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田村隆一詩集『新年の手紙』
手紙
Y君から手紙がきた。
ケネディの切手が貼ってある。
アメリカ中西部の大学町。
初雪があったという。
中華料理店『バンブー・イン』は店を閉じた。
テネシー・ウィリアムズが学生のとき、
ビールばかり飲んでいた酒場もなくなって、
『ドナリー』だけは一九三四年以来健在だそうだ。
田村さんが住んでいたアパートのあたりまで散歩しました、とある。
ぼくが住んでいたアパート。
それはもうぼくの瞼のなかにしかない。
いくら雪のふる夜道を歩いていっても、
Y君にはたどりつけるはずがないのだ。
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