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熊五郎狐 |
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●熊五郎狐● |
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熊熊五郎狐と呼ばれる狐の像が、奈良県大和郡山市の県立民俗公園の遊歩道の四阿(あずまや)にあります。そして熊五郎狐像の傍の説明板には、下記のような伝説が記述されています。
この伝説は「大和郡山市史」や「ふるさと大和郡山歴史事典」その他の郷土資料でも見かけることはなく、いつの頃の話か、原型がどうだったかなど詳細は分かりません。とはいえ、源九郎狐で有名な大和郡山 に伝わる話としてはなかなかに興味深い内容です。 |
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伝説
「矢田の熊五郎狐の話」
昔、この公園の地に「熊五郎」という名の
狐が住んでいました。
熊五郎は、大和郡山の中でもたいそう神通
力を持った狐であったそうです。村人達が困
った時には、いつもどこからともなくやって
来ては助けてくれたそうです。それでいつの
日からか「熊五郎様」、「熊五郎様」と人々に崇
められるようになりました。
今でもこの公園の東側にある小高い丘の上
には「熊五郎大明神」という石碑が残ってお
ります。ここにある熊五郎狐の前にしゃがみ
あなたの願い事を心に念じ手を打ってみて下
さい。手を打つとコーンコーンという声が響
けばきっと願い事を叶えてくれるでしょう。
本当か、嘘か、化かされたと思いためして
ゴジャレ? |
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熊五郎狐像は、もとは近辺にあった稲荷を祀る祠の阿吽の狛狐だったと聞きます。何らかの原因で祠と片方の狛狐(吽形)が失われ、現在の熊五郎狐像は残る片方(阿形)なのかもしれません。また、熊五郎狐像と同形の狛狐は各地の稲荷神社で見かけるので、おそらくは規格品と思われます。となると、元々阿吽がペアになっていて狛狐の片方が失われた、という話には真実味があるように思われます。
もっともこの話は口コミで知ったもので、博物館の学芸員さんや専門の研究者から確認が取れた話ではなく、私的には今後の宿題とさせていただきます。
なお、あくまで私的に便宜的な呼称ですが、同形の狛狐は「熊五郎型」と仮称しています。 |
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下記の熊五郎大明神の碑は民俗博物館の入口近くにあります。現在でも近隣の人によって守られており、定期的に掃除が行われたりお参りする人がいるそうです。熊五郎大明神に対する信仰(と言っていいかどうかですが)は同碑が中心になっているとのことです。これは民俗博物館の学芸員さんからお聞きしました。
各地に「野施行」や「寒施行」という習俗が伝わっており、それは奈良県内の平郡谷や矢田丘陵(矢田寺や民俗博物館のある丘陵地)にも残ります。冬の期間、狐(あるいは霊狐)にお供えをするという民間信仰です。
矢田丘陵の形式では、路傍の碑にうるち米で作ったお赤飯を三角に握ってお供えするそうで、時にお揚げを敷いてその上に三角のお握りを載せることも。路傍の碑とは、それこそ単なる石にしか見えないものらしく、その土地の者にしか見分けることは困難だそうです。それらの碑のうちで今もハッキリ残っているのが熊五郎大明神の碑(あるいはかつての祠)ということになるのかもしれません。
また、「寒施行」は同地域だけでなく、各地の農村部や里山に伝わる習俗です。これが同地域にあるということは平郡谷から矢田丘陵には霊狐に対する民間信仰があったとも考えられます。
同地域には、昔は大学の調査も入った様子ですが、それがまとめられて発表されるには至らなかったとのことです。私たちが同地域の寒施行や霊狐に対する民間信仰、熊五郎大明神に対する信仰を知ることは、どうやら簡単ではなさそうです。以上、せっかく学芸員さんからお聞きしたので、その内容を備忘録的に記してみました。 |
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●熊五郎大明神の碑●
大和民俗公園内 民俗博物館そば
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本稿筆者が見かけた仮称「熊五郎型」の狐像を以下にご紹介し ま しょう。 |
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●末廣稲荷神社の狛狐●
郡山八幡神社境内社 奈良県大和郡山市柳
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●源宗稲荷神社の狛狐●
小泉神社境内社 奈良県大和郡山市小泉町
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●楠大明神の狛狐●
●春高大神の狛狐●
上記2社 葛葉稲荷神社境内社 大阪府和泉市葛の葉町1
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●豊川・伏見・孫太郎稲荷神社の狛狐●
平等寺(三輪)境内社 奈良県大和郡山市柳
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●出世稲荷神社の狛狐●
南都御霊神社境内社 奈良県奈良市薬師堂町
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●楠珺社の狛狐●
住吉大社境内社 大阪府大阪市住吉区
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●一言稲荷神社の狛狐●
葛城一言主神社境内社 奈良県御所市森脇
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●稲荷神社の狛狐●
小北稲荷神社境内社 奈良県北葛城郡広陵町
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●辰五郎大明神の狛狐●
●稲川大明神の狛狐●
上記2社 辰五郎大明神の境内社 奈良県桜井市三輪
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●稲荷神社の狛狐(類似)●
崇道天皇社境内社 奈良県奈良市西紀寺町
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●稲荷神社の狛狐(類似)●
鴨都波神社境内社 奈良県御所市宮前町
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「野施行」・「寒施行」などが残り人と狐が関わり合った地域には、人には分からない狐たちのネットワークがあったのかもしれません。過去には、このネットワークが大掛かりに発動したケースもあったことでしょう(浅香山稲荷神社)。もちろんそれらは想像でしかありませんが、人は人と関わる狐にそのような不思議な力を見たことでしょう。狐には非常に心惹かれるものがあります♪
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