序章 第1章 〜出発〜 第3章 〜地獄 そして 帰還


いただキリマンジャロ!

第2章 〜ピクニックと危険信号〜 登山2,3日目


2日目

朝はまずまず寒い。
日本の中秋の朝といった気温だ。今日も天気はよさそうだ。
冷たい水で顔を洗う。うー、ひゃっこい!

ポーターがロッジにやってきた。朝食が出来たようだ。
大食堂はすでに大勢で賑わっていた。
カロリーを摂るため、トーストにたっぷりバターを塗る。あったかいミロやコーヒーが飲めるのはありがたい。このあとベーコンや卵焼きが出てくる。
2杯目のコーヒーをいただいて退出。

昨日の夕方、少々しんどそうだったM氏も元気なようで、今現在の体調は、3人ともいい感じである。
温かい飲み物や食べ物はありがたい




身支度をして、2日目の登山開始。

今日は、ホロンボ・キャンプサイト(3,740m)が目的地だ。
普通に行けば、6,7時間ほどの行程らしい。


ボチボチと歩き始めて間もなく気づく・・・
風景が昨日とはちょっと違う、、、
森というより林に変わった。
さらに、その林もまばらになってきた、、、
そして、林を抜けた先に、、、



気持ちいい天気に雪山

 キリマンジャロの雄姿が!

今までは、山頂はおろか外界も見えず足元ばかり見ていたが、今は違う。
視界がパァーッと開けている。

早速、絶景ポイントで小休止。大勢の登山客もワイワイ賑わっている。

ほぼ快晴。気温もちょうどいい。
そして何より、この開放感が最高に気持ちいい。
下界からは、まったく見られなかったキリマンジャロのその姿に、しばし感動。
デジカメ動画や写真を撮りまくり、話も弾む、、、そして気づく、、、

あれ?
しかしだ、、、

「どっちの山に登るんだ?!」

予備知識のあまりない我々には知る由もなかった。

手前の山にしろ奥のにしろ、かなり険しくないか?
奥の山なんて、かなり雪が積もってるじゃないか!
こんな軽装備で登れるのか???


しかし、視界が開け、頂が見えると気分が全然違う。
かなり険しそうな山頂の風景に、ちょっと不安になりながらも、楽しく歩きはじめる。



雪を見たので、
「やーまは しろーがねー♪」だの、
あまりに空が青いし、下界に広がる雲海も見えたので、
森田公一が歌う、某線香会社のCMの
「青雲 それはー君が見た光ー♪」だのを思わずハモル。

およそ流行とはかけ離れた歌だが、今日もハイキングとかピクニック気分で、O氏と私はテンションが高い。
M氏は、いまいち乗り切れないのか、後方のゆっくりと進むポーター軍団と歩きをともにしている。

O氏と私は、重い荷物を背負った(というか、担ぎ上げている)ポーターたちとは完全にペースが違うので、昨日と同じように先々進む。


整備された道だが、長い区間で傾斜がきつめところが増えだした。
徐々に周囲の木々が低くなってきた。

かつてこの辺りは大規模な山火事があったと聞く。
その名残か、焼け跡が見える。
木々が低いのもそのせいか?

広大な斜面だ


怪しい天気 気温上昇と標高が高くなってきたためか、知らぬ間に雲が出始めた。

というよりむしろ、我々が雲の中へと入ってきたのか?


霧も出始め、視界と天気が悪くなってきた。

山の天気は変わりやすいと言われるが、そのとおりだ。
さっきまでは、晴天で下界の雲海も見ることができたのに・・・ブツブツ


雲や霧の動きが速い。

そのうち大雨が降り出してきた、、、
おいおい、この天気の変わりようはなんだ、勘弁してくれ!

用意していたカッパを着る。
さっきまでのテンションはどこかへ行った、、、
雨宿りがしたい・・・

かなり進むと、木の橋があったので雨をしのぐことにした。
といってもこの木の橋は隙間だらけなので、ボトボト雨が落ちてくる。
かといって、雨をしのげそうなところは他になさそうだ。

時間的にも昼時なので、渡されていた昼食(ゆで卵やパンなど)を雨宿りのついでに摂ることにした。

少し小降りになったので出発。
小雨の中ひたすら歩く。
うー、それにしても視界が悪い。


かなり歩くと、雨は収まりだした。

ホロンボ・キャンプサイト


とうとう、丘を越えて角を曲がると、ホロンボ・キャンプサイト(約3700m)が見えた。


雨に打たれはしたが、無事キャンプに到着。









O氏は、とっくに着いていた。
持っているお菓子を食べて、しばしお喋りする。



天候が回復しはじめたし、ポーター達が到着するまでかなり余裕があったので、一人でブラブラすることにした。

夕方に天気は回復

食堂と向こうに見える頂がマゥエンジハット。相当、険しそうだ。


食堂の床下には、ネコ車のような、一輪車のついた担架が無造作に置かれている。
高山病などで動けなくなった患者がこれで運ばれる。
しかし、でこぼこ道をこれで降りていくのだから、乗り心地は最悪だろう。

今回、これで運ばれていく人は見なかった。
担架withネコ車

さて、天候が回復してくると、再び絶景が眼下に広がる。
キャンプサイトの下の方まで行けそうに見えた。
誰もいなくて気持ちよさそうなので、降りることに。

気の済んだところまで行き、風景を眺めてしばし感慨に浸る。



ポーターたちが到着したようだ。私を呼ぶ声がするので、ロッジへ戻ることに。
体が割りと軽かったので、少し足早に上っていく。

ところが、この行為がどうも芳しくなかったようだ。

ロッジに戻ったときには少し頭が重くなっていた。
ボーッとするというか、頭が働かないというか。ひょっとして、早くも高山病に罹り始めたのか???


3780m ほぼ富士山と同じ そうだとしてもおかしくはない。このホロンボ・サイトは約3780mだから、富士山頂にいるのとほぼ同じだ。

(ちなみに、私は富士山には登ったことがない。いきなり5800mにチャレンジするとは無謀といわれても仕方ない


しかし、この高さでこんな調子だと、明後日早朝のアタックすら怪しい?という不安がよぎる。


頭の重みがとれないまま、夕食を摂り、ロッジへ戻る。

O氏は変わらず元気だが、M氏もあまり体調が良くないようだ。

私は、早目に寝ることにした。



夜中にトイレに起きる。
こんなに星があったのかというぐらい満天の星空。
相当空気がきれいなんだろう。
サザンクロスを探したが見つけられなかった。

そして頭の重みは変わらないまま。
体調が回復するのを祈る気持ちで床に就く。






3日目

キリマンジャロの「ンジャロ」はスワヒリ語で「輝く」の意味である。
そのとおり、ハットが朝日に照らされて光輝いていた。

ンジャロ

まだ太陽が当たらず影になっている山肌とのコントラストが目に眩しい。


下のほうでは雲海が見事に広がる。

雲海


朝食後、いつものように支度して出発。

太陽は完全に昇り、真っ青な空になった。天候に関しては申し分ない。


いただきが見える

頭は少し軽くなったような気がするが、絶好調とは言えない。
今日は、ペースをかなり落としてじっくり歩かなければヤバイ気がする。


O氏は相変わらず先々歩く。
彼のペースに付いていくことはできそうにないので、
私は、緑の上着に赤帽を被ったメインガイドのセビに合わせて、ゆっくり歩くことにした。


今日の風景はまた違う。
木らしい木がなく、サボテンとか草のような低木ばかり、そして大きな岩がゴロゴロしている。
初日、2日目、3日目とステージ自体が変化しているのだ。
勾配は緩いのが続く。


丘を越えるたび、めざすキボハットが、はっきりと見えてきた。
赤帽のセビが往く


頂上部の左側は積雪がすごい。アタックするのは、やっぱり右側の雪の少ない側からなんだろう。

右手にはマゥエンジハット。

頂上部は、尖った岩が連なっている。
相当険しそうだ。





頂上部は断崖

途中、小川が流れているところで休息。
雪解け水なのだろうか、かなり冷たい。

そして、またゆっくりと歩く。


雲に覆われだした 臨界点を越えたのだろう。

草木が完全になくなり、砂漠を思わせるような景色になってきた。
砂地に大きな岩がゴロゴロしている。


道の横には、登山者が石を積み上げてモニュメントを作ったり、文字を書いたりした址がある。

冴えない頭でやり過ごしながら、私はひたすら歩く。
歌ったり喋ったりする昨日までの余裕はもうない。



ポーターは、バッグなど背負わず頭に荷物を乗っけて、ゆっくりだがしっかりとした足取りで進む。





さっきまでは、かなり天気が良く、頂がくっきりと見えていたのに、急に速い雲が現れはじめた。

天気が悪い。そして寒い。

頂は完全に雲に隠れてしまった。
怪しすぎる天候


キボハットとマゥエンジハットの中間地点にあたる窪地、大きな岩がゴロゴロしているところで昼食を摂る。
しかし、風が強く寒さが酷くなってきた。
そして頭は相変わらず重いのが取れない。
バッグに入れていたシャツとカッパを全て着る。本当はもう少し着込みたかったが、ポーターが持っている袋のどれか奥深くに入っているのであきらめた。
休んでいると寒いし、かなり天候が荒れてくるかもしれないので早々に出発。


案の定、
雨・・・


間もなく、雨が降り出した。いただきは何処へ?

そして、

吹雪!

気がつくと吹雪いていた!

最悪の天候だ!
早朝の超快晴は一体何だったんだ?
天候に文句を言っても仕方ないのは山々だが、拷問のような天の仕打ちに物申したい気分だ・・・ブツブツ、プリプリ

顔を覆ったフードから、自分のゼェゼェする呼吸音が聞こえる。アタックするにはベースキャンプに着かないと始まらない話だが、このままこんな天気が続けばキャンプに着いてもアタックできないんじゃないか?
頂上は行けなくてもアタックだけはしたい。



夕方、やっとの思いでキボ・キャンプサイト(4,700m)に着く。
吹雪に遭ったが、なんとかベースキャンプにはたどり着いた。
だが、頭がさらに重くて働かない。呼吸もしにくい気がする。

しばらくここで休憩すれば、体が慣れて頭痛も回復していくのだろうか?



しばらくして、天候は回復してきた。ほんとに山の天気はコロコロと変わる。

天候回復 キボサイトからマゥエンジ峰が正面に マウェンジ山が真正面に見える。

雲で見難いが、最上部は絶壁のようなかなり角度が急な山だ。キボ峰よりは、標高が低いが登るとなると難しそうだ。

手前は、ポーター達のテントが並ぶ。
ポーターは、このベースキャンプに残り、登山客のアタックの帰りを待つのだ。
ガイドとサブガイドのみが、頂上アタックに同行する。

背中側にはキボ峰だが、こちらは相変わらず雲に覆われ、まったく見えない。


約7時間後の明日の早朝というか今日の深夜に、ここから頂上に向け出発するのである。


どんな道がつづくのかも分からない。
でも、いままでの比較的緩やかな道のりではない。
ここからが、登山靴と防寒服必須の本格的な登山が始まる。
アタックというだけあって、高低差1000mのかなりの傾斜を登り続けなければならないのだ。
しかも、5〜8時間以上かけて。
かなりの角度で見上げるが頂上はどこ?


外の景色をかろうじて味わい、ロッジに帰る。
頭はさらに重い。呼吸もしにくくなってきた。

早めの夕食を取るが、いままでのような食欲が出ない。
しかし、今後に備え、無理やり胃袋に詰め込む。
水分も補給せねばと、たっぷり飲む。

アタックまではまだ6時間ほどある。
事前に仕入れた情報だが、この時間の使い方が非常に重要らしい。

ここで仮眠してしまうと、かなりの率で登頂に失敗するらしいのだ。

しかし、体調は悪化してきた。脈も速くなった。
いろんな思いが頭をぐるぐる回る。

「できることなら、いますぐにでもアタックしたい。今ならまだ動ける。そして、すぐ下山したい。
このまま時間が経てば、ますます悪くなっていく予感がする。
これが高山病なのか?」

ただひたすら起きて待つのが、とても苦しい。時間が経つのが遅すぎる。


眠りたいのだが、眠ってはいけないとなったら、
どうやって過ごそう・・・
とりあえず、ベッドで横になることにした。



第2章終わり



第3章 〜地獄 そして 帰還