F.W.N.
訳者解説 マンソンジュ
憤怒と涙と糞尿にまみれた遺稿。このニーチェの新資料は、バーゼル、イエナ、ナウムブルク、そしての死の地ワイマールと、精神錯乱後に転々とした療養地を丹念に調査することによって発見された。文字どおり、肥壷(こえつぼ)のすみをつついて行われた糞にまみれた作業であった。
くそ、いや、さて、晩年のニーチェは遺稿に明らかになっているように、自身の思想の最後の隠喩として、屁や糞を好んだようである。何故に?という疑問は当然のことである。しかしそれも、反時代的精神の化身であった彼のシムボル、たとえば「道化」の行き着く処を考察すれば、あながち狂気の所産とは言えないだろう。私にはむしろ、ニーチェ思想の極北のシムボルとしての「糞尿」は、彼の存在が臭うがごとくふさわしいとさえ思えるのである。
head
Copyright(c)1996.09.20,TK Institute of Anthropology,All rights reserved