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田村隆一詩集・補遺
不思議な一夜を過ぎて
「いろいろなアタマがあった 海鳴りを耳にして島民たちも住んだ それから ユリの花が咲いたりした」
先祖がこの道を歩いたやうに 僕も一通りの生活をはじめてゐた
わが先祖よ
あなたの感傷を僕たちは知ってゐる
太陽がある 僕たもはそれだけでいいのだなとも思った
その時 知らない土地が見えた
ふいに ナミダがあふれた 先祖の感傷 それは僕たちの側にあるんだ!
曲リくねった河底を流れ ふと知らない土地のことを想ふ
だんだん河が黒くなってきた
僕たちは郷愁に似た気持ちで雨にも濡れてみた
父が畑についてなにか語った 畑が青かった
そんな形で魚が泳いだ
ああ 夢かもしれぬ 魚が骨のごとくふるへた
そこで 僕は疲れた
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