自動車のデザインに見る企業を支配するモノ

 最近の自動車(コンセプトカーを含めて)を、見ていると自動車メーカーの中で市場調査部門というものがデザイン関しても大きな発言力を持っている様に思われますね。
 特にスポーツカー。「フェンダーの峰がスポーツカーの象徴」という様な調査結果が出ればそのまま前輪の上の部分が高くなる。「大きな前面の開口部」となれば、笑っちゃうくらい前面の開口が大きくなる。「長いフロントフード」となればエンジンはもっとコンパクトに収まっているはずなのにボンネット(フロントフード)が長くなる。


「フェンダーの峰」とはミッドシップ、リアエンジンだから意味がある

 つまりフロントにエンジンがないから中央部を低く作れて相対的にフロントタイヤの上の部分が高くなる。それがフェンダーの峰になる。
 フロントにエンジンがある車でフェンダーの峰を作ろうとすると、それほど低くないボンネットに それより更に高くしなければならない。そうすると当然フロントタイヤの頂点とフェンダーの頂点の間は間延びしてしまう。よっぽどうまくデザインしないと 厚ぼったく感じてしまう。横から見たクルマの印象が長方形になってしまう。


「長いフロントフード」に何が収まっているの?

 東京モーターショーにある自動車会社のコンセプトカーが展示されました。(いえ、テレビで見ただけなんですけどね。) 長いボンネット(フロントフード)、コンパクトなキャビン、短く切られたテール部、うねり 流れる様なボティライン、カッコ良いんです。確かにカッコ良いんです。
 でも、掲示されているエンジン形式だと こんなに長いボンネットが必要なはずは無いんです。もし これだけの長さのボンネットがこの形式のエンジンを収めるために必要だとするとエンジンは とんでもなく大きなエンジン(“cc”の大きなエンジン)になるはずなんです。
 いっそ エンジンの形式なんて掲示されなかったほうが納得できるんですけどね。デザイン スタディに過ぎないのならね……。


いずれも市場調査に対して

数値化して答えを出そうとするからボディ ラインの流れや技術的な要件とは関係なく「高く」「大きく」「長く」なるんじゃないですか? でも、“実際には高くなくても高く感じさせる”のがデザインの妙だと思うんですけどね……。
 市場調査に素直に従ってしまうだけだと未来を創造 出来なくなるんじゃないですか? 「長いフロントフード」のクルマをデザインすれば多くの人から支持は得られるでしょう。しかしそれは 過去の価値観の延長にしか過ぎないのだと思います。
 それが技術的な必然性があれば それはそれで良いのです。しかし、技術的な問題が無いのなら新たな価値観を生み出すことも出来るはずだと思うのです。そうすることこそが未来を創造するということだと思います。



2017/09/01



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