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タムラの600Ω:10kΩライントランスを使ったぺるけさんのトランス式USB-DACの標準タイプです。タムラの600Ω:10kΩはどれもここ2年ほどオークションで高値止まりしていて当方の予算では手に負えなかったのですが、大型の基盤実装タイプTpC-203(製造中止)がわりとお手頃な即決価格だったことからやっと入手できました。これまで作ってきた各種派生タイプと比較する意味で、ローパスフィルタ、トランスの2次負荷抵抗をぺるけさん推奨の定数に合わせています。
両者間に違いがあるかどうかが標準タイプ製作の動機でしたが、トランス由来と思われる音色の差は若干あるものの、地味だけれどとても自然な雰囲気、センターがピチっと決まる、音数が多い、聴き疲れしない・・・といったトランス式の特色はどれもがしっかり備えているという印象です。
その後、ぺるけさんが600Ω:10kΩトランス式USB-DAC用のLCローパスフィルタを公開されたので、TpC-203でも試してみました。
【TpC-203の基本データ】
基盤実装タイプですが、とにかくでっかい!! サイズ42×35×25mm、重量140gはTKタイプを上回っていてTDタイプとほぼ同じ、TpAsタイプ(右画像下)の3倍前後もあります。 DCR実測値は、個体Aが1次側50.07Ω、2次側825.6Ω、個体Bが1次側51.2Ω、2次側841.1Ωと、タムラのライントランスにしては結構バラついてました。 カタログスペックは周波数特性が30Hz〜20kHz±0.2dB、最大使用レベルは30dBmとなってます。 コアサイズがTpAsタイプより遙かに大きいので、とくに低域特性の良さが期待出来そうです。 |
600Ω:10kΩタイプの場合、600Ω:600Ωタイプよりもトランス単体での周波数特性をチェックするのが難しく、送り出し側のインピーダンスの違いが10kHz〜100kHzあたりの特性に大きな変化を与えてしまいます。下グラフは送り出し側インピーダンス50Ω、負荷とあるのはトランス2次側負荷抵抗値と計測機器の入力インピーダンスの合成値でのデータで、8.6kΩ負荷が最適のように見えますが、実際はある程度の目安と考えた方がよさそうです。
トランス単体での歪み率は極めて優秀です。 右グラフは出力を固定したうえで周波数を変化させ、周波数帯によって歪み率がどう変化するかをチェックしたもので、トランスの素顔がよく見えてきます。 各出力レベルとも200Hz〜20kHzの歪み率はフラットで推移、150Hzに中だるみのテラスができてますが、50Hzでもしっかり0.01%台を確保してます。これより低歪みなのは、さらに大型のタムラTF-3くらいしかないみたいですね。 ※測定条件は、送り出し側インピーダンス50Ω、2次側負荷抵抗10kΩ。 |
【回路図など】
AKI.DAC-U2704キットの変更箇所(赤マル部分)、ローパスフィルタの定数、トランス2次側負荷抵抗値はいずれもぺるけさん推奨値にそろえています。
LED電源の取り出し口は、変更した1000μF/10Vのリード部分を+側−側ともカットせずに残しておき、そこに820ΩをはさんだLED+側と−側を半田付けします。
ハラワタです。ケースはタカチHEN110412Sで、ユニバーサル基盤は6mmスペーサーで支えてます。HEN110312Sだと背丈が低すぎてTpC-203が天井につかえてしまいます。 |
【基本特性】
● 出力=2.05V(0dB.FS 1kHz)
● 残留雑音=0.12mV(帯域1MHz)
0.076mV(帯域80kHz)
● 周波数特性=グラフ参照
● 歪み率特性=グラフ参照
0dB、-10dBとも特性はほとんど変わりません。超低域の減衰状態(4Hzで-1.1dB前後)もほぼ同じで、コアが大きいだけあって「さすが!」の帯域特性です。20kHzの減衰は-0.55dBでした。 ※WaveGene出力をミリボルト・メーター(LMV-189AR)で計測 |
ぺるけさんのデータと比較しやすいように、20kHzのローパスフィルタを通した歪み率です。恐ろしく低歪み! AKI.DAC-U2704キットの歪み率が0.006%くらいらしいので、きっちりそれを反映しているみたいです。 もっとも、実際の使用形態からすると、当方の真空管パワーアンプの高域特性が100kHz前後/-3dBですので、このDACに80kHzローパスフィルタを挿入して得られる0.05%前後より若干悪い歪み率で聴くことになりますか。 ※WaveGene出力を歪率計(HP 8903B)で計測。 |
【おわりに】
当方にとって初めての600Ω:10kΩ.Ver.ですが、データ的にはあれこれ作ってみた中で最も優秀でした。出てくる音も、端正で歯切れのよい中域、よく伸びていながらも重苦しさのない低域の感じはすごくいいです。ただ、高域は音の芯を包み込む「産毛」がいささか少ないような印象で、現在の常用機「TD-1.Ver.」に取って代われるかとなるとちょっと微妙なところではあります。それはともかく、TpC-203は中古品しかなく、オークションにもあまり出回らないですが、使って損のないトランスと言えます。 (2014.09.10)
【LCローパスフィルタ化してみる】
TpC-203もTK-20ほどではないですが、負荷が定格の10kΩだとトランス単体での周波数特性がハイ上がりになるため、LCローパスフィルタの抵抗値を標準的な620Ωよりもかなり下げる必要があります。数kHz以上の高域が比較的フラットになるのは2.2mH+0.012uF+460Ω前後でした。
インダクタL1、L2はあっという間に入手困難になってしまった太陽誘電製、直流抵抗値18Ωのやつ。VR1、VR2はチューニングのしやすい多回転型半固定抵抗(500ΩBか1kΩB)が便利です。
AKI.DAC U2704キットについては、RCフィルタ版からの変更は不要です。キットのC5、C6はRCフィルタ版220uFのままLCフィルタに変更しても、超低域(数Hz)に共振によるピークは出ませんでした。
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0dB.FS、1kHz時の出力はRCフィルタより気持ち増えて2.14V。残留雑音は帯域制限1MHzで0.065mV、同80kHzで0.058mV、同20kHzで0.044mVとRCフィルタより大幅に減っています。
周波数特性はこんな感じ。低域は共振ピークもなくきれいに落ちていて、-3dBポイントは4.3Hz。 高域側は5kHzで+0.04dB、10kHzで+0.1dB、12.5kHzで+0.02dBとごく僅かな膨らみが認められますが、全然問題にならないレベルです。 |
20kHzローパスフィルタを通して歪み率を計測すると、TK-20.Ver.より低域の歪みが恐ろしく少ないことがよくわかります。TK-20.Ver.の50Hz最小歪み率は0.0132%でしたが、こちらはあっさり0.01%を割って0.0088%まで減りました。
もっとも、実際の使用環境に近い80kHzローパスフィルタを通してみると、TK-20.Ver.との違いはほとんどなくなります。
RCフィルタとLCフィルタでは、TK-20.Ver.ほど音に違いは出ないように思います。RC、LCどっちが好ましいかとなるとやっぱりLCかな・・・と。
(2014.10.19更新=青字部分)
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