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田村隆一詩集『四千の日と夜』

Nu

窓のない部屋があるように
心の世界には部屋のない窓がある
    蜜蜂の翅音
    ひき裂かれる物と心の皮膚
    ある夏の日の雨の光り
    そして死せる物のなかに
あなたは黙って立ちどまる
まだはっきりと物が生れないまえに
行方不明になったあなたの心が
窓のなかで叫んだとしても
    ぼくの耳は彼女の声を聴かない
    ぼくの眼は彼女の声を聴く

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