10 (VT-25)は直熱3極の小型送信管で、1920年代に米国で生まれたナス管の210(310)がやがて、特性は変わらないまま管名二桁の10となり、それと頃をほぼ同じくしてST管化されたみたいです。なお、VT-25は10の軍用ナンバー。 フィラメントには、タングステンに酸化トリウムを加えて熱電子の放出能力を高めたトリエーテッドタングステン(通称トリタン)が使われ、それが暗がりで煌々とオレンジ色に輝くさまに魅せられる方も少なくないようです。 【データシート値】
【バイアスが合わない?】 ネットで入手可能な10(VT-25)のメーカーデータシートは4種類ほどありますが、Ep-Ip特性グラフが付いているのはCunninghamと RCA(上グラフ)のみで、両社のグラフは同じものです。 また、動作例のデータは、Cunninghamのバイアスが他社と1V異なるだけで、それ以外の数値は4社とも同一です。 「この球の特性はこうなってますよ」と解説したものがメーカーデータシートですから、動作例を特性グラフにプロットすると、当然のことながらグラフから読み取れる各数値は動作例とほぼぴったり一致するはずです。ところが、動作例の動作基点(425V/18mA)を特性グラフにプロットした時のバイアスは-34V強と読み取れ、動作例の-39~-40Vから大きく外れてしまうほか、ネットのVT-25アンプ製作例でも「Eg= -25Vで設計したが、実装してみると何故かEgの値が(Ep-Ip)特性図と合わず、Eg= -30V位になった??」などと、バイアスの外れぶりが複数の方から報告されています。 なぜ、バイアス値がこんなに乖離するのか不審に思ってデータシートを真面目に読み直してみると、Cunningham310のデータシートにヒントとなる以下の記載がありました。 ① type '10は通常、フィラメントAC点火で動作させ、プレート電流のリターンはフィラメント端子間に入れた20~40Ω抵抗の中点から行う。 ② フィラメントをDC点火する場合は、プレート電流のリターンはフィラメントのマイナス側端子から行う。 このことからうかがえるのは、データシートの動作例バイアス値はAC点火でフィラメント中点からIpをリターンさせた際のものなのに対して、Ep-Ip特性グラフ(DC点火と明記)のバイアス値はフィラメントのマイナス側からIpをリターンさせた際のものではないか、ということ。 それなら、両者の間には少なくとも3.75Vのバイアス差が生じるので、データシートにある特性グラフの-30V曲線を-33.75V曲線に、-40V曲線も-43.75V曲線に読み替えると、動作基点(425V/18mA)は-38V位に収まります。 この推測の検証のため、手持ちの2本をDC点火・フィラメントのマイナス側からIpリターンで実測すると、1本は-40V実測値が特性グラフの-40V曲線と見事に一致、もう1本も-41.5V実測値が特性グラフの-40V曲線とほぼ重なったので、この推測は概ね正解のようです。 なお、下記の実測データはDC点火・フィラメントの中点からIpリターンさせたものです。 【実測値】 ※3定数(μ、rp、gm)は、上記動作例付近での数値
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