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田村隆一詩集『四千の日と夜』

叫び

黒いものが見える
それがあなたに見えないなら そして
もし世界が小量の毒でしかなかったなら
雨の日に黒いものはひとりで濡れる
時の滅びるときに
死は死の意味にみちてひとつの肉
それはあなたのために輝くでしょう

黒いものが見える
われわれに見えて
あなたに見えない時のなかで
あなたに見えて
われわれに見えない時のなかで
滅びるものは滅び 星は土に
時は場所に
あなたは彼女の叫びを聴くでしょう

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