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田村隆一詩集『新年の手紙』
絵はがき
ええ これがセントラル・パーク
マンハッタン島の公園ですよ
リスがいるでしょう でも
すごい寒さでね
こいつはタイムズ・スクエアです
老人がぼんやり坐っている
そう 人間があまりいませんね
図書館もガラ空きだったし エロ本屋にも客はいない
午後七時だというのに人ッ子ひとり歩かないんだから
あの有名な五番街をですよ
エレベーター 汽車の窓 バスのフロント・ガラスには
ピストルの弾痕だらけ
ホノルルから東京に絵はがきを出した
ダイヤモンド・ヘッドの上に
月がただ一つ
ぼくは一足さきに人いきれのする集団精神のなかに帰ってきてしまったが
絵はがきはまだ飛んでいるのだ
日付変更線のあたり
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