2019年11月3日の早朝に、眉村卓先生が逝去された。先生の告別式は、同月9日に大阪市阿倍野区のやすらぎ天空館で執り行われ多数の方が参列した。
眉村先生の追悼の言葉等を掲載した同人誌として、本号は出版を企画し原稿募集を行った。予定では、2020年の春に発行を考えていたが、版下組版において困難に直面した。原稿は、追悼特集よしては雑誌を発行できるまでに集まったが、しかし、デジタル版下をどのように作成するのか問題であった。
当初、ワープロソフトのWORDを使って組み版・版下作成を行い、これをPDFで出力してデジタル入稿用原稿とする予定であった。しかし、WORDで実際に組版を試みると、従来の同人誌での版組みに近いレイアウトや組版を行うことは、不可能であると言う結論に達した。
2020年の春から夏にかけて組版を試みたが、WORDではどうしようもない。きわめて粗雑な版組みはできるが、それは従来の『北西航路』や『風の翼』の版組み品質を大幅に劣化させるため許容し難かった。
2020年の秋から冬にかけて、WORDについて更に調べた上で版組を試みたが、不可能と云わざるを得なかった。南山鳥27は同人に、WORDでは版組は不可能であるが、別のソフトで版組はできないだろうかと尋ねた。適切なソフトはないようであるが、AdobeのInDesignは、かなり対応するのではないかという意見があった。しかし、InDesignを誰も使った経験もなく、実際のところは分からなかった。
とはいえ、他の方法も試みたが、うまく行かないことが分かり、InDesignでの編集・組版を試すことにした。2021年の初め頃より、InDesignを使って実際に版組ができるのか、試験的に試すことにした。
その結果として、InDesignでほぼ従来と同じ品質の版組が行えそうであるという結果となったので、InDesignを使って版下作成に取りかかった。
これが2021年3月のことで、3月一杯、更に4月の最後の週を除いて、山都風位が、InDesignの使い方を学びながら版下作成を試みた。4月の最後の週の一週間は、南山鳥27が、山都がそれまで造っていた作成途上の版下に、レイアウトを主とする修正編集を行った。InDesignがフリーで使える試用期間は一週間なので、この一週間のあいだに、南山鳥は、紙のマニュアル本とオンライン・マニュアルなどを参考に、試行錯誤を繰り返しつつ、修正編集をInDesignで行った。
そもそも、InDesignはマニュアルを幾ら読んで、ソフトを実際に使っても、使い方が皆目分からないという見解がある。これは、InDesignに限らず、Adobeの画像や文字関係の編集ソフトはほぼすべてそうである。逆に言うと、Adobeのソフト、例えば、PhotoshopやIllustratorの使い方を知っている人は、そこからの応用で、InDesignもある程度使い方が分かると言うことである。実際に、山都は、これらのソフトをよく知っていたのと、元々印刷物の版下作成の専門家であるので、InDesignに出てくる様々な印刷関係専門用語や、そのコンセプトが理解できたので、編集が可能だったと言える。南山鳥27は、photoshopについては、二十年近くの経験をもっており、ここから、わずか一週間のフリー試用期間で、InDesignでのレイアウト編集ができたと言える。
最終稿は5月の半ば頃にできあがり、表紙などと共に、印刷所にデジタル入稿した。発行日は、4月末に決めたが、山都が、印刷所に入稿すれば、数日で同人誌は完成するとか云うので、5月17日を発行日にした。しかし印刷所で、印刷製作に一週間程度要し、完成雑誌を郵送で受け取ったのは、月末近くであった。5月27日に、南山鳥27は山都風位と、生駒駅で落ち合い、同人誌50部ほどを受け取る。翌日28日に、謹呈先に発送した。同人宛には、山都が発送した。この日程からすると、発行日は5月27日の方がより実情にあっていたとも云える。
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