UX-12A の実測データ








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 UX-12Aは1934年ごろ、東京電気(マツダ)によって並四など家庭用ラジオの終段管として開発され、日本のみで生産された直熱3極出力管です。ベースになったのは米国で1920年代後半に発売された112A(ナス管、ST管)のようですが、外観は本家よりひと回り小さいST-12タイプで、特性もやや異なっています。1950年代までは製造されていたようですが、最大出力(シングル)がせいぜい270mW前後と非力のためか、皆さん食指が動かないようで作例もあまり見かけません。

 実測してみると、本家の112Aの特性に類似した個体の方が多く、ロードラインを引くにあたってはそちらを参考にした方が良さそうです。


 【データシート値】


 
   112A  UX-12A  
バルブ 形状  S-14(ナス)/ST-14(ダルマ)  ST-12(ダルマ)
 ユニット  直熱3極   直熱3極
 フィラメント  5V/0.25A  5V/0.25A
最大プレート損失  1.38W(推定)  1.53W(推定) 
 動作例  Ep.max  180V  180V
 Eg1  -13.5V  -15V
 Ib0  7.6~7.7mA  8.5mA
 rp  4.7~5  4.15kΩ
 RL 10.65~10.8 kΩ 9.65 kΩ
 μ  8.5  7.5
 gm  1.7~1.8  1.8
 Po  0.26~0.285W  0.27W
 備考(データ元) 青=Cunningham CX-112A
黒=RCA-112A 
マツダUX-12A 

   


  【実測値】   ※3定数(μ、rp、gm)は、A級動作での最適動作基点付近の数値

  個体① Toshiba 12A (No.1)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.25A
μ 8.00
rp 4.88kΩ
gm 1.64
<コメント>  1950年登場の斜体Toshibaロゴが使われ、管名からUXがとれていて、比較的新しい時期のもの。

 112AとUX-12Aの中間的な特性で、個体②と良いペアが組めます。



 個体 Toshiba 12A (No.2)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.25A
μ 8.08
rp 4.90kΩ
gm 1.65
<コメント>   個体①に同じ。



個体 Toshiba 12A (No.3)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.27A
μ 7.76
rp 4.57kΩ
gm 1.69
<コメント>   バイアスが深くなっても、小電流領域の立ち上がりが非常に良好な直線性の良い個体。

 個体④や⑤との組み合わせが良さそう。



個体 Sun UX-12A
 <実測値>  フィラメント 5V/0.26A
μ 8.34
rp 5.56kΩ
gm 1.50
<コメント>   外観こそ日本独自のUX-12Aですが、Ep-Ip特性は112Aそのものです。

 残念ながら、Sunはこの1本しか持ってないので、このメーカーに共通する特性かどうかはわかりません。 



 個体 マツダ UX-12A (No.1)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.24A
μ 8.20
rp 5.26kΩ
gm 1.56
<コメント>  UX-12Aを開発した本家マツダの品ですが、Sun製品と同様に、Ep-Ip特性は112Aそのもので、当然のことながらμも高い。

 これなら無調整で112Aと差し替え可能です。



個体 マツダ UX-12A (No.2)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.23A
μ 7.27
rp 4.65kΩ
gm 1.56
<コメント>   rpが低く、曲線の間隔も詰まっていて、これがUX-12A本来の姿のようですが、エミ減の進行で13mA辺りからプレート電流が流れにくくなり、バイアス0V曲線が途中で腰砕けになっています。



個体 マツダ UX-12A (No.3)
 <実測値>  フィラメント 5V/0.24A
μ 7.38
rp 4.57kΩ
gm 1.62
<コメント>   こちらも個体⑥同様にUX-12A本来の姿のようですが、小電流領域でのrpが高くてバイアスが深くなるにつれ、なかなかカットオフしません。なので、パワーを上げると歪みが極端に増えてしまいます。



個体 SUWAMUSEN UX-12A
 <実測値>  フィラメント 5V/0.24A
μ 7.73
rp 4.46kΩ
gm 1.73
<コメント>   UX-12Aの標準的なEp-Ip特性に極めて近く、3定数もUX-12Aデータシートに良く似ています。


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