佛頭山極楽寺：天得如来縁起

天　得　堂

　　　■ 天得如来縁起

　今から七百年余り前、佐田の吉備の里という所に十河図書行光そごうずしょゆきみつという人が故あって隠れ住んでおりました。「行光旧跡」

それは後二條天皇の徳治年間(西暦一三〇六年)六月九日の事、いつもの様に山へ分け入り、狩をしておりました。

不思議にその日は一つの獲物にも出会う事無く、夕刻になりやっと金剛山の朝原寺あさはらでらの阿辺りで鹿を見つけて後を追いましたが、姿を見失ってしまいました。「朝原寺遺跡」

石に腰掛け休んでおりますと深い霧が一面を覆いつくし、そこに忽然と一人の僧が現れました。

行光は、僧に只者でない感じを受け、年来の悩みを相談すると、僧は、生き物の命の大切さ・仏の教えの尊さ・修行の必要性を懇切に教示され、如来の姿を描いた一軸を与え、たちまち紫雲に乗り西の方へ飛び去ってしまわれました。この不思議な霊験に行光が感激して拝んでおりますと後方に、石に当たり大きな音を鳴らした物があり、見れば鉦(金属の打楽器)が落ちておりました。
これが当寺に残る「如来御軸」と「岩鉦いわがね」であり「岩鉦」、その石を「日の石」と云う様になったと謂うことです。

行光は、いよいよ不思議に思い、自らの髪を切り、その後永らく自宅でこの霊仏をお祭りしておりました。
如来様の御利益は霊妙で、種々の厄病を救って頂いた方や信心の徳により福徳を与えられた人は実に多く、参詣する人が絶えませんでした。そのため、この如来様を「天得如来さま」・厄除け如来さまとも申し上げております。

行光は晩年に夢告を受け、その死後、三月十五日(旧暦)に如来様を当寺へ奉安されました。

これを記念して、毎年当山では、四月十五日に「天得会式」を執り行い

如来様の徳を讃えると共に、有縁の方の厄除け・福徳を祈念しております。

佛頭山吐田極楽寺

出典：『天得如来縁起（吐田極楽寺）』