心の宿った入れ物ひとつ
今日も もてあまして
平等な朝日に祝福されながら
音もなく 縁側で佇んでいる
世界中で忙しく動き回る
無数の生物の足音が
風に乗って あたりを流れてゆく
この地に根を生やしていながら
まるでどこか遠い惑星の
息づかいを聞いているようだ
風は絶え間なく吹き
軒下の蜘蛛の巣を ピカピカ輝かせている
あの蜘蛛の巣は昨日
取り除いたはずだった
塀の隙間からこちらを覗く
名を知らぬ草花が
種を飛ばしてケラケラ笑っている
目を伏せれば足元には
もがいている蛾を運ぶ蟻
昔はつついて遊んでいた彼らの列にも
今はとても手を出せない
('10.2.1)