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田村隆一詩集『新年の手紙』

鳥・西風

ミロの版画で見た
風の行方と
鳥の方向
風は人類の眼には見えないが
くっきりと鳥の羽ばたきが風を表現しているのさ
劇的なしかも音楽的な線のふるえが
人類に太陽の落ちて行くべき場所をさし示す

夕方
風が変った
冬がはじまった
人は黒いコートの襟をたてて
逆方向から渉いてくる
冬の赤い光りを背中にあびて
時はたちまち過ぎる
その時をとめようと思うなら
荒涼とした海岸に出てみたまえ
鳥は
西風にさからって一直線に
太陽の沈む あの
闇の光りにふるえる夢の中へ

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