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田村隆一詩集・補遺
稲妻に関するノート
夏から秋へ
水平状に稲妻が走ることがある
あれはいったい
どういう放電現象なのか
ぼくの窓から地平線は消えてしまったのだから
火山 砂漠 都市の大火災 原子雲さえ
失ってしまったのだから
雷雲が発生するはずがない
樹枝状の稲妻
垂直状の稲妻
放光状の稲妻
それはみんなぼくの少年時代から青年時代にかけて
ぼくの記憶をつらぬき焼きつくした美しいデザインにすぎない
いま 閉ざされた闇のなかを
水平状に走る稲妻
そのイデオロギーの意味を
ばくは知りたい
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