、文化博物館で開催中。国立カイロ博物館の、コレクション。アメンエムオペト王の黄金のマスク、クフ王の銘が入った彫像、キヌムト王女の首飾り、カフラー王像など、貴重なものばかり。4Kシアターや、吉村作治先生の発掘調査報告もあるとは、うれしい。25日までです。
紅葉散り人は行く(2016年11月)

   「もみちちる のはらをわけて ゆく人は はなならぬまた にしききるへし」

 秋は待ちに待った、蔵開き。伏見の清酒で乾杯! 12日は、丹波橋か桃山御陵駅にゴー。キンシ正宗、齋藤酒造、北川本家などの蔵元で、きき酒、蔵見学、ミニライブ、杉玉作り体験、大道芸、屋台と、なんでも楽しもう。そうして、19日はゼスト御池へ。日本酒条令サミットとして、全国の日本酒が楽しめる。人気飲食店のおつまみもあります。
 今年は、没後150年の坂本龍馬関連で、イベントがいっぱい。龍馬が過ごした三条の「酢屋」では、命日の15日に龍馬祭があります。家の前に祭壇を設け、献杯します。国立博物館では、27日まで龍馬展。新婚旅行の絵日記や、北辰一刀流の兵法目録などが、興味深い。龍馬演舞場(霊山護国神社)では、12日から2日間、よさこい祭です。
 浄土宗寺院の法要「十夜祭」が、「十夜フェス」としてイベント化。場所は、龍岸寺、大善院、宝蔵寺、正法寺、三寶寺。アートと法要のコラボで、お寺を異「寺」元空間にするのだとか。「もうすぐ椿が騒ぎ出す」、「スターボーズ」などのテーマがおもしろいですが、龍岸寺の「アイドルと念仏唱えちゃえ!」はすごそう。5日から14日まで。
 27日まで、北山と三条でイベントが。北山は、イベントスタンプラリー。陶板名画の庭、表千家北山会館、府立植物園、市交通局などを回って、記念品をもらおう。三条は、「京まちなかを歩く日」。中京区の二条から四条、鴨川から堀川まで、ストリートギャラリー、まちかどミュージアム、錦市場の鍋まつり、本能寺のフリマなどを楽しもう。
 興味はあっても、機会がなかった方。オペラの扉を叩きに、ロームシアターに行きましょう。新国立劇場とのコラボで、名作12演目から、舞台衣装、装置模型、舞台写真、ハイライト映像などが展示されます。イベント名は、「オペラの扉」。フィガロの結婚、椿姫、トスカ、蝶々夫人など、素敵ですよ。3階のミュージックサロンで、30日までです。
山を想えば月の夜(2016年10月)

   「いさよはて いつるは月の うれしくて いるやまのはは つらきなりけり」

 今年もたっぷり、京都文化祭典。円山公園音楽堂のコンサートは、8日がフォークで杉田二郎、ばんばひろふみ、あのねのね、太田裕美、高木麻早、南佳孝など。9日はカントリーで、永富研二とテネシーファイブ、三田ひろし、チャーリー・マッコイ、ケイコ・ウォーカーなどとは、うれしい。雨天決行で、昼過ぎから夕方までたっぷりやるんですよね。
 同じ9日は、国際交流会館で日タイのカルチャーフェア。「タイが京都にやってくる」とのキャッチコピーで、料理屋台、マッサージ店、物産店、衣装展示など、会館前の広場がぎっしり。伝統人形劇、古典音楽、舞踊学校の学生さんによる舞踊、ムエタイ実演などが、うれしい。タイ国際航空のオリジナルグッズが当たる抽選会もあり、是非行きタイ。
 パンパカパーン、ダービーはダービーでも、ラーメンだよ。第1レースは8日からの3日間、第2レースは15日からの2日間。さあ、「ウマさ決するダービーの幕が開く!」と言われると、ちょっと引いてしまいますが、ご安心を。京都競馬場で、関西有名店20店舗以上のラーメンを食べ比べてみましょう。「王者はどのウマい店だ」ってさ。
 13日から16日までは、京都国際映画祭。イオンシネマ、TOHOシネマ、立誠シネマなどで、おもしろ・めずらし映画が大特集。楽しいのは、同時開催のアート部門。元・立誠小学校の蛭子能収、西本願寺・伝道院の明和電機など、バラエティたっぷり。市役所前広場では、永井英男のオブジェに注目。車をバックドロップで投げているのは、誰?
 河合寛次郎の深い世界に、はまってみましょう。中国や朝鮮の古陶の手法、民藝に賛同した実用的な作品、重厚で変化に富んだ独自の作品まで、大正から昭和と変遷する中で、常にあるのは柔らかい造形美。美術館「えき」で、23日まで。陶芸をはじめ、木彫、調度類、書などが並びます。「私は私を形でしゃべる、土でしゃべる、火でしゃべる」。
風に誘われ露の色(2016年9月)

   「をしかふす はきさくのへの 夕露を しはしもためぬ をきのうはかせ」

 ジャワの影絵芝居とは、おもしろい。泉鏡花の「夜叉ヶ池」をジャワ語でするとは、益々おもしろい。影の色彩ワヤンプロジェクトで、東京、金沢と回ってきて、いよいよ京都。人形遣いは、ジャワのアナント・ウィチャクソノ。演奏は、ピアノに岩井美佳、ガムランにTidak Apa Apa。ナレーターは、月原豊と小川雅美。15日と16日、芸術センターです。
 18日は、狂言の茂山家にはおめでたい日。正邦が十四世・千五郎を襲名し、現世・千五郎が五世・千作を襲名します。押し出しが立派で、繊細な台詞回しも得意な十四世。これからが楽しみです。その襲名披露は、18日に観世会館で。一門勢揃いで、翁、末広かり、千鳥、庵梅、靭猿、石橋が演じられます。金剛流と観世流も、友情出演。
 17日と18日は、各地で観月のイベントがありますが、今年はみやこめっせに行ってみましょう。「かがやきめっせ2016」から、無料のプレゼント。17日は、杉山千絵のボーカルと、トリオのソングバーズのジャズ。18日は、シャンソンとカンツォーネの夕べ。ピアノとバイオリンの演奏で、玉田さかえと高橋京子が唄います。
 22日の秋分の日は、今年も西陣に行きましょう。「千両ヶ辻」の開催です。「伝統と接する」として、老舗各家のコレクション展示、西陣織の展示・販売、晴明神社の祭礼巡行。「文化に触れる」として、講演会、糸人形の展示、時代衣装の着付け。「町家を楽しむ」として、京町屋と坪庭の一般公開、町家レストランの食事などなど。肩肘張らないのが、いい。
 伊藤若冲生誕300年記念イベントは、これからが本番。嵐山の、小倉百人一首殿堂・時雨殿に行ってみましょう。歌舞伎座の緞帳でもお馴染の、川島織物セルコン共催の、綴織による若冲展です。二代目が明治時代に作製した、蒔絵の「菊唐草」、木彫の「菊花折枝」、綴織額の「紫陽花双鶏図」と「池辺群虫図」などを見たい。25日までです。
暑い夏に蝉と水音(2016年8月)

   「水の音に あつさわするる まとゐかな こすゑのせみの 声もまきれて」

 今年もあります、「京の七夕」。堀川会場では、御池通から一条戻橋まで、天の川や笹の飾りつけがLEDで表現されます。鴨川会場では、同じくLEDによる風鈴や織姫伝説が展示されます。今年から、北野の天神さんと紙屋川周辺が参加します。御手洗川の足つけ神事は、見もの。岡崎、二条城、梅小路も初参加です。15日頃まで、やっています。
 下鴨納涼古本まつりも、今年も開催。11日から16日まで、下鴨神社の糺の森です。40店以上の古書店が、森の中に古本を並べます。真剣に探すよりも、楽しく散策する感じの方がいいでし。かき氷や麺類、ビールの販売があって、団扇が配られます。紙芝居や絵本の読み語りは、子どもたちにはうれしい。神社にも、しっかりお参りしましょう。
 観光コースではないけれど、行ってみたいのが京都市歴史資料館。京都御苑の寺町御門を出た、東側。「よみがえる伏見城」と題した、特別展が30日まで開催中。秀吉による築城、地震で倒壊、家康の入城から取り壊しと、数奇な運命をたどったお城。ちょうど今、ドラマの舞台になっているところです。出土した瓦などで昔を偲んでみましょう。
 昔を考える学問が、考古学。興味がある人は、国際シンポジウム「考古学と博物館」に行ってみましょう。独特の古代文化を築いたラテンアメリカ、そのニカラグアとコスタリカから学芸員を招いて、考古学と社会とのつながりを考えます。日本からは、安土城の事例を紹介して、相互比較を行います。27日に、京都外大です。
 硬い話のあとは、花街へいきましょう。今年で3回目の、宮川町夏祭り。六道まいりの六道珍皇寺、空也さんの六波羅蜜寺やゑびす神社の西側にあるのが、宮川町歌舞練場。この辺りは、31日まで街一帯が灯ろうで照らされて、花街の情緒を高めます。ビアガーデンでは、美味しいお酒と京料理とともに、芸妓はんと舞妓はんの舞踊ステージがあります。
星に願いを七夕に(2016年7月)

   「まちつけて うれしかるらん たなはたの 心のうちそ 空にしらるる」

 あこがれの服、いつか着てみたい服。背伸びして買っても、中身がないと似合わない服。それが、ポール・スミス。なんせ、デザイナー本人が、ちょーかっこいい。全国回覧中のポール・スミス展が、国立近代美術館で18日まで開催中。ファッションの全貌はもちろん、映像とマネキンのインスタレーションが楽しい。撮影は自由、発信は自由。これがいい。
 今年も祇園祭の季節。ユネスコ無形文化遺産に登録されて、ますます観光客は増えていますが、ボランティアの皆さまの努力でごみが減っているのがうれしい。10日から17日までが前祭、18日から24までが後祭。山鉾勢揃いは見られませんが、片付けと準備が同時に見られるのも、また良し。梅雨明け前の夕立で、濡れるのもまた良し。
 古本市が終わったら、次は昆虫・爬虫・珍獣のフェアって、何なん? 「ちょっと変わったペットが大集合」とか。副題の「BLACK OUT」が気になりますが、まずは行ってみましょうか。入場景品プレゼントと大抽選会、獣医さんの特別講演、じゃんけん大会、グッズ投げと、盛り沢山。24日の、みやこめっせです。
 「たくさんかいてくれた」安西水丸展が、美術館「えき」で10日まで開催中。装丁・装画、絵本・漫画、雑誌、エッセイ、広告などなど、数えられないほど多くの作品が、ぎっしり。「ぼくの仕事」、「ぼくと3人の作家」、「ぼくのイラストレーション」と分類されていますが、気にせずあっちこっち見るのが、お勧め。村上春樹のイラストが、素敵。
 「兎のみた空」とは何?伊賀で、土と火を素材に作品を制作する、植松永次の作品展。そこには、陶芸でもない現代アートでもない、土の根源と対峙する強さと厳しさがあります。土そのもの、あるいは土に加わる手ごね感。見えない命の気配と、時間の重み。それは、土の穴から空を見る、兎の目線。市立芸大のアクアで、31日まで。
雨に知る涙と哀れ(2016年6月)

   「あはれしる そらにはあらし わひ人の なみたそけふは 雨とふるらん」

 君は、武豊を見たか? 最年少での通算勝利記録、年間200勝、日本人初の海外GI制覇など、みんなが知っている名騎手です。そのデビュー30周年を記念した展示会が、京都駅の美術館「えき」で開催中。名馬とのレース写真はもちろん、優勝カップ、愛用の馬具などが展示され、レースシーンの映像やプライベート写真も見られます。12日まで。
 祇園町北側(四条通)の何必館・京都現代美術館に、行ってみましょう。「サラ・ムーン 12345展」との、写真展が開催中。「私を突き動かすのは、いつも予測しないこと」というサラ・ムーンの作品は、緻密で独創的。詩的で幻想的な一方、怖れや老い、死の闇を感じさせます。26日までに、約80点の作品を見て、自分で考えてみましょう。
 イングリッシュ・ガーデンは、お好き? それは、英国式庭園という、自然を生活空間に溶け込ませた一つのスタイル。ここでは、ロンドンのキュー王立植物園が保存するボタニカルコレクションから、約150点が紹介されます。植物画、工芸品、蒐集家たちの画像・写真などを見てみましょう。文化博物館で、26日まで。
 広沢池の近くのしぶいミュージアム、それが佛教大学宗教文化ミュージアム。26日まで、春期特別展が開催中。「釈迦・弥陀二尊が示す道」との副題どおり、「発遣来迎」をテーマに、衆生への救済へのかたちが紹介されます。と、固く言わなくても、遣迎二尊像、阿弥陀聖衆来迎図、圓光大師像、河白道図などを拝見するのがうれしい。
 油小路通一条にひっそりと佇む、樂美術館。ここでも春期特別展の、「樂歴代 長次郎と14人の吉左衛門」が開催中。利休が、侘び茶の精神性を現わした茶碗を、作らせた男。それが、樂家初代の長次郎。初代作の「面影」、2代常慶(吉左衛門)作の「黒木」、3代道入作の「山人」などが展示されます。当代の「女?」も素晴らしい。26日まで。
初夏に届く初の声(2016年5月)

   「郭公 ひとにかたらぬ をりにしも はつねきくこそ かひなかりけれ」

 ははは、はつねをきいたよ。ひやあ、ひみつだったのに。ふふふ、ふりむいたときさ。へええ、へんでもいいから。ほほほ、ほんのりきぶんで。ほとどきすがへいわなこえでふそくがないようにひかりをあびてはねをひろげ。はいはい、ほほえみがいっぱい。ひやひや、へんとうがないのに。ふんふん、ふしぎなうたごえが。へらへら、ひんをかくのはだめ。ほらほら、はれたそらをとんで。はしりぬけて、ひっぱりあって、ふりかざして、へしおりながら、ほくほくがお。ほうらほんきを、へたはへいきさ、ふみんふきゅうで、ひらにひたむき、はつねはいりょう。 

 今年で4回目の、京都国際写真祭。テーマは、「いのちの環」。市内の13会場で、色々な作品が見られます。アソシエイテッドとして、村上重ビルと何必館が参加。楽しいのは、KG+として若手写真家やキュレーターに、30の会場で発表の場を提供していること。ロームスクエアなどでは、市民参加型のイベントあり。22日までです。
 こちらは30回目の、イメージフォーラムフェスティバル。14日から22日までの京都芸術センターを皮切りに、福岡、名古屋、横浜と回ります。日本と海外の招待部門と、一般公募部門に分かれて、フィルムやインスタレーションが次々と展開します。ダダ100年のフルックスフィルムなんて、面白そう。
 日本の伝統芸能も、負けてはいません。28日は、観世会館の面白能楽館へ行きましょう。今回のテーマは「百鬼夜行」で、鬼が主人公。異界からの来訪者が見せる世界に、触れて欲しいとか。演じられるのは、「舎利」と「土蜘蛛」。土蜘蛛の塚体験や、仏倒れ体験もあるとは、こりゃ面白い、いややっぱり怖い。
 イベントばかりではなく、心静かに青もみじを鑑賞しましょう。八瀬の里で、この季節だけ特別公開される瑠璃光院に、行きますか。一万二千坪の寺域に建つ、数寄屋造りの書院、その周りの瑠璃の庭、臥龍の庭、茶庵など。ああ、これはもう。八瀬名物のかま風呂や、樹齢100年の馬酔木も見たい。31日まで。
 瑠璃光院に併設されるのが、ルイ・イカール美術館。アール・デコ時代に活躍した、ルイ・イカールの作品をご住職が収集して、一般公開している小さな美術館。エッチングに部分彩色された作品に描かれた女性たちは、優雅で華やか。美術館は優しい光に満ちて、和洋折衷の空間の中で、静謐そのもの。同じく31日まで。
山に風が人には桜(2016年4月)

   「ならひありて 風さそふとも 山さくら たつぬるわれを まちつけてちれ」

 春の夜に顔を隠して公園を歩いた。浮かれた人達があちらこちらで騒いでいる。誰もぼくが見えない。誰もぼくを知らない。酔っているのですか、覚ましてあげましょう。笑っているのですか、泣かせてあげましょう。心地いいのですか、それなら少しの痛みをあげましょう。ぼくは、ここにいてはいけないようだ。でもぼくはこの世にいる。あれ、変な人が花を撫でている、幹を抱いている、何か口ずさんでいる。こんばんはって言われても、どう返していいのか。ああ、この人は詩人。じゃあ、ぼくも顔を見せて語ってみよう。そこかしこに漂う謎を、問いかけてみよう。浅い夜の奥を、一緒に覗いてみよう。

 海老蔵の源氏物語が、第二章として京都劇場で開幕します。今回は、「朧月夜より須磨・明石まで」です。「新たな魅力とともに一大センセーションを巻き起こす」とのコピーはともかく、歌舞伎、能楽、バロックなどの融合は楽しみ。コスタンツォのカウンターテナーも健在。陶酔にならない情緒がポイントでしょうか。6日から16日まで。
 今年もあります、春のおどり。上七軒歌舞練場では、北野をどり。歌舞劇の「浪花歌祭文」と俗曲の「廓の賑わい」のあとは、みんなで上七軒夜曲。宮川町歌舞練場では、京おどり。テーマは「春爛漫花道行」で全9景。にぎやか、はなやかで、うきうきしますね。お茶席券付のチケットがお勧めです。それぞれ、7日と17日までです。
 狂言も春らしく。27日の下鴨神社は、第34回の式年遷宮奉祝で、糺勧進猿楽の催しがあります。茂山家から、七五三、正邦、宗彦などが揃って、「御田」と「入間川」。30日の金剛能楽堂は、大蔵流五家の狂言会。大蔵家、山本家、茂山千五郎家、茂山忠三郎家、善竹家が揃った、総勢17名の狂言とはおめでたい。「二人大名」など6演目です。
 この季節、桜もいいですが、椿も愛でてみたいですね。椿の花咲く尼門跡寺院「谷の御所」を、訪ねてみましょう。鹿ケ谷の霊鑑寺では、10日まで春の特別公開中。後西天皇の御殿を移築した書院、徳川家斉寄進の本堂、約60種の椿が咲き誇る回遊式の庭園など。尼寺ならではの、御所人形や絵カルタも面白い。
 春は西陣で。茶道資料館では、10日まで新春展が開催中。陽春の茶会に相応しい茶道具が見られます。茶の湯の専門図書館、今日庵文庫にも是非どうぞ。そのお隣の本法寺でも、春季特別寺宝展が開催中。長谷川等伯の大涅槃図、狩野山楽の唐獅子図屏風は、迫力十分。15日まで、散りゆく桜とともに、楽しんでみたいですね。
梅の想いに鶯の声(2016年3月)

「つくりおきし こけのふすまに 鴬は 身にしむ梅の かやにほふらん」

 27日まで、ロームシアターを中心に、京都国際舞台芸術祭が開催中。世界からトリシャブラウンやボリスシャルマッツ、日本から、大駱駝艦、地点など。中でも、アジアのコンテンポラリーダンスのインデックスを作成している、チョイカファイは楽しみ。ダンサーは、スルジットとリアントです。そのほか、種々のプロジェクトあり。
 琳派400年のイベントも、ぼちぼち終わり。左京区の静市にある、川島織物セルコンの織物文化館を訪ねてみませんか。「織物の意匠にやどる琳派」と題して、神坂雪佳のデザインを中心にした織物の意匠を紹介してくれます。帯や肩裏などの衣装、壁張、窓掛などの室内装飾を見せていただきましょう。31日までで、予約が必要です。
 今年で2回目の京都版画トリエンナーレは、京都市美術館で4月1日まで。液晶画面の電子映像からしばし離れて、「刷る」版画の魅力に触れてみましょう。公募ではなく、推薦で採用された20人の作家。シリーズ、インスタレーションなど、大作OKの十分なスペースが確保されています。世界から京都へ、あっと驚く作品を楽しもう。
 今年もしっとりと、東山花灯路。灯りと花の道には、いけばなプロムナードと現代いけばな展。青蓮院、知恩院、八坂神社、高台寺、清水寺などは、特別拝観とライトアップ。お絵かき行灯、竹灯りの幽玄の川などで、異次元の世界に誘い込まれます。歩いていると、人の顔がだんだんわからなくなるんです(単なる近眼?)。12日から21日まで。
 饅頭人形で有名な、土人形の元祖である伏見人形を知っていますか。12日に、造形芸術大に行って、勉強してみましょう。そう、博物館さがの人形の家主催の、「京都の人形文化再発見」イベントです。まず、伏見人形のドキュメンタリー上映の後は、「京の人形」、「洛南の人形文化 宇治・茶の木人形を中心に」と題した、公演あり。
山は霞み景色は春(2016年2月)

   「山さとは かすみわたれる けしきにて 空にやはるの 立つを知るらん」

 走れ、走れ、女の子。丘の上で、子鹿のようにきみが跳ねる。靴が泥をとばす、セーターがめくれる。そんなにおへそを見せたら、宇宙が目を回してブラックホールから恐竜が飛び出してくるぞ。そんなに口を開けて大声で笑ったら、ドジョウやら鮒やらがびっくりして起き出してくるぞ。そんなに髪をかきあげたら、空のパレットで景色がみんなきみの肖像画になってしまうぞ。春立つ日だから、いいんだって?雪が溶けだしたから、いいんだって?え、よく聞こえない。ぼくが大好きだから、いいんだって?走る、走る、ぼくは走る。きみをとおり越して、世界をすり抜けて、振り返ってからきみを見つける。

 まだまだ続く、琳派400年記念祭。京都市美術館では、琳派光琳と題した展覧会が開催中。「近世・近代・現代の琳派コードを巡って」との副題どおり、自然、都市、抽象の観点から、美のエッセンスを考えます。歴史の中のコードを洗い出し、今日のコードを探るとか。何だか難しそうですが、とにかく行って見てみましょう。14日まで。
 琳派と言えば、伊藤若冲。三条と四条の間にひっそりと佇み、若冲が建てたお墓がある、浄土宗の宝蔵寺。ここでは、若冲の誕生日に合わせて、生誕会と寺宝展を開催しています。今年も、5日から3日間、寺宝が特別公開されます。素朴ながら力強い、「竹に雄鶏図」や「髑髏図」など、15点が公開。
 宝蔵寺の近所、新京極通にあるのが、同じく浄土宗総本山の誓願寺。ここでは、お釈迦様の入滅日に合わせ、涅槃図が公開され、仏教や京都魔界巡礼にちなんだ講演会が開催されます。その名も、「如是我聞」。今年の13日は、「京おんなに学ぶ」などの著書がある、歴史作家の丘眞奈美さんが講師です。
 4月に鉄道博物館が開業予定の、梅小路公園。水族館も、すっかりなじんできました。6日から14日までは、冬蛍をイメージしたLEDの光が楽しめます。テーマは、「京都 冬の光宴」。副テーマの「共生と共鳴」とは、いい感じ。21時までやっています。京都駅から、西に向かっててくてく歩くと、意外と近いですよ。
 同志社大で、10日まで真面目な展示会。ハワイに高知城をたてた男、奥村多喜衛をご存知ですか。土佐藩出身で、「神に捧げる人生」を決意し、同志社を卒業した彼。その後、ハワイで伝道活動を行いながら、日系人の教育や地位向上に努力しました。彼が高知城を模して建てた、マキキ聖域キリスト教会は、今もクリスチャンが集います。
新たな年に松の印(2016年1月)

  「ねのひして たてたる松に うゑそへん ちよかさぬへき としのしるしに」

 年が明けたね。寝覚めは明け方。がたりと鳴るのは夜更けの戸。隣の人はなにしてる。照るのは朝日。一人でいたのは昨日まで。電話はいつでも鳴りっぱなし。梨のつぶては書きかけの手紙。見てごらんよ今日の天気。きらきら光る風に舞う雪。行きましょうか初詣。腕を組んでマフラーをして。手ほどきが恋の始まり。摩利支天はすべてお見通し。押したら引くのが男の意気地。自慢するのはもうたくさん。さんざん笑ってちょっぴり泣いて。移転先には赤いくつ。つきたてを食べたい熱いおもち。もちろんこたつで蜜柑を並べて。手を握り合ったらほんのり桜色。色々あっても新しい年。年の初めにおめでとう。

 旧・京都会館が、10日にロームシアター京都として生まれ変わります。4層バルコニー構造でオペラにも対応できる、メインホール。その地下にある、自由に使えるノースホール。京都会館の雰囲気を残した、気軽なサウスホールなど、楽しみです。10日は、記念事業の後、観世流、金剛流、大蔵流が一堂に会する、能楽特別公演があります。
 マンガ学部、ポピュラーカルチャー学部、デザイン学部など、ユニークな学部があり、自由自治が息づく京都精華大学。23日まで、「本の空間 ざわめきのたび」のイベントが開催中。独特の本棚が並んだライブラリースペース、アーティスト(ブックマスター)が選んだ本、現代美術家のアートワークが展示されています。
 細見美術館で、雪、月、花を愛でてみましょう。「麗しき日本の美」と題した、コレクション名品選が24日まで開催中。市川其融の「雪中常盤図」、中村芳中の「月に露草図扇面」、酒井抱一の「桜に小禽図」などが、日本独自の繊細な季節を表現しています。そうして2月からは、永青文庫で話題になった、春画展が開催されます。
 京都の千總は、16世紀に法衣装束商として商いを始め、京友禅の老舗として昨年創業460年を迎えました。その歴史の中で収集された、小袖、絵画、古文書など2万点が、烏丸三条の千總ギャラリーで紹介されてきました。30回目の展示会は、ベストコレクション。26日までです。
 小川千甕とは、誰? 富岡鉄斎に憧れ、仏画を描き、浅井忠に学び、漫画も描いて、日本画家になった人。明治から昭和まで長く活躍した彼の作品が、「寄り道したっていいじゃない!」とのテーマで展示されます。文化博物館で31日まで。約140点の作品と資料が、見られます。中川政七商店とのコラボ、ふきんの販売も楽しみ。
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