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田村隆一詩集『緑の思想』

雲見

どんなに長い夢でも
見るのは一瞬のうちだとしたら
伊豆西海岸岩地いわちから
雲見までの
あの曲りくねった道は

青の光り
波に砕ける波
おお 沖の小島の
西風に歯をむき出せ
白い頭韻
光りは屈折する
透明な夢のなかを
だれもいない曲りくねった道を

突然、ぼくの光りは切断される
するどい円錐形の
富士

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