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〈ア行〉
驚く{動詞} ハッと目が覚める様子。Audio界では「××を○○製に替えたところ、驚くべき効果があった」など、「効果」にかかる形容動詞として多用される。言語学者の間では、これを形容動詞とするには用法上の疑義があり、形容誇大動詞に分類するべきだとの説が有力。
〈カ行〉
掲示板{名詞} @部品知識と回路設計経験の豊富なベテランが悩める初心者に適切なアドバイスをする場A商品知識と使用経験の豊富なベテラン同士がさりげなく金満的自慢話に花を咲かせる場。
〈サ行〉
三百{名詞} 三百文(もん)から転じた価値の低い、あるいは胡散臭いものの意。三百店(だな)、三百代言、三百面(づら)。その他、300Bなるものもあるが、これについてはノーコメント。
ジャンク{英語} がらくた、あまり価値のないもの。ネット・オークションで純正ゴミ(スパークする真空管、断線したトランス等)の包装紙としてしばしば用いられる。類似語=ノークレーム・ノーリターン
シングルかPPか{疑問詞} 一長一短のある両真空管アンプの総合的な優劣をめぐり古来から続いている論争。物理的特性とか音楽性とか尺度の異なる観点で主張しあうからややこしいのであって、人生という万人共通の物差しでとらえれば結論はおのずと明らかである。すなわち、独身者は収入(入力)のすべてを自分に使えるから結果(出力)も豊かである。ところが、結婚すると入力のごく一部しか小遣いに回ってこないが故に、出力は質的に貧相でPP(ぴーぴー)となる。一般PP回路の最大の問題点は、お互いが勝手きままに電流(財布)を消費するので、「接待と称して自分だけ遊び回っている」「俺は青山の吊しスーツなのに、アイツは何倍もするブランドものをこっそり買い込んでる」等々の不満(アンバランス)が発生、不協和音が生じ音質の悪化を招く。これを克服しようと考案されたのが、定電流回路とシーソー動作によって相方の不明朗な浪費を制御する全段差動PP方式で、あたかもシングルのような味わいが生まれる。
線材{名詞} 洗剤と同義。汚れを落とす作用があり、メーター50円などという安価で得体の知れないものを使うと音の汚れが落ちないばかりか、かえって汚れがたまる。ハイエンド・オーディオを志向するならば、「では出力トランスの長大な巻き線はどうなるのだ」だの、ささいなことで揚げ足を取ろうとするイタリア語名の不逞の輩とは一線を画し、高純度金線ケーブルで音に悠久の黄金の輝きを取り戻さねばならない。
〈タ行〉
TANNOY{固有名詞} 英国の老舗スピーカー。故・長岡鉄男氏からは「タンナイ」(足りない)と和訳されたが、ホームズをシュワちゃんが演じても似合わないようなもんでしょう(何かよーわからん……)。
トランス{名詞} 心理学用語で、恍惚状態のさま。アンプもトランスを用いると伝送信号が恍惚化して、うっとりとした音色が生まれる。単に出力トランスだけでは効果が薄く、入力トランス、段間トランス、B電源チョークトランス、ヒーターチョークトランスとニューヨーク・マンハッタンのごとくシャーシ上にトランスを林立させないと音楽性豊かなアンプとは言えない。信号伝送系からトランスを締め出した真空管OTLアンプや半導体アンプの音が醒め切っているのはこのためだ。また、トランス類は、「タ」で始まる踊らない方の製品で統一しないと本来の効果は望めない。
〈ナ行〉
猫{名詞} ネコ目ネコ科の哺乳類。超有名某サイトをはじめ、真空管アンプビルダーのサイトに高確率で登場する。その理由については、幼少期のマジックアイ刷り込み説、柔らかな毛触りや肉球と真空管の音色連想説、非社交的性格同士が種を超えて惹かれ合う(気色悪い!)究極進化論説等様々な分析がなされているが、これらはいずれも真空管と猫の本質をまったく理解していない非科学的な説である。両者は昔から「タマ」に決まっているではないか。
猫またぎ{慣用句} 6080、KT88、6L6GC、UV211A等(出典「オーディオ真空管ポートフォリオ」)
〈ハ行〉
憑依{名詞} 何かが乗り移ること。とりつくこと。超○○アンプはこの原理に基づくとされ、P−G帰還用の3極管特性が出力管に憑依して音が良くなる。MullardやTelefunken◇マークの12AX7を使えば、6V6などの多極駄球出力管もたちどころに名球に変わる。
貧者の一灯{慣用句} 6BM8など小型複合MT管で組まれたミニ・アンプのこと。小出力のうえ真空管アンプ最大の存在意義であるヒーターの明かりも少なく暗いとあって、これでマーラーなどを聴くと気分が屈折して熱暴走しやすい。大志を抱きながら、経済的事由でこの手のアンプしか作れない時期を蛍雪時代と呼び、通常は高校3年生ごろが多い。なお、この時期をうまく乗り越えないと、後年は反動でUV211等の送信管アンプに手を染めてしまいがちだ。これらは、発生させる大量の熱が地球温暖化を加速させ、まばゆいタングステン光が目に悪影響を与えて医療費増加の要因にもなるため、喫煙とともに社会問題化している。
〈マ行〉
宮沢賢治{人名} 童話作家・詩人。代表作の「注文の多い料理店」はオーディオを志す者の必読書。
宮沢式{新語} あーしろ、こーしなければならないと、製作にあたって「注文の多い」ことで知られるアンプ類の総称。トランス、半導体、コンデンサー、基盤などに特定銘柄品の使用が指定され、配線方法などにも厳格な作法が求められる。熱烈な支持者も多いが、自分の頭を悩ませなくてもいいという桃源郷を理解できない不埒な「脱北者」もポロポロみかける。
名球会{固有名詞} 日米通算2000本以上の真空管、もしくは200台以上の真空管アンプ所有を達成した昭和生まれの偉人でつくるエリート会員組織。並はずれた金銭的能力と異常な収集癖を兼ね備えていなければ入会は不可能で、2008年末現在で会員は60名足らずとされる。欧州球を対象から外したのは、6ZP1など国産球しか持っていなかった同会の提唱者・金田某氏(※金田式アンプの金田氏とは別人物)が、EdやDA30など高価な欧州名球を持つ諸先輩らを妬んで締め出すためだったとされる。 反対語=日本駄球協会(近所のパッとしない洟垂れムスメ球たちの就職や嫁ぎ先をなんとか見つけてあげようとしている足長オジサンたちの会)
〈ヤ行〉
焼きを入れる{慣用句} 焼いて鍛えること。リンチを加えること。認知症気味の真空管のゲッターを火で焙ると正気に戻る(こともある)。ロシア、中国球にはヨイヨイでなくともシャキッとする絶大な効果あり、との指摘もあるが、製造過程で紛れ込んだウォッカや老酒成分が抜けるためか? なお、ガス火より炭火、とくに備長炭を使うとコクのある音になる。
〈ラ行〉
レコードファン{名詞} CDの出現を資産倍増の絶好機ととらえ借金までしてLP盤を買いあさったものの見事に読みが外れ、大量の不良債権を抱えてしまった投機家のこと。CDは高域が20kHzでカットされるため帯域が狭い、デジタルオーディオは波形が角ばっているため音に自然の滑らかさが欠ける、ジャケットの迫力ある大判写真はCDでは決して味わえないものだ等々、市場価格以上の高価値があって投資適格AAAであることをアピールするものの、世界金融危機の影響も加わっていまだLP市場の長期低落傾向に歯止めがかかっていない。
〈ワ行〉
(この項落丁)
《版元おことわり》 本書には長年のビンボー暮らしで昂じた著者の妄想癖が随所に見られ、オーディオ製作に応用されても当社としては結果に責任を負いかねます。また、実在の個人・団体とは一切関係なく、苦情等は受け付けません。悪しからず。