6CW5/EL86は、欧州で1950年代後半にテレビの偏向出力や音声出力用として開発された傍熱5極管。3結にするとNECのオーディオ用出力管6R-A8に近いプレート特性が得られ、もはや入手困難になった同球の「代替」として使えるとも言われています。
実測してみると、6CW5/EL86は6R-A8より直線性がやや劣っていて増幅率(μ)もかなり低いです。しかし、バイアス0V曲線の通過位置、内部抵抗(rp)、最大プレート損失は6R-A8とほぼ同じなので、全体として見ると「代替球」としての能力は十分あるように思えます。また、TV球なので流通量が多く、懐にうんと優しいお値段で入手できるのも魅力です。
両者の大きな違いは、プレートやスクリーングリッド(sg)に印加できる最大電圧。6CW5/EL86の方が6R-A8より大幅に低く、3結にするとsg耐圧に制約されて220V程度のプレート電圧(Ep)しかかけられません。なので、6R-A8をEp330V前後で動作させているLUXや山水などの市販アンプには基本的に代替できませんからご注意下さい。
【データシート値】
|
6CW5/EL86 |
(参考) 6R-A8 |
6CW5/EL86 |
|
バルブ 形状 |
MT9pin |
MT9pin |
ユニット |
傍熱5極 |
傍熱3極 (注6) |
ヒーター |
6.3V/0.76A |
6.3V/1.0A |
最大プレート電圧 |
250~275V (注1) |
350V |
最大プレート損失 |
12~14W (注2) |
15W |
最大スクリーンG電圧 |
200 ~220V (注3) |
|
最大スクリーンG損失 |
1.75 ~2.1W (注4) |
|
3結A級動作例
(注5) |
Ep |
220V |
250V |
Eg |
-21V |
-19V |
Ib0 |
54mA |
55mA |
rp |
950Ω位 |
900~920Ω |
μ |
7.8 位 |
9.7 |
gm |
8.0 位 |
10.5 |
RL |
2.5kΩ |
2.5kΩ |
Po |
3W弱 |
3.5W |
備考(データ元) |
PHILIPS、GE、『全日本真空管マニュアル』等 |
|
|
※ 注1~4=メーカーやデータ公開時期によって異なる。
※ 注5 =PHILIPSのEp-Ip特性グラフからの概算値。
※ 注6 =実態はsgとプレートを管内で接続した多極管の3結仕様球。 |
【3結 実測値】 ※3定数(μ、rp、gm)は、上記動作例での数値
① 東芝 6CW5 |
|
<実測値> |
ヒーター |
6.3V/0.77A |
μ |
7.01 |
rp |
899Ω |
gm |
7.80 |
<コメント> |
|
② YUGOSLAVA 6CW5(その1) |
|
<実測値> |
ヒーター |
6.3V/0.79A |
μ |
7.27 |
rp |
863Ω |
gm |
8.42 |
<コメント> |
|
③ YUGOSLAVA 6CW5(その2) |
|
<実測値> |
ヒーター |
6.3V/0.79A |
μ |
7.35 |
rp |
936Ω |
gm |
7.85 |
<コメント> |
|
④ YUGOSLAVA 6CW5(その3) |
|
<実測値> |
ヒーター |
6.3V/0.76A |
μ |
7.77 |
rp |
897Ω |
gm |
8.66 |
<コメント> |
|
【参考】
② NEC 6R-A8 (その2) |
|
<実測値> |
ヒーター |
6.3V/1.04A |
μ |
9.05 |
rp |
868Ω |
gm |
10.48 |
<コメント> |
|
◆真空管一覧に戻る
◆トップページに戻る
|