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田村隆一詩集『新年の手紙』
「北」についてのノート
絵画と音楽に国境なし、というのは、真赤な嘘なり。ぼくが、北米の田舎町で経験した「自由」、および「自由」の回路となりうるもの、ただ一つ、それは言語なり。北米、アイオワ州にて。一九六八年一月
世界を、さらにもう一度、凍結せしめねばならぬ。「北」の詩には、雪、氷、凍、寒、囚人、その他、「北」を連想せしめる如き言葉(修辞)は厳禁。
氷河期 燃える言葉、エロティックなリズムで書くこと(小動物、森の動物が歩くリズムで)。深刻、悲愴、孤立、断絶、極北、極点、原点、の如き用語、フィーリング、使用すべからず。
口語体(東京語及びアクセント)をフルに活用。
直腸的経験。(こと詩に関しては、開かれていること)
地理学的歴史学的資料の蒐集。(そして、哲学的意識の排除)
時差の研究 北から南へ 南から北へ。
K の Operation put into Operation. undergo an Operation.
燃える言葉によって、寒冷を、寒冷そのものを、読者(すなわち「私」及び「我々」)に経験せしめれば、まずまずの成功なり。
人体解剖図 有田ドラッグ 蝋細工。
デカルトの、オランダからの帰途についての研究。
敗戦時におけるツキジデス像をこの眼で見ること。
熱がなければ、腐敗しないということ 腐敗性物質。
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