AKI.DAC-U2704用の外部電源アダプタ              
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                         ↑ これです          ↑ こっちはトランス式USB-DAC

 お馴染みの秋月USB-DACキットをUSBバスパワーではなく、5Vの簡易安定化電源で動かしてみました。アナログ出力の周波数特性、歪み率、残留雑音は、バスパワーと外部電源の間で有為差はなさそうなものの、出てくる音には明らかに違いがあります。オーディオ・グレード品を含め、「音が良くなる」触れ込みのパーツ類には「どうぞご自由に」との立ち位置ですが、今回の結果には驚きました。

 駄耳にもかかわらず、外部電源にすると音の解像度が上がって弱音が強音に埋もれにくくなるのがよくわかります。それぞれの音の「にじみ」が少なくなって、全体像が細部までシャープに浮かび上がる、と感じました。

 右は打ち上げ後に設計ミスがわかった有名なハッブル宇宙望遠鏡の修理前、修理後の撮影画像比較です。もちろんこれほど極端ではないものの、受ける印象としてはよく似ているように思えます。


 ことの始まりは、当HPのアンプ追試がきっかけでお付き合い頂いている北海道のH.Kさんからのメール。「ぺるけさんのトランス式USB-DACを外部電源に変更すると、さらに良くなりますよ!!」とのことで、元ネタはMJ誌2011年6月号の「USBクリーン給電器の製作」とか。

 この給電器、PC由来の高周波ノイズからUSB機器を切り離そうというのが肝で、バスパワーをローノイズの安定化電源に置き換えるとともに、PC〜給電器間のUSBケーブルから高周波ノイズの乗った+5Vラインを取り外してます。著作権の都合で回路図は掲載できませんが、電源は12V1Aのスイッチング式ACアダプタ。3端子レギュレータ7805の前後にOSコンやディップマイカCを配置してスイッチングノイズなどを除去し、記事によると「過渡的な情報量を増やし、クッキリ鮮明で瞬発力のある音にする効果がある」銅箔PPSコンデンサも加えてUSB機器に給電する、という仕組みです。



 AKI.DAC-U2704は回路図のように、+5VのUSBバスパワーはノイズフィルタを通した後(十分かどうかは別にして・・・)、3端子レギュレータNJM2845で安定化された3.3VとしてPCM2704に供給されています。以前にPCの機種を替えて違いが出るかどうかチェックしてみたこともありましたが、当方の駄耳と測定機器の範疇では音だけでなくアナログ出力の周波数特性や歪み率が変化するようなことはありませんでした。


 このため、耳の肥えたH.Kさんの太鼓判とはいえ正直なところ半信半疑でしたが、似たようなものを作ってみないと話にならないので、ジャンク箱を漁って出来上がったのが今回のアダプタです。




【回路】 ご存じのように、スイッチング電源は高周波パルスをじゃんじゃん発生させないことには話にならない仕組みでして、しっかりしたフィルタを通してもいったん生じた高周波ノイズを全て退治するのは現実的には不可能と言えるでしょう。H.KさんはMJ誌に沿って製作されたそうですが、当方はノイズ面で有利な普通のシリーズ電源にしました。OSコンやディップマイカはともかく、銅箔PPSコンデンサとやらは当方の部品箱に存在しない代物なので、これらはまったく使ってません。



 とりたてて説明の必要もないシンプルな回路で、電圧はAKI.DAC-U2704を繋いだ実測値です。


 休眠パーツの活用のため、電源トランスは8V、AC0.5Aのものを使ってますが、43mA程度しか消費しませんので、最低AC0.1Aの容量があれば大丈夫です。470μF電解コンデンサは85℃標準品、0.1μFは”煎餅”セラミックといかにもお手軽です。ネオンランプも長年眠りこけていたのをたたき起こしただけで意味はなく、DC5Vラインから抵抗をかましてLEDにしても問題ないと思います。

 USBソケットは手持ち品の関係で2段重ねのものを使いましたが、プラグの抜き差しの際に結構力がかかるので、基盤との接合部の耐久性がちょっと不安。単独のもの2個にした方が安心です。

 USBソケットのピン配列は、カマボコ板のような絶縁板の上に細長い4本の金属片が載っかっている形で見て、向かって右から@番(+5V)A番(デジタル−)B番(デジタル+)C番(GND)となっています。

【USBケーブルの加工】

 高周波ノイズなどにまみれたPCからの+5Vが外に出ないよう、PCと電源アダプタを結ぶUSBケーブル(A-Aプラグ)を加工します。やり方はいくつか考えられますが、一番簡単なのがPCに差し込む側のUSBプラグの根本で@番ピンのコードをちょん切る方法。

 まず、内部のシールド被覆を傷つけないよう力加減に注意しながら、カッターナイフでケーブルの表皮を3センチほど縦に切り裂きます。

 次に、シールド被覆をピンセットや小型のマイナスドライバーなどで左右に広げます。中に4本のコードがありますから、このうちの赤色をニッパーで切り(なんか映画に出てくる時限爆弾の解除みたいですね。切るコードを間違えても爆発はしませんから安心ですけど・・・)、PC側のコード先端部がシールド被覆に触れてショートしないよう絶縁チューブをかぶせます。残ったアダプタ側の赤コードは切れるところまで切っておいた方がノイズの飛びつき防止になるかもです。

 あとは、シールド被覆とケーブル表皮を元のように戻し、傷口にビニールテープをグルグル巻いて「手術完了」です。

【ハラワタ】






 3端子レギュレータ7805の消費電力は0.2W以下なので、放熱板は不要。ケースはタカチMB-11(80×55×150mm)ですが、トランスを基盤取り付け用の小型品にすればUSB-DACとおそろいのHENシリーズに収まるはずです。


【ちょっとしたデータ比較】

 「iTunes」専用にしている「acer」ネットブックPCのバスパワーに含まれているノイズは1.72mV(帯域制限10Hz〜1MHz)ありました。100kHzで約10dB落ちの簡単なハイカット・フィルタを通すと0.23mVとなり、ノイズの大半は100kHz前後から上の帯域のもののようです。これに対して、外部電源アダプタのノイズは十分の一以下の0.11mV。フィルタを通しても気持ち下がる程度ですので、高周波成分はほとんどないようです。

 高周波成分をまともに分析できる機器も能力も根気も持ち合わせていませんので、可聴帯域の様子のみ探ってみました。

 下は「ONKYO SE-U33GX」を介して「WaveSpectra」で見たそれぞれの可聴帯域のノイズの様子です。バスパワーはノイズレベルが高いだけでなく、1分間のピーク値(見づらいですが緑波形の上の赤線)を比べると、様々な波形が現れては消え、その揺れも大きくて不安定なため、中低域のピーク値のラインがフラットになって高止まりしていることがわかります。これに対して、外部電源アダプタは揺れは当然あるのですが、波形の変化が少ないためピーク値のラインが基本的な波形とほぼ相似形になっています。

  外部電源アダプタの可聴帯域ノイズ    バスパワーの可聴帯域ノイズ


 お次は、それぞれをAKI.DACキットに給電してキットのフィルタとNJM2845をくぐらすとどうなるか、の比較です。ノイズレベルの差は小さくなりますが、安定度は依然として外部電源の方が良好です。1kHzから出てくるヒゲ状のピークは、供給電源やSE-U33GXにはほとんど見られないのでキットのNJM2845由来なのでしょうか?

  外部電源でのAKI.DAC3.3V出力の可聴帯域ノイズ  バスパワーでのAKI.DAC3.3V出力の可聴帯域ノイズ


 最後は、タムラTK113を使ったトランス式USB-DACの出力段階でのノイズですが、どっちもそっくりで有為差はなさそうです。

 外部電源でのトランス式USB-DACの可聴帯域残留ノイズ  バスパワーでのトランス式USB-DACの可聴帯域残留ノイズ



 こうしてみると、途中までは多少の違いがあっても、最後は一緒のような・・・

 電源を差し替える以外はどこもいじってませんので、音の違いが電源に関係するのは確かですが、その理屈はこうした僅かな違いの影響なのか、はたまた当方の脳みそでは太刀打ち出来ない深淵にあるのか、どなたかご教示をいただければ幸いです。


 最後になりましたが、ぺるけ式USB-DACの魅力をさらにアップさせるきっかけを下さったH.Kさんに深く感謝します。(2013.06.26)



 ※ 録音デバイス(ONKYO SE-U33GX)の残留ノイズ

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