2015年明日香文明会長のお言葉

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 1月  今年は 昨年にもまして明るく楽しく仲良く何事にも上下関係がなく自由に考え自由に行動できる明日香古京走る会をつくりあげましょう
 2月  競技形式の市民マラソンでは3万人に一人の割合で心肺停止の事故が起きている。事故の起きないフルマラソン大会はできないものだろうか。 東京夢舞いMは、こんな想いを実現させたものだ。毎年体育の日に定員1500名で開催され、昨年度は日比谷公園をスタート、東京の名所旧蹟を楽しみながら、制限時間8時間で、42.195KMを走る。しかしこの大会は競争目的でないので計時はないし順位表彰もない。人通りの多い東京の街中を走るので、5つのルールを決めている。

①歩道を走り、車道に出ない。

②信号を厳守する。赤信号では停止し、横断しない。

③狭い道では一列で走り、追い抜かない。

④時間をかけてゆっくり走る。

⑤皆に感謝。ボランティアにも声をかけて感謝する。

 NPO法人の実行委員会も市民ランナーから構成された、いわば手造りの大会だ。参加料は3000円、営利を目的としないので、余剰金から45万円を日本介助犬協会に寄付している。このマラソン大会は、2013年度のランナーズ賞を獲得した。

 3月  2020年の東京五輪で、最大の心配事はテロ事件の発生だ。ミュンヘン五輪(1972)で、パレスチナ系過激犯8名が選手村に侵入、ユダヤ系米国選手とコーチの2名を射殺、9名を人質にとり、逮捕中の同志234の釈放を要求。ヘリで空軍基地に着陸、2時間に亘る銃撃明で警察官1名、人質9名全員、過激犯5名が死亡、逃亡3逮捕する事件があった。 東京五輪で、競技中のテロ対策としては、街中で長距離を走るマラソンが一番困難となる。先日の東京マラソンでは、東京五輪を見据えたテロ対策が行われた。主な対策としては、次のような事柄だ。

①スタート地点、マンホール、沿道の事前チェック

②警備人員の増大。主催者側警備員6000人、警視庁側 4500人の配備

③ランニングポリス(走る警察官)頭に小型カメラ、警視庁で画像監視。 8人編成の8チームが時間差スタート

④ランナーの手荷物検査の強化、金属探知機50台導入

⑤ペットボトル、ビン、カン、水筒、折り畳み傘等の荷物のおち込み禁止。ゼリーを含む液体物は200ml以西の未開封市販物で合計400ml以内に制限

⑥沿道監視カメラを既設7台から21台に増設どこ迄徹底しても甘いテロ対策でしかないのが現実だ。

 4月  大相撲春場所は毎年大阪府立体育館で行われるが、高取町で生まれ、明日香小で柔道を習った近大出の幕内徳勝龍(青木誠)を知っているので応援をかねて五日日の観戦に出かけた。 徳勝龍とは、これまで何度か会っているが、大きな体からは想像できない程、優しく礼儀正しい男という印象。 その心優しさが災いして、立ち上がりで相手のペースに合わせてしまうので、なかなか勝ち星が上がらない面があった。しかし幕内の対戦は相手も激しく厳しいのが多いので、努力を重ねたのか、最近になってやっと自分のペースで戦えるようになり始めた。それで、やっと勝ち越せるようになってきた。毎場所忘れずに番付表を送ってくれる。所属する木瀬部屋には常幸龍や臥牙丸がいるが、もはや木瀬部屋の出世頭だ。この日もうまく動いて勝った。十五日間では八勝七敗で勝ち越したので、来場所は前頭三枚目位まで躍進して横綱、大関との対戦が見られそうだ。五日日の土俵は大荒れで大関が全員負け、人気の遠藤も勝ちながら前十字靭帯断裂の大怪我、勝名乗りを受けに上俵に上がれなかった。とても体が柔らかく、怪我のない力士だった筈なのに、無理な体勢で技をかけた為に、土俵人生を終らせかねない大怪我。可哀そうで心が痛んだ一目だった。
 5月  高齢化社会が次第に深まりつつあるせいか、最近転んで怪我をしたという話をよく聞く。家の中で隣の部屋に行こうとして、敷居でつまずくどころか、畳のヘリにつまずいて転んでしまう例もある。これは「もも」が上がらず、畳の上をこするようにしてしか歩くことができないことが原因とされる。運動により脚力を維持しない高齢者では、脚筋力がそれほどに低下してしまうのである、とすれば、「もも」が上げられるように筋力をつけることは基本的に大切なこととなる。陸上競技で、特に短距離では、筋力の強さが必要とされ、またスプリンターにとって何よりも重要なスピードをつけるために「ももあげ」の練習が徹底して行われる。 しかしスピードを全く問題にしない、ジョギングレベルでは、まず「ももあげ」の観念は入ってこない。中高年になって、脚筋力が低下した場合、例えジョギングであっても、脚を前方に運ぶだけでは充分ではない、できるだけ地面から足を上に離す気持ちで走るように心掛けたいものだ。ジョギングに使う道路も、立派に舗装されているようでも、よく見れば、結構補修工事跡や[凹凸が見られる。ジョギング中に爪先が引っ掛かったりしないように心掛けることが大切だ。
 6月  今年の10月からスポーツ庁が文部科学省の外局として設置され、スポーツ振興などの施策を総合的に推進することになった。 2020年の 、東京五輪を見据えたものであることは明白だが、五輪が文科省、パラリンピックが厚労省、競技場施設が国交省、経産省と担当が分かれているのを一体化するのが狙いだ。120名の規模でスタートし、初代長官は民間人から抜擢するが、飽く迄五輪終了までの初代だけで、五輪という目標を達成した後は高級官僚の天下り先や利権に利用されることも明白だ。こんな批判を避けるための官僚の思考は、五輪後にある。それは、高齢化社会対策だ。 高齢者を健康に導くためには運動が必須、医療費の増大を防ぐには。運動が効果的ということだ。 だから「スポーツは国民の体力維持・向上を図るとともに、人々に豊かな生活をもたらし、健全な青少年の育成や高齢化社会における社会保障費削減、障害者の尊厳ある暮らしにつながる」ときれいすぎる言葉が並んでいる。スポーツ振興で一番大切なことは、学校、企業、一般社会が勝負を目的としないで、誰もが「明るく、楽しく、仲良く」スポーツに親しむことのできる環境を与えてやることだ。当会がその一つの小さな模範になることを望みたい。
 7月  2020年東京五輪・パラのメイン会場となる国立競技場の整備事業が大荒れだ。コンパクト大会が売り物であった筈なのに国際コンペで採用したイラク出身女性建築家ザハ・ハディドのデザインにこだわるものだから建設費が2520億円もかかる。試算段階で3000億も掛かることが分かったから、スタンドを縮小して8万人収容にし、仮設スタンドを1万5千に拡大し、屋根を開閉式にするのを五輪後に先送りして経費節減してもこんな莫大な整備費になる。 北京五輪の530億円、ロンドン五輪の950億円と比べても経費が掛かりすぎる。経費が増える最大の原因は流線型屋根を造る鋼鉄製の2本の「キールアーチ(keelarch)」でなんと370Mもある。近くに野球場もあり狭い地域の神宮外苑にこんな巨大なものを造ると、外苑の景観を壊し、遊歩道にせり出し道路を占拠したりするからふさわしくない感じがする。こんな異様な巨大さなら、別の郊外地に新建設したほうがよいのではないか。また現地を良く知らない外国建築家に頼らず、現地をよく知る国内建築家に依頼すべだった。 ともかくスタンドは大成建設、屋根部分は竹中工務店が施工を担当するが、竹中工務店も、技術的、費用的に大困りの様子だ。最終的には3000億近く掛かるのではないか。
 8月  競技スポーツは、特殊な能力を持つ者が行うもので、一般人には「観るスポーツ」に過ぎない。現代人は便利で快適な生活を追い求め、運動不足になっているため、糖尿病、高血圧、心臓病等の成人病が多い。実際に周囲の人達を見渡しても結構薬を持ち歩いている。そこで生涯スポーツの必要性が強調されている。これは「やるスポーツ」。ランニングは個人でも気軽にできるし、高齢になっても自分びペースで楽しめ、運動量もたっぷりだから、生涯スポーツとして最高の部類に入るだろう。 ところで生涯スポーツにより得られるものとは何だろうか。

①強い体と心がつくられる。

②ルールの遵守からフェアプレーの精神が養われる。

③自分の住む地域のよさを認識でき、素晴らしい人との出会いがある。

④人生の楽しさ、厳しさ、努力の素晴らしさが分かる。

⑤ 目標を持ち努力すること、我慢や耐えることを学ぶ。

⑥若さを維持でき、「美しい立ち振る舞い」が身につく。

 生涯スポーツは、その人がやって楽しいことが大切であり楽しいからこそいつでも、どこでも、いつ迄もスポーツに親しむことができことになる。当会も楽しくゆきましょう。

 9月  8月中旬迄は例年にない猛暑、連日大汗をかきながら休み無く仕事をすると旅に出てゆっくりしたくなる。

8月24日からの4日間、盛岡、宮古釜石、遠野、花巻を廻ってきた。盛岡郊外に“繋(つなぎ)温泉”があり、岩手山を背景に御所湖が日前に拡がっている。朝から寒さを感じながらジョギング、湖に沿う遊歩道には人影がなく貸切ジョグと相成った。宮古では景勝浄土ヶ浜の高台にあるホテルヘ。夜支配人が語り部となって大震災当時の状況を話してくれた。停電の続く中、自家発電で灯りのあるのはこのホテルだけだったのでで瓦礫一杯の道路を通り、このホテルに避難者が溢れた。震災の翌、翌々日は土、日曜日で結婚式が予定されていたので、事前に大量の食材を仕入れていたお蔭で、避難者に食べさせることができた。天皇、皇后もこのホテルで二日間にわたり慰問をされたこと、吉永小百合さんが励ましに来てくれたこと等々。宮古から釜石間は被害のひどかった地域、山田町、町長が津波で流された大槌町を車で視察。海岸付近の到る所で造成工事がされているが、まだ更地の状態、海岸力ら離れると手付かずの状況で草ホウボウで放置されている。花巻の志戸平温泉から平泉へ。中尊寺の金色堂を訪れるのは4度目。だがその度に新鮮な感動が湧いてくる。

 10月  筋力を強くするためにジム通いを続けていると負荷が大きい程、筋肉がつくが、その筋肉はカチカチに固い筋肉になる。固い筋肉は動きの範囲が狭く、その影響で関節も可動域が狭くなる。こうなると運動するだけでも故障につながる。固い可動域の狭い筋肉と関節では、とっさの動きにも大小の変化のある動きに対応できないからだ。
かなり過去の話になるが、ジムトレの前後に時間を惜しむ余りストレッチを長期間怠っていたが、山道を走って下っていた際に膝がブチッときて痛みがズキッと走った。次の日からは下肢ふくらはぎ周囲がパンパンに腫れあがった。二年間程走ると痛みが消えなかった。筋トレが固く可動域の狭い筋肉と関節を造ってしまったからだった。一度膝関節付近を痛めると簡単には全治しない。相撲取りが一旦膝を痛めるとずっとサポーターが取れないのも同じことだ。こんな故障は他人に分かることでないから、自分自身だけの苦悩の日々となる。 故障のない筋肉と関節のためには、柔らかい可動域の広い筋肉と関節にすること。そのためには、ストレッチをしっかり時間をかけて行うことだ。筋トレにストレッチは必須だ。ランニングの前後にストレッチをじっくり行えば普通レベルのランニングならまず故障することがない。ストレッチが故障を防ぐ最も効果ある手段であることを、よく理解して戴きたい。
 11月  女子マラソンの草分け的存在のコーマン美智子さんが、米ワシントン州で9月19日に肺ガンの為に80歳で亡くなった。1974〈昭和49〉、77(S52)にボストンM優勝。76(S51)77(S52)にNYシティMで優勝したときは、こんな小柄でひ弱に見える米国籍日系人がマラソンで優勝したことに皆が驚いたものだった。日本人女性がマラソンに本格的に取り組んだのも彼女の凄い実績に大きな刺激を受けたからだった。有森裕子や、高橋尚子、野口みずき等の世界的なランナーが次々と生まれたのも、彼女が「しっかりやれば日本人でも勝てる」ことを真っ先に証明してくれたからだった。それまでは女性にはマラソンは無理という考えも強くあった。身長153cm、体重44km、33歳で走り始めたのも、やせすきを治す為だった。マラソンの自己ベスト記録は76のNYシティMで出した2:39:11。でも根性だけは凄いものだった。足に水ぶくれが出来ようが、横腹が痛くなろうがとにかく頑張った。「陣痛の痛みにくらべたら、マラソンで受ける痛みはたいしたことではない」ということだが、マラソンの女子ランナーの粘り強さは、案外こんなところにあるのかも知れない。現役当時から何度も来日、市民ランナーを励ましてきた。女子Mは、ロス五輪(1984)に正式種目になり、国内でも東京女子(1979)、大阪女子M〈1982〉が開かれるようになった。
 12月   第六回奈良マラソンが1213()に開催される。寒いし日暮れの早い時期なので、好天に恵まれることを願うばかりだ。当会からも多くの方がランナー、ボランティア、応援に参加されることになっている。
ところで、先月桜井市の児童擁護施設「飛鳥学院」から、児童虐待防止のシンボルリボンである「オレンジリボン」をランナー、ボランティア、応援の方々に当日是非付けてほしいとの申し入れがあった。拉致事件の「ブルーリボン」はよく知られているが「オレンジリボン」は一般への認知度が低い。児童虐待防止法が制定されたのが2000年10月、無邪気で可愛い児童に虐待をする様子は想像したくもないが、虐千される児童は一向に減少しない。今も全国で毎週一人の割合で暴力等の虐待を受けて、児童が死亡している。数目前のTV報道でも、幼児をゆさぷって脳に障害を残した親が逮捕されていたが、こんな報道に接すると怒りと哀しみを感じてならない。「飛鳥学院」は、保護者のない児童、虐待されている児童、養護を必要とする児童を入所させている福祉施設である。「オレンジリボン」運動は、児童虐待防止月間である通常11月に行われているが、奈良マラソンは人目に付きやすいイベントで、効果が あるだろうから、是非とも協力してあげて戴きたい。