ぺるけさんの
  6DJ8全段差動PPミニワッター2017   


 



ぺるけさんの6DJ8差動ミニワッター2017




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 回路定数はぺるけさん公開のものをそっくりいただきましたが、2SK117-BLの熱結合が理想的な形でできるようにと、初段をユニバーサル基板に載せてみました。平ラグを使うよりも信号回路の引き回しが短くなるので、ノイズレベルを若干でも抑え込めたかもしれません。

 残留ノイズは22〜24μV(帯域80kHz)と、真空管アンプとしては驚異的な静かさ。初期の「2012 V3」よりもさらに微音数が増え、その輪郭も鮮明になって、元々備わっていたスケールの大きな再生能力に一層の磨きがかかったようだと感じました。


【回路図】

 ぺるけさん回路との違いは以下の3点です。


@Bass Boostを省略。

A電源トランスの都合でAC130Vをブリッジ整流。

Bチャンネル間の利得差を補正するため、片チャンネルのみ負帰還回路の受け抵抗(820Ω)を1kΩ(B)半固定抵抗に変更。
半固定抵抗はとりあえず820Ω位にセットしておき、RchとLchの間で生じた利得差はこれを回してなくします。
















【基板配置】

 初段部の基板はタカスIC-301-70(72×45mm)。ここに、向かい合わせに接着剤で貼り付けて熱結合させた2SK117など左右チャンネルの初段を詰め込みます。

 出力段の6DJ8グリッドと1kΩを介して最短距離で結べるよう、基板中央のアースラインを境に左右チャンネルを配置。ダルマ形になっているのが熱結合させた2SK117、その横が差動バランス調整用の10Ω半固定抵抗、その下側が定電流化された2SK30A、左下隅が左右チャンネル間の利得差を補正するための1kΩ半固定抵抗です。





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 電源部は15P平ラグで、ブリッジ整流ダイオード〜17.3Vなど2本のツェナーダイオードまでを取り付けます。

         ※ クリックで拡大



【ハラワタ】


 入出力端子や各ブロック間などを結ぶアースラインは下のとおりです。

  


 入力のRCA端子はシャーシから絶縁します。

 ヘッドホン端子は絶縁型を使用します。


【基本特性】

L-ch R-ch 備考
無帰還利得 30.7倍 31.6倍 8Ω負荷、1kHz
仕上がり利得 5.84倍 5.84倍 同上
負帰還量 14.4dB 14.7dB 同上
最大出力 0.82W 0.85W 8Ω負荷、歪率3%
周波数特性 グラフ参照
歪み率 グラフ参照
チャンネル間クロストーク グラフ参照
ダンピングファクタ 10.8 10.9 電流注入法、8Ω負荷、1kHz
残留雑音 22μV 24μV 帯域80kHz


<周波数特性> 100kHz以上の高域で左右の減衰カーブがかなり異なっていて、R-chは割とすんなり落ちるのですが、L-chは100kHzを超えたところでかなりのテラスが出来てます。400kHzから大きなピークが生じるのは共通してます。

 出力トランス(KA-14-54P)を左右入れ替えると特性もそっくり入れ替わるので、特性の違いは出力トランスの個体差によるものでした。

 10kHz方形波の様子(上がR-ch、下がL-ch)を見ると、L-chに若干のリンギングが観察できます。

KA-14-54Pの高域特性は、ぺるけさんやおんにょさんのデータを見ても個体差が結構大きいようで、当方のはまだおとなしい方みたいです。 http://blog.goo.ne.jp/onnyo01/e/09d34e83f5281edd29a96b9507b34db0
http://www.op316.com/tubes/mw/mw-6dj8pp-2017.htm

<歪み率> 下の二つのグラフは、同じR-chを測定環境を少し変えて測定したものです。左はオーディオ・アナライザHP8903B単独での結果、右は発振器をHP8903B内蔵のものより低歪率なYHP4494Aに変えてHP8903Bの自動歪率計部で測定した結果。どちらが実態に近いのかわかりませんが、いずれにしても最少歪み率は0.03%前後のようです。


<チャンネル間クロストーク>  

 40kHzまでは−80dB以下で推移していて、全段差動ならではの特性です。

 当初はL→Rの15kHz以上がグラフより6〜10dBも悪い状態でしたが、これは音量調節ボリュームからのRch信号ライン(下画像赤矢印)がどうしてもLchをまたいで通過せざるを得ないので、高域で信号の飛びつきが起きているせいでした。

 対策として、Rch信号ラインにアースから引き出した線を絡ませて軽くシールドしてやると、左右の差がほぼ解消しました。青矢印はLch信号ライン。

<残留雑音補足> フィルタ類を全てOFFした帯域700kHzでの残留雑音は36〜38μV(入力ショート時)。その分布を見ると、400Hz以下の成分が5〜6μV、30kHz以下が19〜21μV、80kHz以下が22〜24μVとなっており、トランジスタ式ミニワッターPart5に比べ低周波ノイズはやや多いかわりに、高周波ノイズは圧倒的に少ないことがうかがえます。


【6DJ8の個体差について】

 ぺるけさんが設定された出力段の動作点はプレート電圧135V、プレート電流10.5mAで、メーカーのデータシートではその際の6DJ8バイアス電圧は-3Vを僅かに超えた辺りになります。

 手持ちの6DJ8、12本をこの条件で実測したところ、バイアスは-2.33V 〜 -3.88Vの間でバラついてました(下表)。データシート値に対して±20%といったところ。いずれも大昔に手に入れたメーカー名がほぼ消えかけたような怪しげな中古球ばかりですが、中には東芝CやSYLVANIADのようなほぼ-3Vでかつ両ユニット間の差がほとんどない「いかにも良さげな」ものも混じってます。

 次に、回路を組み上げて各個体の1kHz歪み率(常用出力帯の0.5W、最低歪み率近辺の0.02W)を測ってみました。0.5Wでは0.5〜0.9%の間でまんべんなくバラついており、0.02Wではごく一部を除いて0.03%前後に集中してます。

 意外だったのはSYLVANIADなど「いかにも良さげな」やつがイマイチだったのに対し、データシート値との乖離が大きくて期待していなかった東芝AやSYLVANIAFなどが圧倒的に低歪みだったこと。もちろん、どれを挿しても出てくる音の傾向は変わらないのですが、小出力アンプだけに歪みは極力下げるべし、で東芝AとSYLVANIAFのペアを組むことに。

6DJ8個体 Unit グリッドバイアス 0.5W歪み率 0.02W歪み率           <注>

 グリッドバイアスは、ぺるけさんの設計値(プレート電圧135V、プレート電流10.5mA)における各管単体での実測値。


 歪み率は、回路に各管を実装してDCバランスを調整した上での1kHz実測値。青字が歪みが最も少なく、赤字は最も多い個体。









東芝 @ U 1 -3.17V 0.910% 0.021%
U 2 -2.88V
東芝 A U 1 -2.59V 0.505% 0.023%
U 2 -2.51V
東芝 B U 1 -2.82V 0.723% 0.029%
U 2 -2.33V
東芝 C U 1 -2.96V 0.736% 0.031%
U 2 -2.93V
SYLVANIA D U 1 -2.95V 0.814% 0.102%
U 2 -3.01V
SYLVANIA E U 1 -2.92V 0.522% 0.029%
U 2 -3.17V
SYLVANIA F U 1 -3.27V 0.515% 0.032%
U 2 -3.48V
SYLVANIA G U 1 -2.67V 0.711% 0.035%
U 2 -2.81V
SYLVANIA H U 1 -2.55V 0.663% 0.030%
U 2 -3.14V
International I U 1 -2.65V 0.668% 0.048%
U 2 -2.72V
International J U 1 -2.87V 0.764% 0.045%
U 2 -2.88V
Philips K U 1 -3.88V 0.641% 0.037%
U 2 -3.44V

【おわりに】

 初期型も良かったですけど、それを上回る繊細かつスケールの大きな奥行きのある音を出してくれます。個人的には、TR式も含めミニワッターの中では71Aとともに、じっくり聴く機会の多いアンプになりそうです。 (2017.08.20)


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