昔からそうなのか、歳を取ったせいなのか、昔の採集地案内や古い採集記録などを見るのが好きである。
あんな所やこんな所にこんな蝶がいたのかという発見は刺激的だし、
地図を片手に当時の風景を想像したりするのは純粋に楽しい。
やはりこれは年寄り特有の懐古趣味とでも言うべきものなのかもしれない。
しかし、日頃の蝶の探索に少なからぬヒントとやる気を与えてくれるという意味では実用上も有益である。
例えば1958年発行の「日本産蝶類分布表」(北隆館)はある意味無味乾燥な本だが、
掲載されている自分が生まれる前の採集記録を見ていると、想像力をかきたてられるし、
意外に新しい発見もあったりして、これはこれで面白く「読む」ことができる。
山城地域に関して言えば、1956年発行の「昆虫採集地案内 近畿地方」(京都昆虫同好会)が面白い。
この中で南山城村の童仙房に少しだけ触れられていて次のような記述がある。
表紙にも味わいがある。
「一・二・三・四番と面白い地名を下って行くと森の中に大きい池があり水棲昆虫が豊富である。」
何と含蓄が深い文だろうか。当時から独特の番号の地名だったことがわかるし、
交通が不便なあの時代に採集者はどこから童仙房に上がったのかも興味深い。
何より大きい池とは今のどの池なのか?森とはどんな森なのか?今もあるのか?
タガメやゲンゴロウが沢山いたのだろうか?・・・・等々、
現在の風景を重ね合わせながら空想の世界にどっぷり浸らせてくれる。
ちなみにこの記述は「笠置」の案内文の一部で、蝶に関してはヒョウモン類が多いと書いてあるだけで、
オオヒカゲやクロヒカゲモドキのことには触れていない。
当サイトは1996年から始めているので、もう随分古い情報が含まれるようになってきた。
古いついでに、もっと以前の蝶が沢山いた頃のことを書き残しておくことも意味があるかもしれない。
誰かの探索のヒントになるかもしれないし、単純に興味を持ってくれる方がおられるかもしれない。
現在進行形の採集案内としては役に立たない可能性が高いが、
地図でも片手にのんびり楽しんでいただけたらと思う。
なお、第1回である今回は以上の「前文」だけで終わりで、第2回がいつになるかはまだわかりません。