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田村隆一詩集『新年の手紙』

眼の称讃 敬愛をこめて滝口修造氏に

生きている線だけを見てきた
息たえんとするもの
死に行くものの線だけを見てきた
あなたの眼が
物に憑かれたとき
物はあなたの眼をのぞきこむ
かぎりなき優しさをこめて

生きている線は
いつかは死ぬだろう 死ななければ
あなたの眼に見られた物の
復活はない
物によってのぞきこまれたあなたの眼の
蘇生はない

ぼくはいま
かぎりなきき delicate
逆説のなかにある
あなたの眼はあなた個人のものではない
光りが走り
線と色彩がほとばしる
あなたの その動く手が 手そのものが
あなたの眼だ

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