アルミ缶の成分:分析表




この写真は、アルミ缶の成分を分析した時のテストピースです。

直径は約3.5cmです。形状は特にこだわりません。

まず、分析測定したいアルミだけを取り出して溶解します。(約600℃)

測定するためには平らな面が必要ですので、まずこのテストピースの片面を機械加工で削りだし、平面部を作ります。

そして、この平面部に電極を当てて、アルミ成分の分析測定をします。

2ヶ所黒くなっているところがそうです。


測定結果

ふたと、どう(胴)とを完全に分別してから、ふた部分と、どう部分をそれぞれ溶解して測定しました。

大阪府立産業技術総合研究所にて分析


                   ふた部分:成分表

項目

Cu:銅

Si:ケイ素

Mg:マグネシウム

Zn:亜鉛

Fe:鉄

Mn:マンガン

Ti:チタン

Cr:クロム

分量

0.05

0.07

3.8

0.01

0.21

0.36

0.00

0.02

測定日時:平成8年6月12日 報告書02-00406-1




どう部分:成分表
項目 Cu:銅 Si:ケイ素 Mg:マグネシウム Zn:亜鉛 Fe:鉄 Mn:マンガン Ti:チタン Cr:クロム
分量 0.15 0.37 1.39 0.15 0.36 0.79 0.01 0.01
測定日時:平成8年6月12日 報告書02-00406-2


この成分表でわかりますことは、ふたにはマグネシュームが、どうにはマンガンが多く含まれます。

その他の数値は全体的にどうの方が大きいですね。

これは、どうの部分には塗装が施されており、これが溶解したときの不純物となり、アルミの純度を落とします。

塗料はバインダー(接着剤)と顔料(色素)からなっています。
溶解炉の中は約700℃であり、接着剤は蒸発してしまうので問題はありませんが、顔料についてはチタン(白色)やカドミウム(黄色)などのようにアルミニウムの融点に近いものは再生地金の中にとけ込んでしまい、不純物となって質を落としてしまいます。


塗装を落とす方法はいくつかありますが、設備が高額でリサイクルという観点からみると採算的に難しい問題があります。

ふた・プルタブ部分は不純物が少なく、溶解したときのアルミ純度が高いため、どう部分に比べ価値が高く引き取り単価は高くなります。
リサイクルの観点からは、ふた(プルタブ)とどうの部分とは切り離して処理した方がベストと言えます。


しかし、現実にはふた(プルタブ)だけを取り出すのはむずかしく、成分の違いだけを理解していただければ良いと思います。
プルタブは取り外せば良いと思います。



最新の技術をもって、ふたのアルミを取り出すことが出来ました。参考資料(平成15年7月29日)

スチール缶からアルミと鉄の溶解温度差を利用して、アルミを完全分離成型。
脱酸材や品質の均一な製鋼原料を製造するプラントを、栗本エンバイロ株式会社が開発しました。
約5,000坪の敷地内に100t/日と大規模なプラントで、茨城県猿島郡総和町丘里工業団地に建設。設備費は10億円程度。


  
プラント全体図をご覧下さい。


最新技術の概要を書きとめました。

重量比でスチール缶の約90%を占める胴部の鉄(Fe)の融点1539℃と、約10%を占めるアルミニウム(Al)の融点659℃に大きな差があることに着目。

Alの融点以上且つFeの融点以下に保持し、Alのみを溶融させて胴部のスチールと分離し、各々を回収することとした。

Alは高温において非常に酸化され易いため、炉内雰囲気を無酸素状態にすることにより、Alの損失を抑え採算性を高くした。



なぜ、違った材質なのでしょう。


ふたのプルトップ部分は開けやすいように、サクッと切れるマグネシウム合金(4〜5%含有)

どうの部分は一枚の板から深絞り加工で成形しますので、柔らかく粘りけのあるマンガン合金(1〜1.5%含有)が要求されます。

こういった事情で、それぞれが違った性質のアルミが使われているのです。




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