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ぺるけさんのトランス式USB-DAC用LCローパスフィルタに使われていた太陽誘電の2.2mHインダクタ(通称アマガエル)が、生産終了ということで2014年秋に店頭から姿を消しました。このため、ぺるけさんは特注の2.7mHに切り替えて頒布されてますが、その2.2mHアマガエルが千石電商で再び入手できるようになってます(2015年1月現在)。そこで、トランス式USB-DACに実装した場合、両者にどの程度の違いがあるのかチェックしてみました。
【LPFの設定】 比較テストに使用したのはタムラのライントランスTK-20(600Ω:10kΩ)。 インダクタは2.7mHがぺるけさん頒布品(実測DCR=8.05Ω)、2.2mHが太陽誘電製(実測DCR=18.11Ω)。 TK-20の場合、ぺるけさん推奨のLCローパスフィルタ定数は「2.7mH+0.01uF+560Ω」なので、これを基準とします。 次に、これに対応する2.2mHの定数をどう決めるかですが、CRをあれこれ替えて周波数特性を測ってみると、「2.2mH+0.012uF+410Ω」とした場合、1kHzを基準とした時の20kHzの減衰が「2.7mH+0.01uF+560Ω」と同じ(-1.09dB)になるので、これを採用しました。 |
【最大出力と残留雑音】
2.7mH | 2.2mH | 備考 | |
最大出力 | 2.25V | 2.17V | 1kHz,0dBFS時 |
残留雑音 | 0.065mV | 0.068mV | 帯域制限1MHz |
0.055mV | 0.058mV | 同 80kHz | |
0.042mV | 0.043mV | 同 20kHz |
出力が僅かに違うのは主として両インダクタのDCRの差が影響しているためです。残留雑音もごくごく僅かに2.7mHがまさってますが、いずれも実用にあたって何らかのメリット、デメリットを与えるようなレベルのものではありません。
【周波数特性】
上段が通常用いられる周波数特性グラフですが、これでは2.7mHと2.2mHの違いを読み取ることはできません。 両者の差が出るのは2kHz〜19kHzの帯域ですので、この部分をわかりやすくするため、縦軸の倍率を通常より7倍ほど拡大してデフォルメしたのが下段グラフ。 2.7mHの場合、2kHzあたりから僅かに膨らみ始めて10kHzでピーク(+0.22dB)に達し、しばらくその勢いを維持した後は15kHzで0dBに戻り、その先は急激に減衰して20kHzで-1.09dBとなります。 2.2mHの場合、パターンは似てますが膨らみは少なく、3kHzあたりからプラスに転じて8kHzでピーク(+0.1dB)を迎え、12.7kHzで0dBに戻って20kHzで-1.09dBとなります。 特性の素直さということでは、2.2mHに分があり、ヘッドフォンで聴くと、2.7mHは高域がにぎやかしくて少々うるさい印象を受けます。LPFを構成するR値を520Ω位に下げると10kHzのピークが+0.1dB程度に抑えられますが、20kHzの減衰も-1.3dB強に増えてしまいます。 |
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【歪み率特性】
「2.7mH+0.01uF+560Ω」と「2.2mH+0.012uF+410Ω」でUSB-DACの出力歪み率がどう違ってくるのかをチェックしてみたのが下グラフ。出力を2Vに保ちつつ周波数を変化させると歪み率がどう変動するかを表しており、いずれも20Hz〜20kHzの範囲を計30ポイントで測定してます。
USB-DAC出力の歪み測定にあたっては、実際の音楽聴取環境に近い80kHzのローパスフィルタを通したもの、高域の大幅減衰に目をつぶって高周波ノイズを減らした20kHzのローパスフィルタを通したものを調べましたが、全ての測定ポイントで2.7mHの歪み率が2.2mHを下回っています。周波数帯によっては最大40%もの差がついていて、さすがは「ぺるけさん特注品」です。
【まとめ】
2.7mHと2.2mH、データ的には一長一短があるものの、「こっちでなければならない」とするほどの差はみられませんでした。
ただ、出てくる音色は2.7mHの方が全可聴帯域でよりすっきりしたものになったな、という印象を受けます。コストは2.7mHが1個220円に対し、2.2mHは同32円(千石電商)と大幅に割安ですが、最小購入単位が10個なので実質的には大差ない支出となります。
※ 測定データは、USB-DACに接続する機器の入力インピーダンスが50kΩであることを前提にしたものです。これがもっと高かったり低かったりすると測定結果がガラリと違ってきますので念のため。
(2015.01.22)
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