- 龍門文庫主人 故阪本 猷氏は、奈良県吉野郡龍門村に生まれました。
- 氏は年少より文学、史学、特に古典籍を愛好してその方面に関する造詣は深く、半生の心血を注いで蒐集した和漢の典籍は、古写経を始め古写本、古版本、古活字本、自筆本、江戸絵入版本等あらゆる部門にわたって、善本はおよそ一千点に達し、識者から日本文化研究の貴重な一資料とも認められるに至りました。
- 氏はその蒐集に生地より命名して「龍門文庫」と称しましたが、不幸にも病魔の冒すところとなり、素志を全うし得ず業半ばに急逝しました。氏の手記に「文学は不朽なり、龍門文庫の結集を大成して我が生命を永久に伝へん。戊寅三月九日。」「余の蒐集は天下に誇るべきものにあらずと雖も、死後何等の謂れなく分散し去るは忍ぶ能はざるところなり。余後嗣なく寂寥に堪へざるも、蒐集の善本を以て子孫に代へたし。」とあり、蒐集の素志と抱負を偲ぶに足ります。
- 亡夫の意志を継ぎ、昭和33年9月故千代子夫人が造設にかかり、昭和34年12月1日文部省より認可を受け、その素志達成を図り、由縁の地吉野河畔上市に、震火に安全かつ防湿設備を完備した書庫を新たに建設して、本文庫の典籍を収蔵し、永く郷土の地に保存されると共に、学界の研究者の閲覧に供し、更に貴重書を選んで複製を出版し、学校、図書館等の学術団体並びに学者に頒布する等、斯界の進展に寄与し、傍ら青少年、児童の教養に資するため、もと龍門村佐々羅にある阪本家本邸の一部を改造し、青少年文庫を併設して郷土の社会教育等に貢献すべく、「財団法人阪本龍門文庫」の創設が企画されました。
- 奈良県より認定を受けて、平成24年4月1日付で「公益財団法人阪本龍門文庫」と名称を変更しました。
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