全3段直結2A3/45互換アンプ

                           〜 ロフチン・ホワイト・アンプの現代化を目指して 〜
























 


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 【はじめに】 電圧増幅段と電力増幅段の2段構成、その段間を直結とするロフチン・ホワイト・アンプは1920年代に考案された回路です。交流的には非常に簡潔で、部品点数もごく少なくて済みますが、直流的には極めて微妙な高圧バランスの上に乗っかった神経質なアンプと言えます。結合コンデンサや段間トランスを用いていないので低域特性が良い(無帰還シングルアンプとしては…ですが)、過大入力時の応答性が優れている、特性悪化につながるグリッド電流の影響を受けにくいなどのメリットがあり、愛用されている方も多いようで、ネット検索でも45、2A3、300Bなどの製作例がいっぱいヒットします。

 増幅器の黎明期だった当時はともかく、現代では結合コンデンサの有無で音質に目を見張るほどの違いが出るとも思えませんが、低域時定数が出力トランスのみに限られる直結アンプは負帰還をかける際に大いに有利なことは確かです。

 しかし、ロフチン・ホワイト・アンプは直流配分の難しさに加え、出力管に2A3など入力感度の低い球を使う場合のドライバ段には5極管や12AX7など高利得3極管が不可欠のため、出力インピーダンスが高くなって高域特性は目を覆わんばかりの悲惨なものにならざるを得ないという弱点があります。

 右図は当HPで紹介している直熱3極管45を12AX7と同等の高能率3極管6Z−DH3Aでドライブするロフチン・ホワイト・アンプの周波数特性ですが、なんとかフラットなのは10kHzまでで、あとは奈落の底へまっしぐらという感じです。高域と低域が一気に落ちる、いわゆる「カマボコ」特性ですが、入力容量が45より相当大きい2A3となるともっと極端で、高域減衰は6kHzあたりから始まります。

 そこで、直結という音質上の特性を生かしつつ、低インピーダンスドライブや負帰還などで広帯域化、低歪率化、ダンピング・ファクター(D.F.)やクロストークの向上を図り、現代シングルアンプの水準に近づけようとあれこれ試行錯誤したのが本機です。「1台で2度おいしい」グリコ・アンプで、直熱3極管2A3と45の差し換えが切り替えSWだけでOKです。


【基本設計】  たたき台にしたのは、冒頭でも触れました6Z−DH3A―45のロフチン・ホワイト・アンプ(下図)。6Z−DH3Aで60倍ちょいの利得を稼いでも、45は増幅率が低いので総合利得はやっとこさ6.2倍強です。

 つまり、1W出力を得るには0.45Vの入力が必要で、これでは負帰還がかけられる利得の余裕はほとんどありません。また、6Z−DH3Aの出力インピーダンスは控えめに見積もっても80kΩはあり、入力容量が比較的小さな45との組み合わせでも計算上の高域カットオフ周波数(−3dB)は66kHzにしか達せず、かなり厳しい数字です。

 出力インピーダンスを下げようとドライバ段に内部抵抗の小さい球を使えば、パワーが大幅にダウンしますし、十分な利得を得ようと5極管を使えば出力インピーダンスがドンと上がって高域低下が一層ひどくなります。

 いわゆる「二律背反」の典型でして、フルドライブには90〜100Vp-pもの高入力が必要な2A3や45を直結のうえ、低インピーダンスでドライブ、なおかつ6dB程度の負帰還が可能な利得の回路となると、2段構成ではどうあがいても無理で、3段構成にして利得を稼がざるを得ません。
 
                       拡大図はこちら 

 そこでの大問題は、CR結合と違って、段が増えるに連れてウナギのぼりに高くなるB電圧対策をどう解決するかです。

 CR結合のアンプではドライバ球を200V前後のプレート電圧で働かせることが多いのですが、これを何ボルトに設定しようと、図左のようにカップリングコンデンサのおかげで出力管の直流電圧配分にはまったく影響しません。しかし、直結にすると図右のように、ドライバ段のプレート電圧が出力管のグリッド電位となるため、フィラメント(カソード)電圧やプレート電圧が大きくかさ上げされます。

 このため、ドライバ段に気前よく電圧を与えてしまえば、出力段にはとんでもない高圧が必要となって、電源部の手当てが大変です。この「かさ上げ」関係は初段とドライバ段間にも持ち込まれますので、逆にドライバ段への電圧配分をケチると、初段へ回せる電圧はほとんどなくなってしまいます。

 どこを基準に電圧配分をしていくかは人それぞれでしょうが、「主婦の昼メシ」(手近の残りもの・余りもので済ます)的アンプ製作を余儀なくされている当方としては、現実としてB+が何Vまで可能かが出発点で、まずは電源部から。
 
 手持ちの電源トランスの中で、今回一番使い勝手が良さそうなのがノグチのPMC−170M。AC350Vを傍熱整流管で両波整流、130mA流すとして整流出力は効率の良い5AR4ならなんとか440V位は確保できそうです。

 2A3プレートには420V供給できると踏んで逆算すると、カソード電位は420V引く250V=170V、グリッド電位はカソード電位170Vからバイアス分45Vを引いた125V、ドライバ段のプレートにかかる電圧は2A3グリッドと同じ125V。うーん、これでは初段に回せる電圧は無きに等しいので、初段は半導体にせざるを得ません。

 FETの2SK30Aをドレイン電圧10V位で動作させれば、ドライバ段のカソードはそれにバイアス分の3〜4V程度を加えた15V以内に収まり、ドライバ管は先ほどの125Vからカソード電圧の約15Vを引いたプレート電圧110V位で動作することになります。この電圧で出力90〜100Vp-pが得られる内部抵抗の低い球で、利得も結構稼げるものとなると、やっぱり6DJ8や6922でしょうか。

 以上の大まかな見通しを元に、ざっくり描いた全体像が下図です。



 初段入力が200mVあれば2A3で約6V(4.5W)、45で約4V(2W)が得られ、6dB位の負帰還は十分かけられそうです。 


【初段】 2SK30A(Y)を差動増幅(A級プッシュプル)で使い、回路図上側(FET1)の2SK30Aからのみ出力させています。なぜこんな変則的でややこしいことをするかというと、以前、ぺるけさんのHP「情熱の真空管」内の「私のデータ・ライブラリ」に収録されている「2SK30Aの歪み率特性」を読んでいたので、2SK30Aシングル増幅の歪みの多さが不安だったためです。

 右図は、ぺるけさんが2SK30A(Y)のドレイン電圧とドレイン電流を一定(10V、1mA)にしたうえで、ドレイン負荷抵抗値を10kΩ〜50kΩの範囲で動かして歪率を実測されたグラフです(ぺるけさんの了承を得て掲載)。

 なお、赤線および「――今回」とある部分は、当方の差動増幅部分(負荷抵抗10kΩ、ドレイン電圧12V弱、ドレイン電流0.82mA)の実測データを加筆したものです。

 ぺるけさんの測定では、10kΩ負荷でのシングル動作の歪みは、出力1Vで約1.7%、2Vでは約3%もあり、「このようなFETで真空管増幅回路と同程度の歪み率を得ようとすると、(※30kΩより)もう少し高い負荷抵抗が必要なようです」と分析されています。※印は当方の注。

 負荷抵抗を40〜50kΩにすれば歪みの問題はクリアできそうですが、半導体の場合、出力インピーダンス≒負荷抵抗値なので、今度は高域特性の劣化が避けられず、12AX7を使う2段構成のロフチン・ホワイト・アンプとそう変わらないものとなる恐れが出てきます。

 差動増幅にして、その片側からのみ出力させた場合、利得が半分になったうえ、出力インピーダンスが2倍ほど高くなる(のでは?と思われる)デメリットもありますが、2次歪みが打ち消されて歪率がうんと低くなることからこの方式を採用しました。

 平ラグに組んだもの(画像下)を単体で実測したところ、利得は7.8倍。歪率(1kHz)は1V出力時で0.081%、2V出力時で0.32%、3V出力時で0.77%、4V出力時で1.53%と好結果が得られました。

 ぺるけさんのデータと比べると赤直線の上昇角度が急になっていて、4V出力では歪率が30kΩ負荷のシングル増幅と変わらなくなりますが、ドライバ段が6DJ8や6922なら20数倍の利得が見込めますので、2A3のフルドライブには、初段出力は歪率0.2%以内の1V強で十分な計算です。

 FET1と2(画像での上下一対)にはドレイン電流2mAちょうどのものを、FET3()には1.6mAのものを使いました。FET3は1.6mAの定電流ダイオードでもかまいません。FET2のゲートにあるVR1()は負帰還量の調節用で、ゲート〜アース間が0Ωで無帰還、抵抗値を上げるにつれて負帰還量が増えます。

 画像内側の黒は、FET1と2のソース間に入れた直流バランス調整用のVR(100ΩB)ですが、結果的に利用価値はほとんどなかったので回路図では省略しました。中央のVR2個は45に差し替えた時に負帰還抵抗値を設定する回路図のVR2(1kΩB)です。
 


【ドライバ段】 2A3のフルドライブには90Vp-p、45のフルドライブには100Vp-pの交流信号が必要です。これをプレート電圧100V程度で低インピーダンス、なるべく低歪みで取り出せる電圧増幅管となると、6DJ8(≒6922)や5687などに限られてきます。5687のほうが6DJ8や6922より余裕を持ってドライブできそうですが、μが16程度と低いため総合利得を計算するとやや厳しそうなので、6922を使いました。

             6922            ドライバ段ロードライン

 電圧増幅管の場合、メーカー公表のEp-Ip特性グラフは測定範囲が広がり過ぎていて、私たちがよく利用する曲線の立ち上がり付近の様子が大雑把でわかりにくいことがよくあります。6922もなかなか適当なグラフがなくて、上図はまたまたぺるけさんのデータ(HP「情熱の真空管」内の「私のデータ・ライブラリ」内の「6DJ8/6922特性実測データ」)をお借りし(ぺるけさん了承済み)、その上にEp100V、Ip3mAを動作点とした47kΩ負荷のロードラインを引いたものです。

 直結ですので直流負荷=交流負荷となり、ロードラインは1本ですみます。これによりますと、グリッドに±2V(交流電圧計表示で約1.41V)を入力してやればプレートからは45V←→150Vの範囲、すなわち105Vp-p(交流電圧計表示で約37.1V) が取り出せて、2A3や45のフルスイングが可能です。利得は105V÷4V=26.25倍と推定でき、実測値はそれよりやや少ない23.48倍でした。

 6922グリッドに入れたR5(3kΩ)は発振防止抵抗です。6922はgmが極端に高い球ですから、配線の引き回しなどで簡単に発振します。R5や負荷抵抗のR8(47kΩ)、カソード抵抗のR6(2.2kΩ)などはラグ板などに置かず必ずソケットのピンに直付けし、管内シールドにつながる9番ピンやソケットセンターピンをアースするのはもちろんのこと、空いている片側ユニットの各ピンもアースした方が安心です。

 カソードのVR3(5kΩ)は歪率の微調整用で、大体はセンター位置位で使うことになるはずです。


【出力段】 2A3と45を無調整で差し替えるにはどうすればいいか、がここでの最大の課題で、それぞれの代表的なシングル動作例は下表の通りです。

2A3 シングル動作例 45
250V プレート電圧 250V
60mA プレート電流 34mA
15W プレート損失 10W
2.5kΩ プレート負荷 3.9kΩ
−45V バイアス −50V
2.5V2.5A フィラメント 2.5V1.5A
3.5W 出力 1.6W



 出力トランスは20W級のタンゴ・FW−20S。2次側の切り替えで3段階(2.5〜3.5〜5kΩ)にインピーダンス設定できますが、プレート負荷は2A3、45とも3.5kΩ共通とします(理由は手持ちの2回路2接点SWを使い切ってしまったことによる「めんどうくさい病」です…)。直結回路はどうしても、B電源の電圧変化や前段の動作点変動などの影響を受けやすいので、安定的な動作をさせるため初段と出力段を定電流、定電圧回路で縛ったうえ、2A3と45に適した電流・電圧をトグルSWで切り替えることにしました。

電圧配分模式図   2A3ロードライン    拡大図はこちら   45ロードライン    拡大図はこちら

 2A3の動作はプレート電圧250V、プレート電流55mA、プレート負荷3.5kΩ、バイアス−45Vを目安にしました。なぜ60mAにしなかったかというと、我が家の場合、世の中の電力使用のピーク時にはAC電圧が100Vを割るのですが、この電源トランス(PMC−170M)では、60mAに設定すると整流電圧の降下が著しくてプレートに定電圧を供給できなくなることがあったためです。

 45の場合は、プレート電圧250V、プレート電流35mA、プレート負荷3.5kΩ、バイアス−50Vを目安に動作させました。それぞれの電圧配分はおおむね模式図のようになります。ロードラインはのような具合で、いずれも最適化されていないため、これから得られる計算上の最大出力は2A3で3W強、45で2W弱といったところです。(※追記 最終的には2A3プレート電圧を5Vほど上げ、動作点を少しグラフの右側へ移しましたので、5Wが得られています)

 定電流回路は、電圧可変型3端子レギュレータ「LM317T」を使ったお手軽なもので、LM317Tはoutとadjの両端子間が1.25Vを保って動作するように作られているので、両端子間に電流値決定抵抗をはさんでやればオームの法則に基づいた一定電流が流れます。例えば60mAの定電流が必要なら1.25V÷0.06A=20.83Ωを挿入すればいい計算です。

 45の場合はR9(36Ω)が電流値決定抵抗で、1.25÷36=0.0347Aが得られます。2A3の場合はR9(36Ω)とR10(62Ω)の並列値22.78Ωが電流値決定抵抗となり、1.25÷22.78=0.0549Aとなります。C6はLM317Tの発振防止用で、極力IN端子に近いところに取り付けて下さい。

 LM317Tの入出力電圧差の最大定格は40V。160V以上あるフィラメントにこのままつなぐと壊れてしまうので、その90%程度をセメント抵抗などに吸収させてやります。ロフチン・ホワイト・アンプは、カソード(フィラメント)抵抗値が固定なので電圧や電流の調整がやりにくいのに対し、この方式ですと電流はプレート電圧やグリッド電位の影響をまったく受けずに一定ですし、カソード電圧が変化しても定電流回路が変動分を自動的に吸収してくれます。模式図で2A3のカソード電圧は163Vですが、2.7kΩのカソード抵抗を入れると0.055A×2700Ω=148.5Vが消費され、LM317Tは163V−148.5V=14.5Vを分担する計算です。

 LM317Tに55mAを流して14.5Vを吸収させると、発熱量は0.055×14.5=0.7975Wになりますので、小型の放熱板をつけるか、シャーシにへばりつけて下さい(もちろん、絶縁シート付きで)。画像上でシャーシにへばりついている半導体3個のうち下側2個がLM317T、上側の1個は平滑兼定電圧回路のパワーMOS-FET・2SK2608です。


【電源部】 傍熱整流管5AR4は、直熱管の混じった直結アンプづくりには必須のアイテムです。シリコン・ダイオードや直熱整流管を使うと電源投入後すぐにB電圧が出力されますが、まだ傍熱管の6922は暖まっていないので電流が流れず、6922のプレートすなわち2A3のグリッドには400V以上の高圧がかかります。ところが直熱管の2A3は既に動作状態にありますので、バイアスが狂って電流制御が効かず過電流によってプレートが赤熱する事態を招きます。5AR4ですと出力B電圧が徐々に上昇、必要出力電圧に達するまで20〜30秒ほど(※冷却時スタートで)かかり、その間に傍熱管のカソードも暖まるので赤熱の心配は無用になります。

 平滑兼定電圧回路は、パワーMOS-FETの2SK2608(ドレイン・ソース間電圧900V)を使った簡単なもので、R22(75kΩ)とC12(33μF)でリップルを除去、ZD2(5本直列)で430Vにして2SK2608のゲートを縛ってあります。設計段階では440V定電圧確保をもくろんでいたのですが、消費電流の少ない45の場合はクリアできても、2A3になると430V確保がギリギリでした。

 我が家のAC100Vラインは2V以上も平気で変動しますので、5AR4のDC出力も10V位は上下します。CR結合アンプなら気にもならない程度の変動ですが、直結アンプの場合はバイアスや電流へもろに影響し、計るたびにデータが大きく異なる羽目に陥ります。採用したのはお手軽な定電圧回路ですが、430V台後半の入力があれば変動を10分の1以下に押さえることができます。C11(0.1μ)は念のための2SK2608の発振防止用ですが、なくても問題ありませんでした。

 初段のマイナス電源は、シリコン・ダイオードの順方向電圧を利用、1N4002(100V)の5本直列で約−3.9Vを得ています。


【レイアウトなど】 シャーシはネット・オークションで「2A3/300Bシングルアンプ用」と称して販売されていたものです。飾り板も含め400×260×60mmの穴あけ済み鉄板製。

 両CHで計16W以上の発熱量があるカソード抵抗のレイアウトをうまく処理するにはどうすればよいのか、あれこれ思案の末に、電源トランスと出力トランスの間にあるブロック電解C取り付け用の直径30mmの大穴2個の下に20Wセメント抵抗6本を配置、熱を大穴2個から逃がすことにしました。

 2A3と45を差し替えた場合の負帰還切り替え用SW1は、MT管ソケット用の穴を埋めて取り付けています。プレート電流を切り替えるSW2と3、プレート電圧を調整するSW4と5は、5AR4の裏側に小穴をあけて設けました。

 初段は20P平ラグに組んで、シャーシ前面の裏側に取り付けました。



【調整】部品の欠陥や配線ミスがなければ、各部のDC電圧・電流はほぼ右図に準じたものになるはずです。


 初段と出力段を電圧、電流ともに縛っていますので、交流的な調整箇所は6922のカソードに入っているVR3(5kΩB)1カ所しかありません。

 まず、電源の投入前にVR3の抵抗値を3kΩ位に設定したうえで、6922のカソードとプレートの電圧をチェックします。VRを微調整してカソード電圧がDC15V前後、プレート電圧が115VほどになればOKです。

 歪率計をお持ちでしたら、上記の状態から歪率をチェック、歪率が最小になるようさらにVR3を微調整すれば完璧です。







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【基本特性】

2A3 45 備考
裸利得 24.2倍(27.7dB) 16倍(24.1dB)
負帰還量 6.1dB 6dB
最終利得 12倍(21.6dB) 8倍(18.1dB)
最大出力 5 W 2.3 W 8Ω負荷 1kHz 歪率5%
周波数特性 8Hz〜95kHz(-3dB) 17Hz〜88kHz(-3dB) 8Ω負荷 1W出力時
歪率  100Hz     0.27%  100Hz      0.85% 8Ω負荷 1W出力時
 1kHz       0.13%  1kHz       0.46%
 10kHz     0.15%  10kHz      0.54%
クロストーク -70dB以下(10Hz〜24kHz)   -70dB以下(10Hz〜25kHz) 0dB=3.16V
ダンピング・ファクタ 6.5 3.1 ON-OFF法 1kHz 1V出力時
残留雑音 0.31mV 0.5mV 聴感補正なし


<2A3周波数特性>

 下のグラフは赤線が6.1dBの負帰還をかけた仕上がり状態、青線がその前の無帰還状態、茶線は10年ほど前に同じ2A3と出力トランス、6ZDH3Aの構成で作ったロフチン・ホワイト・アンプの周波数特性です。
 低インピーダンスドライブと負帰還などの効果で、高域は予想通りきれいに伸びました。低域はもう少しフラットになるのを期待してたのですが、シングル出力トランスの直流磁化による低域悪化という宿命からは、当たり前ですが逃れられませんでした。
 ※ロフチン・ホワイト・アンプのデータは測定当時の低周波発振器の限界から(つまるところ安物のため)、20Hz以下と100kHz以上は取れていません。

 追記 この低域のだらしなさ、回路構成からはどうしても納得できなくて出力トランスを内容的には同等のタンゴU-808に替えてみたところ、9Hzまでフラット、5Hzでも−2.5dBと大幅に改善されました。U-808よりも高価なくせに一体何なんだ! 使用したFW-20S固有の問題なのか、FW-20Sに共通する低域特性のだらしなさなのかは検証できていませんが、左右2個とも同じレベルでしたので、おそらくは共通する特性なのでしょう)


  ※ いずれも上段が原形波 下段が再生波(1W、8Ω負荷、負帰還量6.1dB)


<2A3歪率特性>

 1kHzと10kHzについては、シングルアンプとしては上々の結果が出ました。ただ、いくら低域の歪みが多くなるシングルアンプとはいえ、100Hzについてはもう少し低くてもいいと思うのですが、出力トランスの低域特性が影響しているのかも知れません。

追記 案の定、出力トランスをU-808に替えてみたところ、1kHzと10kHzはほとんど変化なしなのに、100Hzは1W時で0.27%→0.19%、2W時で0.45%→0.33%などおしなべて20〜30%も歪みが減りました。

 いくら2.5Vとはいえ、交流点火によるフィラメント・ハムの影響で残留雑音が傍熱管の3倍前後はあるため、0.2〜0.3W以下の微少出力領域では歪率が左肩上がりカーブを描きます。直流点火にすれば、このあたりの歪みはかなり下がるのでしょう。

 RCAなどのデータでは、2A3はA級シングルで最大出力3.5W(歪率5%)となっていますが、本機では初段の低歪率化、6922による低インピーダンスドライブ、2A3の負荷インピーダンス3.5kΩ設定、負帰還などの相乗効果で3.5W(1kHz)での歪みは0.8%にとどまり、歪率5%での最大出力は5Wを確保できました。




<2A3ch間クロストーク>

 音の定位の善し悪しに大きく影響するのがチャンネル間クロストーク。いくら音源が良くても、チャンネル間の音漏れが多いと、極端な話ですがモノラル録音に毛の生えた程度の臨場感になる恐れもあります。

 基本的に音漏れは、低域ではB電源を介して、高域では左右CHのパーツ、配線の接近などによる飛びつきで生じるとされており、可聴帯域で-60dB(1000分の1)以下というのがある程度の目安のようです。クロストークの向上にとって一番てっとり早いのがモノラルアンプ2台(もちろん別電源、別シャーシで)を組み上げることですが、手間もコストも大変。

本機では低域については極力オーディオ信号がB電源に回りにくくなるよう、初段、ドライバ段、出力段別にデカップリング抵抗を挿入、さらにこれを左右別に分けています。高域対策としては、左右のパーツの接近や配線のクロスを極力避ける配置とし、可聴帯域で-70dB(約3000分の1)以下に押さえ込むことができました。



  


         ※ 0db=3.16V


<45周波数特性>

 2A3の場合と比べ、低域の落ち込みが顕著ですが、これは@45の最大出力が2A3の半分以下なのに、同じ1W出力状態で測定しているためA低域が厚ぼったい2A3、高域に比べて低域が薄めの45、という真空管のキャラクターの違い--によるものでしょう。

 2A3の場合と同様に250kHz付近に出力トランスに起因するピークが見られます。回路図では負帰還回路の位相補正用コンデンサの数値が抜け落ちていますが、1000pFをかました結果、結構素直な波形が得られました=画像右下
 
追記 U-808なら5Hzで-4.9dB、10Hzで-1.8dBにまで改善されました)






※いずれも上段が原形波 下段が再生波(1W、8Ω負荷、負帰還量6dB)


<45歪率特性>

 2A3の場合と同様、100Hzの歪みが1kHzや10kHzに比べかなり多くなっています。

追記 こちらも出力トランスの低域特性にからむもので、U-808なら0.5W時で0.46%→0.36%、1W時で0.85%→0.66%など全出力帯で100Hzの歪みが22〜44%も減りました)

また、これまで作ってきたいくつかの45シングルアンプと比べても、全体的に歪みがやや多い感じですが、原因として@プレート負荷を通常より低い3.5kΩ設定にしているA前段との歪み打ち消し最適ポイントを2A3の設定のまま使っているB電源トランスの2.5V巻き線に余裕がありすぎて、フィラメント電圧が約2.8Vと少し高いためハムが多く、これが歪率を押し上げている―ことが推測されます。

 この3点をきっちり手当てしてやれば、最小歪率で0.1%を切れると思いますが、そのためには計3個の切替スイッチ(出力トランスの一次インピーダンス切替用、ドライバ段カソードVRの切り替え用、フィラメントAC電圧降下用)追加が必要ですので、めんどうくさいからまあいいか、ということにしています。


<簡単なまとめ>

 サブタイトルで「ロフチン・ホワイト・アンプの現代化を目指して」などと大上段に振りかぶってみたものの、2A3と45というかなりキャパシティの違う真空管を使った互換アンプなので、設計段階からかなり妥協したり目をつぶったりしたところがあって、アブハチ取らずになるのではと危惧してたのですが、結果的にはそこそこの仕上がりになりました。とくに、2A3については予想以上でした。

 「そこそこ」とは一体どの程度なんだ? との突っ込みがありそうですが、2A3は個人的にはあまり食指のわく球ではないので2,3台作った程度の経験しかなく、この球の本当の実力の程は私にはよくわかりません。2A3シングルアンプ製作例はネット検索で山ほど引っかかるものの、残念ながら詳細な測定データがあるのはごく一部ですし、中には「12AX7−2A3無帰還アンプの周波数特性が100kHzで−3dB」などと、理論的にもにわかに信じがたいものも見受けられます。

 そうしたなか、いくつかの比較候補の中から到達目標としたのが、ぺるけさんの「情熱の真空管」<6B4Gシングル・アンプ>のデータ。同じ3段構成でも当機とは回路設計はかなり異なりますが、基本構成から細部に至るまでよく練られた完成度の高いアンプだと思います。本機は低域特性など一部を除き、「6B4Gシングル・アンプ」のレベルと大差なかったことが「そこそこ」とした根拠です。

 互換アンプと銘打ったものの、出力管を差し替えるだけで万事OKという訳にはいかず、差し替えの際にハム・バランサの微調整は必要です(個別の球によっては微調整不要のケースもありますが)。それでも、いちいち半田ごてを握らなくてもいいので、1分もかかりません。(2012.02.18)


 同じ回路ですので、私のような”耳の凡人”にも2A3と45の音色の違いがよくわかります。2A3特有の音の重さ(良く言えば重厚、あしざまに言えば鈍重)は相変わらずですが、高域までよく伸びているせいか、2段構成アンプのような全体に詰まったような感じが薄らいでいて、なかなか元気のいい音色を響かせてくれます。45は、力強さにはやや欠けるものの、中高域の品位の高さに加え、ひとつひとつの音に立体感があって、このあたりは他の球がなかなか追随できない魅力で、「真空管界の貴婦人」と呼ばれる所以でしょう。(2012.03.10追記)


<追補  ある違和感について>

 最初に音出しして以来、ずっと感じているのは音色への「何とない違和感」。2段構成の45ロフチン・ホワイトと比べ、帯域、歪み率、D.F、ch間クロストークなどデータ的にはすべてにおいて優秀なのですが、いわゆる「好みの音」と少し違うのです(2A3については、余り聴き込んだ経験がないので何とも言えません)。これは「音楽好きだけど電気音痴」のかみさんも一緒のようで、「前のほう(2段構成の45ロフチン・ホワイト)がずっと良い」とキッパリ!

 どうしてこうなるのか? 球は45ロフチン・ホワイトの45を抜いて使ってますし、繋いでいるスピーカーも一緒。出力トランスは別物(タンゴU−808とFW−20S)ですが、経験的には違和感を伴うほどの音色の違いには繋がらないように思います。

 初段に半導体の差動回路を入れており、この影響かとも思ったのですが、もしそうだとするなら、繋いでいるCDプレーヤーにはすでにてんこもりの半導体と差動回路が詰まっている訳でして、あまり説得力がなさそうです。

 そう考えると、一番の「?」は出力段の定電流化もしくは定電流化のためのLM317Tの存在なのかも知れません。そういうことがあり得るのかどうか、あるとすればいかなる理由でそうなるのか、私の脳みその及ぶ領域ではありませんが、一度、定電流化をやめて抵抗のみの回路に戻し、音色に違いが出るのか否かは試してみようと思っています。違いが出なければ振り出しに戻らざるを得ませんが、どなたかアドバイス、ヒントなど頂ければ幸いです。(2012.04.18)


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