来待釉鉢

径 26.5〜25.0cm 高さ 7.5cm

焼き物を焼くにあたって、作り手は焼きあがりの目標を持っている。 その目標にむかって、土を選び、釉薬を調合し、焼成計画を立てる。 当初の目標から逸れ、予測違いの結果に終れば、ふつうは失敗という。 だが、予想もしないよい結果が、偶然窯から生まれることがあって、これを窯変と称する。
何のことはない。窯変とは、よい失敗なのである。 さすれば、結果のよしあしの判断、つまりは窯変か失敗かの判断は、ひとえに見る目にかかっているといえよう。
来待釉の作品は、あえて焼きあがりの目標を放棄した。 目標を棄てて、来待石粉のみを釉薬とし、さまざまな方法でそれを焼成すること、すなわち、 成否を排して、良否のみを見ることに専念しょうとする仕事である。
鉄釉の原料に使われる来待石粉は、単体でも熔けて釉薬となる。 そして焼き方によって、酸化鉄で発色する多様な色あいを呈する。 何らかの目標に合わせて、他の原料と調合し、結果を限定してしまうには惜しい素材である。



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