ぺるけさんの トランジスタ式ミニワッター Part4


※データの一部を更新しました。青字部分です。
  (2015.10.11)









 ◆ぺるけさんの製作記事



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 今年の夏は暑かったですねえ! 音出しに必要な消費電力を減らして夏場を少しでも快適に――と、ぺるけさん公開のトランジスタ式ミニワッターPart4に目をつけたんですが、連日35℃超えの猛暑に古びた脳ミソはグチャグチャで腐乱状態。我が分身の彼(上画像)共々ぐったりと終日転がってるだけとなって製作は遅々として進まず、秋の気配と共にやっとこさ完成です。

 半導体アンプの音色にどこか馴染めないところのある当方ですが、これにはいささか驚きました。ぺるけさんが製作記事のサブタイトルで<2段差動にしたら化けました>と書かれた訳が少しは理解できたような気がします。


 完成後、ひと月余り。ケースを開けてDCオフセットの再調整をしていたところ、仮組み時のアースラインの一部を撤去し忘れてるのに気づきました! かなりの規模のループが生じて、主にチャンネル間クロストークの悪化を招いていたので、データを取り直して更新しました。


 【はじめに】

 回路構成や回路定数はぺるけさんの完全コピーで、選別半導体など主要パーツは頒布していただいたものです。その上で、ジャンパー線の一部とか次段トランジスタの熱結合とか、勝手にさわっても影響がないかなと考えられる部分のみ手を加えています。ぺるけさんの測定データと比べてみて、測定環境や測定器の誤差程度の違いしかないうり二つの結果が得られました。

 ※はぺるけさん公開の回路図です。


 【老眼の友】

 「赤ちゃんちゃんこ」に袖を通した方の多くが実感されてると思うんですが、プリント基板の作業は辛いものがあります。 私の場合、ずいぶん前から新聞用の老眼鏡では手に負えず、しばらく作業を続けた日の夜は必ず目の奥がズキズキ痛んで眠れなくなります。ほんまに歳はとりたくないもんです!

 そこで、数年前から重宝しているのがこれ。
 精密作業用と銘打った卓上スタンド(オーム電気製)で、10W丸形蛍光灯のドーナツの穴部分に直径約9センチの凸レンズがはめ込まれ、上の蓋をパカッと開けてのぞき込みながら作業します。拡大率は約2倍、レンズの一部は約4倍になり、これならハンダの乗り具合やブリッジが出来ていないかなどもちゃんと確認できます。

 当時は千円ちょいで買えたのですが、残念ながら生産終了。後継機種としてLEDランプのものが出てますが、ちょっとお値段が・・・


 【部品配置とジャンパー線】

 タカス基盤(IC-301-74)に載せる各パーツの取り付け穴位置は、ジャンパー線を除き、ぺるけさんのものと全く同じです。

 部品がそろって「さあ、やるぞ!」。基盤のパターン図を改めて眺めてみると、すごい数のジャンパー線が縦横に走ってて、これを固定する穴ポコの半田付けだけで200カ所を超えそうです。しょっぱなから気力が相当ダウン・・・

 半田付けポイントが多ければ多いほどミスする確率が高くなるので、ここは極力半田ポイントを減らしたいところ。入力回路や負帰還回路ガード用にアースラインの枝線を配置するなどぺるけさんの設計思想を確保しつつ半田ポイントを減らす、怠け者に優しい<Wャンパー線配置を試みてみました(画像下)。





 赤丸部分がジャンパー線(直径0.35ミリ銅線)の半田ポイント、青線は交差部分の絶縁を確保するための被覆線。ジャンパー線の位置関係はぺるけさんの例とほとんど同じですが、半田ポイントは計181カ所で、ぺるけさん例より15%ほど減りました。

 実物はこんな感じで、一部に絶縁チューブをかぶせているのは、この後の部品取り付けにあたって長めの銅線が変形、平行するラインと接触するリスクをなくすためです。なお、クロスする被覆線部分はまだくっついていませんので、念のため。

 ジャンパー線をぺるけさん頒布のもの(直径0.28ミリ銅線)より太めにしたのは、@0.35ミリでもひと穴に3本まで十分差し込めるA断面積が0.28ミリ線より1.5倍広いのでそのぶん抵抗値が下がるBたまたまストックがいっぱいあった――ためです。




 それにしても、クソ暑い中、ホッチキスの弾みたいなもんを大小せっせと量産して穴に差し込み、それをひたすら半田付けするという単純作業の連続なのでテンションは下がりっ放し。何度かの変更も加わって、この下ごしらえだけで疲れ果てました。


 【部品の基盤組み込み】
 

 まずは、セオリー通りに電源部から。

 部品点数が少ないうえ、サイズも比較的大型のものが多いので、すんなりと組み上がります。

 ついうっかりしがちなのが、3300uFと4700uF電解コンデンサの取り付け高さ。

 両者は本体背丈が25mm。これに足の長さや基盤厚み、スペーサー高を加えたものがアンプユニット全体の実質的な高さとなり、これがケースの内法高以下でないと後でエラいことになります。

 タカチの放熱ケースHEN110420の場合、内法高は約38mmなので、8mmスペーサを使うと両コンデンサの足は基盤上面から3mm程度に押さえて取り付ける必要があります。

 電源部が組み上がったらDC15Vアダプタと仮接続して、プラスマイナスにほぼ二等分されるかチェック。+7.54Vと−7.61Vなのでめでたく問題なし。


 電源部の後は、LRどちらかの増幅部を先に完成させ、片方はほっておきます。

 気分的にはLR同時に同じ部品をくっつけていきたいところですが、そうすると完成後テストでトラブった時、他chがらみの原因も考えなければならず、トラブルシューティングの間口が広がってしまいます。

 片chのみ先行完成させてチェックしておけば、全体完成後に問題が生じたとしても原因はもう片chに潜んでいるので、そちらを点検するだけで済みます。

 部品の組み付け順ですが、回路図に従った「上流→下流」あるいは「下流→上流」方式よりも、電源部を正面に見ながら後ずさりして目の前のスペースを埋めていく「昔の田植え」方式が効率的です。

 これは、部品が思わぬところに配置されているためで、回路図の隣近所を優先させると、先に組み付けた部分が邪魔をして後からの部品の向きや高さ調整、差し込みなどに結構苦労します。



 次段の2SA1680も熱結合させてみました。

 初段2SK170-BLのように平坦面が向き合っていないので、接着剤で貼り付けられません。このため、アルミ箔テープをぐるりと巻いて2個の2SA1680の温度差がなるべく少なくなるようにしています。

 DCドリフトは0.3〜0.5mV(室温変化10℃あたり)に収まりました。もっとも、ぺるけさんによれば2mV以下であれば十分のようなので、さしてこだわる必要もないと思います。


 一応、Bass Boost用の15kΩ、0.15uFも基盤に組み込んでいますが、使うあては当面ないので、切り替えSWは付けずジャンパー線で短絡、OFF状態にしています。

 【DCチェック】

 両chを完成させてのDCチェック結果がこれ(赤字)。数値は室温25℃で30分放置したL-chのデータですが、R-chも初段バイアス以外はほぼ同一で、直流的には問題なく一発で決まりです。アイドリング時の総電流は約360mAでした。



 【ケースと配線】

 コストダウンのため、ケースはFET式差動ヘッドホンアンプに使っていたタカチHEN110420を再加工して流用しました。底面や背面は不要な穴だらけですが、「どうせ正面からは見えないし、通気口になっていいや」とうそぶく私。

 手元に非絶縁タイプのヘッドホンジャックしかなかったので、ここのマイナス端子をアースポイントに。従って、入力のRCAジャックはケースから絶縁してシールド線で50kΩ音量調節ボリュームと繋ぎます。

 ボリュームと基盤入力間は、ちょっと長めになるR-chをアースラインと捩り、L-chはその近くを単独で走らせてます。

 スピーカー端子(±)〜基盤出力(±)〜ヘッドホンジャック(±)間は、LRともプラスとマイナスの2本の線を捩って走らせてます。

 背面の電源用トグルSWとその下に隠れているDCジャックはFET式差動ヘッドホンアンプ時代の名残。電源SWは正面パネルに移し替えた方が便利ですが、穴あけがめんどくさいのでそのままに・・・




 【基本特性】

項目 本機データ ぺるけさんデータ 備考
利得 5.84〜5.86倍 5.86倍 8Ω負荷、1kHz
最大出力 1.6W 1.6W 8Ω負荷、歪み率1%
残留雑音 19.4μV 19μV 帯域80kHz
DCドリフト 0.3〜0.5mV 2mV以下 周囲温度変化10℃あたり
消費電力 362mA 370mA±20% 無信号時
周波数特性、歪み率など 下記グラフ参照 ※ここでは割愛

 ※ 本機データで幅のある数値は左右チャンネルの違いです。


 ・周波数特性 

 0.5Wあたりまでの小出力では、低域から高域まで申し分のない素直な特性です。さすがに1Wとなると、120kHzあたりを境にガクンと直線的な減衰が始まりますが、MAX1.6Wのミニワッターとしては当然の結果でしょう。

 ※ 1Wグラフの20Hz前後に微妙な凹凸が出てますが、データ的には極々微量の減衰が普通に続いている部分でして、凹凸はExcelのグラフ能力の影響です。
 


 ・歪み率特性  ぺるけさんが公開されているのは1kHzのデータのみですが、当然のことながら本機もそれと全く同じといっていい状態です。100Hzと1kHzは完全にダブっており、下右グラフからわかるように、20Hz〜3kHzの範囲はどこで輪切りにしても1kHzと同じラインに乗ります。

 これに対して、10kHzラインのように、高域側はやや歪みが多くなっていますが、音に影響するようなレベルではないです。多分、回路に由来するもので、どうやら負帰還量がからんでいるようですが、浅学非才につきよくわかりません。



 アースラインの撤去漏れ修正後の再測定では、歪み率カーブの全体的な傾向は変わりませんが、0.03W以上の領域で歪みが20%前後減ってました。

 このアンプ、気温や電源電圧の変化に敏感なのでループだけが原因ではなさそうですが、何はともあれ、借金と歪み率は減れば減るだけうれしいものです。


 掲示板でぺるけさんにお尋ねしたところ、下記の親切でわかりやすい説明をいただきました。ありがたく原文のまま転載させていただきます。


何故、高い周波数で歪が増加しているのかを考えてみる必要があります。
長くなりますが、いろいろと書いてみます。

ミニワッターPart4では、数倍程度の利得の時に高い安定度と素直な周波数特性が得られるようにアンプ内部の帯域特性を仕込んであり、それを決定する要素の最も重要な部分は各トランジスタの内部容量と2個の470pFです。
この470pFを入れることで、あるポイントから上の高域の利得を落とすようにしてあります。
そのため、10kHzよりも高い周波数で負帰還量が減ってご指摘のように歪が増加します。
この歪の増加を防ぎたかったら470pFの容量を減らせばいいわけです。
しかし、やってみたらわかりますが、たちまち高い周波数でピークができます。
470pFは、そのちょうどいいところを狙った値です。

逆に560pFとか680pFに増やしたらどうなるか。
帯域特性が狭くなり、高い周波数における歪が徐々に増加してきます。
しかし、歪っぽい音になったりはしません。
帯域が狭くなった感じもしません。
むしろ腰が据わった感じすら出てくることがあります。

別のやり方もあります。
そもそも回路の裸利得を下げてしまえばいいのです。
負帰還をかけた時の安定度が増すので470pFの値を小さくでき、10kHz以上での歪みの上昇を防ぐことができます。
但し、利得を下げただけ負帰還量が減ってしまいますから全体に歪が多いアンプになってしまい、はたして意味があるのかどうか。

回路の裸利得を下げても歪があまり増えない方法もあります。
2段目の両エミッタそれぞれに数Ωの抵抗を入れて電流帰還をかける方法です。
裸利得は低下しますが2段目自体の歪が減少するので、仕上がりの歪はあまり低下しません。
この場合は、音の傾向が微妙に変わります。

超低歪を狙うならOPアンプの真似をすればいいです。
2段目の抵抗負荷(220Ω)をやめて定電流負荷にすれば絶大なる利得と高い直線性が得られますから、OPアンプ並みの強烈な位相補正を行ってもより低歪が実現できるでしょう。
しかし、本機の音は完全に失われます。


 あのシンプルな回路の裏にはこういう緻密で細心の検討結果が山積みになっているんですね。ここまでやらないとやっぱりあの音にはたどり着けないんだな、と納得。



 ・チャンネル間クロストーク特性

 ぺるけさんのお手本とはケース内の配線引き回しが異なっていますが、変な回り込みもなく、思ってた以上にフラットな特性が得られました。


 アースラインの撤去漏れ修正で、大幅に改善されました。右グラフの細線が当初のデータ、太線が再実測したものです。

 当初データは、左右共通電源でデカップリングも決して十分とは言えない回路構成にしてはえらくフラットに推移してるなあ、という気はしてたのですが、何のことはない、ループによって左右信号がガラポン状態になっていたということですねえ。












 【おわりに】

 音出しした時の第一印象は、半導体臭が薄くてとても気持ちのいい音色。ローエンドからハイエンドまで(もっとも、古びた駄耳ですんで帯域はうんと狭いんですけど・・・)外連見のない明快で厚みのある音を響かせてくれ、音数も多く定位もなかなかのものです。

 欲を言うなら、もう少し音の腰が低くてもいいのかな・・・との思いはありますが、これはそれぞれの好みの問題でして、このアンプの評価をいささかも損なうものではありません。今夏は間に合いませんでしたが、来シーズンのメーン機は真空管を押しのけ、きっとこれです。

 最後になりましたが、主要部品の頒布を含めぺるけさんに深く感謝いたします。 (2015.09.08)



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