*** アンドラ、あほンダラ!***

バルセロナに会社が工場を作る事になったので、アムステルダムから暫くの間、バルセロナへ
滞在する必要性が出てきた。 

当日は、工場の場所探しの為に、日本からの主張者のグル−プとJoin。 数箇所目ぼしい物件を
捜した様子。 そして、コンタクト先をメモしてあったので、そことコンタクトし、条件を
聞く事が私に課せられた仕事のようである。 とりあえず出張者チ−ムは、一人を残して
帰国してしまった。
そして、残った一人(この人のおかげで嫌な思いを後日する事になるのであるが。。。)と一緒に
工場の候補先の調査をする事になった。

Yさんは、親会社からの出向者で、国立の外大出身であり、学生時代メキシコへ留学し、
留学期間中に現地人の女性を帰国と同時に連れて帰って、結婚したそうだ。 さぞかし
スペイン語がお上手かと思ったが、これが大違いで、「連絡先の電話番号を控えてあるから、
コンタクトして欲しいんだよね。」と、来た。普通、複数以上コンタクト先があった場合、
二人で分担するのがル−ルだと思うのだけど。。。


取り敢えず、調査を済ませ本社にレポ−トできる情報が取れた。 そして楽しい週末を迎える。 
車もあるし、少し遠出しよう。 しかし、Yさんを放っていくわけにもいかないしなあ。 
一人の方が気楽でいいのだけど。と思いつつも良心が痛むので、お誘いする事にした。
「明日、アンドラへ行こうと思ってるんですけど、一緒に来られます?」
拒否する訳は無い。。。どうせ、一人じゃなんも出来ないのだから。。。

明日、朝早く起きて朝食後、出発する事にした。 旅の前は、普通わくわくするものであるが、
なんか、気が乗らない。「こちらでの運転は、慣れてないでしょうから、私が取り敢えず
やりますので、ナビゲ−タ−をやって下さい。ここに地図がありますから。」 
まあ、左ハンドルだし、慣れない交通量が多く、狭い道を運転するのは、怖いだろうから
途中の高速道路にでも代わってくれれば良いや。。。と、思いつつ車を走らせたのであった。

車は高速へ入り、北西へ走らせる。スペインの高速道路は有料であるが、支払い方法は二通り
ある。
一つは、日本と同じで、チケットとお金を担当者に支払うが、もう一つは、料金徴収人がおらず、
無人で支払いを済ませる場合がある。 これが実にユニ−クで、コインを支払額きっかり持って
いる場合、コインの投入口に支払い額に相当する金額分ぴったりの金額を支払う。
というものである。 そして、紙幣しか持っていない人の為に、有人のゲ−トを通らなければ
ならないが、数が少なくて、端っこに設置されており、(日本の左ハンドル用のゲ−トのような
感じ。といえばイメ−ジが湧くであろう)スペイン人にとっても慣れない人(まして、外国人
ならなお更。)であれば、右往左往してしまうであろう。この当たりがいかにもスペイン的で
あり、“アバウト“なところで、全く、機能的ではない。我々日本人の感覚では、支払額相当の
コインを持っていない方が多いと考え、ゲ−トも有人のものを多く設置するものだが。
(逆に、こういう所がスペインの魅力でもある。。。)交通量が多くて、少しばかり焦って
しまったが、丁度、支払相当のぴったりの額のコインを持っていたので、投入口に半信半疑
その額を投げ入れた。(正確な支払額をチェックする、精度の高い機械をスペイン人が
作れるのんかいな?と、思いつつ。。。)
しかし、驚くなかれ!! なんと、ゲ−トが開いたではないか。 へえ〜。ほんまかいな?。
スペインでもこんな立派な機械が造れるんだ。と、感心。(インタ−ネットのあるサイトで、
モロッコ人と旅行した日本人の旅行記があって、それを読んだ事があったが、ここでも、
この支払いゲ−トの事が書いてあった。 この作者は、適当にコインを投げ入れればゲ−トが
開くだろうと思ったらしく、
持っていたスペインの硬貨以外にも、モロッコの硬貨とかも一緒に適当に投げ入れた所、その
機械が壊れたらしい。後ろで待っていた人達からおもっきり文句を言われたそうな。
結末は何も書かれてなかったけど。) 作者も、スペイン人たちがコインを投げ入れて、
スム−ズに通過している様を見てその“金額チェックマシン“に驚き、スペイン製の機械を
馬鹿にしてはいけません。と締めくくってあった。 御尤も!

高速を出て、山間部へ入っていく。高速の出口までの道順は簡単であったが、これからはちょっと
困難だ。道が複雑になってくる。 で、ナビゲ−タ−役のYさんを見やると、な、なんと!眠って
いるではないか! 車の運転はしないわ、ナビゲ−タ−する気もないわ。もう、最悪。 
で、起こしたが、道路地図の見方がわからないのか、訊いてもちっとも埒があかない。 地図を
ひったくり、それを見ながら運転する事にしたが、この“トロさ”に頭にきていて冷静さを
完全に失ってしまっていたのと、運転しながらでは地図をじっくり見れない事で、案の定
考えていたル−トから外れてしまった。それでも、違うル−トを通っても目的地迄は行ける
確信があったので、そのまま、ピレネ−山脈のジグザグの道を走らせた。

しかし、“運転中は冷静さを失ってはいけません。”という教訓をその後、得る事になる。
“トロいおっさん“と道を間違えて時間をロスしてしまった焦りとで、イライラは、最高潮に
達し、運転も段々、ラフになって来た。 と、ガッシャ−ン。やってしまった! 前の車が
急ブレ−キをかけたのと、車間距離を開けていなかった事が重なって、しっかりぶつけて
しまった。
ダメ−ジを調べに車を降りると、こっちの車(FIATの小型車)のラジエ−タ−タンクが壊れて
しまい、緑色した不凍液がものすごい勢いで流れ出ている。 で、相手の車は(三菱の古い
ギャラン)ボデ−になんらダメ−ジは無く、鉄製の飛び出た牽引フック(キャンピングカ−など
引っ張る為に欧州では、このフックをつけている車が多い。)が少し曲がっているだけである。
どうやらこのフックに樹脂製のラジエ−タ−タンクがぶつかってしまったらしい。 
あ〜あ、えらい事してしもた。
とりあえず、もう車は動かないので、被害者(?)のデンマ−ク人ご家族様一行の車に乗せて
もらいアンドラの首都、アンドラ ラ ベジャ迄連れて行ってもらう事にした。 
南スペインで楽しんだ後、アンドラで買い物をして帰るのだそうだ。デンマ−クからスペイン
最南端までは、およそ3,000Km位はあろうか。しかし、これはもう“ゲルマン民族の移動“の
現代版である。 この辺りの感覚が我々島国の日本人には理解できない。 陸続きであるが所以
であろう。 
アンドラは、非課税国であり、“TAX-FREE”で製品を購入できる。 この国は、フランスと
スペイン共同主権下にあり、両国の通貨が用いられている。 山間部である事から、森林、
水力資源に恵まれており、冬はスキー、夏は避暑地として観光客で賑わう。 人口は約5万人。

さて、首都についた。 被害者とバイバイし、帰りの為にレンタカ−を再び借りなければ
ならないのでぶつけた車を借りていた同じレンタカ−屋、“AVIS”を捜すも見つからない。
捜した末に、ショッピングモ−ルの一角に“HERTS” があるのを発見。(これぞ天の助け! 
無事にバルセロナへ戻れる。) フォ−ドの小型車を再度レンタルする事にした。 
時間がもったいないのでYさんに、“AVIS”の事務所に事故のことを連絡するよう頼んだ。 
「それ位できるでしょ。何でもかんでもこっちにやらせないでよ!」っと、怒鳴ってやった。
心の中で。。。

あ〜ぁ。。。観光する時間がないよ。ほんの1〜2時間商店を見回り、結局なにも買わず、帰路に
ついた。 帰り道、来る時には通らなかった大きなトンネルを通り(そうなんだよ。このルートを
往きの時、通るつもりが、ナビゲーションしてもらえなかったおかげで他の道を行き、事故に
遭った。
ちゃんと、ナビゲーションしてくれていれば、事故しなかったんだ!)国境を越えて、無事に
バルセロナへ帰ってきた。 しかし、何のために行ったんだろう? トホホ。。。
事故で時間を取られ、 新たにレンタカ−を借りるのにまた時間を取られ。。。
アンドラ、 アホンダラ! もう二度と来るもんか!

『いらいらして車の運転はしてはいけません』という教訓を得た旅であった。

 





                        HOME         NEXT