下北山村の合併問題と関連リンク

合併の動向

町村合併の動向

1890年(明治24)12月

三重県への編入請願

 1890年(明治23)、公布された都制・府県制によって、下北山村は従来のまま宇智吉野郡役所の管轄下におかれた(1894年吉野郡独立)。これにからんで1891年(明治24)12月、第二回帝国議会(1890年帝国議会開設)に対し、請願するところがあった。487名が署名捺印した請願書は、その理由を詳細に述べ、当時の村のようすをよくあらわしている。わかりやすく要約して、次にかかげておこう。

一、地勢人情風俗 

 我が北山郷は奈良県の南隅に、はなれて存在する一小村です.北は釈迦ケ嶽・大台ケ原山の二大山を限り、南は一帯の山路を経て、三重県南牟婁郡に接しています.大和全国の地勢から論ずると、北から南へ向って、土地は自然に高くなって、釈迦ケ嶽が最高となります。それより南は低くなっていき、人情風俗などは紀伊とおなじで、北山郷はもともと、三重県に属するのが、当然であったといえます。

二、郡制施行上について

                                       

 吉野郡は大和の南部半国を領有するといっても、みな高い山の避地で、戸数・人口なども甚だ少なく、わずかに県下の六分の一にすぎません。いま、もし、郡制が施行されて、独立的立場をとるとも、経費はとうていまかないきれません。そのうえ、我が北山郷は、奈良県下の南端にあって、人情・風俗などが異なって、一般に奈良県の北海道ともいわれるところです。したがって、県官・郡吏などの巡回もきわめて、まれなありさまです。このため、一郷の不利益も少なくありません。この際、速かに三重県の管轄に属することを希望するのもやむを得ないのです。

三、三重県へ属するときは管轄庁へ便利                            

 三重県に属する方が、管轄庁へいくのに大いに便利なのです。そもそも、我が奈良県庁へいく距離ほ、所轄の郡役所を経て、およそ三十六里余あって、そのうち二十余里は、そびえたった岩の上や谷を越える山道で、朝も夕も人力車をみることはできません。わずかに人がとおれる道があるだけです。ひとたび県庁へいくときは、往復十余日を費すことになります。この費用がまた大へんです。ところが、いま、三重県庁へ行くときは距離にしてみれは、かわりがないが、その行程には高い山もなく、人力車の便もあり、汽船を利用することもでき、往復わずかに五日で用事もすみます。それでも、県庁への遠近・便否は、がまんできるとしても、直接の利害は郡役所へはおよそ二十五里の速さにあります。これは鹿道・熊道の有様で、郡庁へ行くには、往復一週間を要します。このため旅費が大へんです。

 いま、下北山村役場だけで、最近の旅費・帳簿運搬費をあげると、つぎのようになります。

明治二十二年度                                                                     旅費     八拾弐円参拾七銭八厘                                                        帳簿運搬費 弐拾七円 六銭六厘

 そのほか、往復書に関する郵税などは多額のためおどろくばかりです。いま、三重県に属するとき、一ばん近い郡役所、すなわち南牟婁郡役所の管轄に属するときは七里で、高い山でさえぎられているのではなく、五郷村の桃崎までの三里のほかは平坦な車道で、もし、間道を利用するときは、道は少し困難であっても五里余です、その旅費についても、くらべものになりません。それ故に三重県へ管轄がえを請願するのもやむを得ません。

四、三重県へ属するときほ、我が北山郷の産物を増すことができ、そのほか、日用の諸物品を安く購入することができる利益があります。北山郷の産物は、木材・板類・木炭などです。いま三重県へ編入されたときほ、北山郷の中央から五郷村桃崎までの山みち三里を、たとえ、地方税補助道路に編入されても、地元の協議寄付で、車道をつくり連絡することができます。それは北山郷の物産が倍増することです。そのうえ、北山郷三千余人は、日常の主食である米穀そのほかを南紀から求めているとき、道が開けることによって、安く購入できることも明らかです、例えば、北山郷の人たちが、南紀から求めている米穀は一日に米八石です。この駄賃が一升につき、七厘から一銭であるとき、平均一日七円五十銭となり、その高いことにおどろくばかりです。いま、私たちの希望が実現したら駄賃を三分の一に減少させることができます。この故にも三重県へ編入されることを願うのはやむを得ません。

 いまとちがって交通事情のきわめて悪かったころのことであるから、むしろ当然の要望であったといえよう。しかし、議会は請願書の提出された一二月の二五日に解散になっているので、果たして議会でとりあげられたかどうかも疑わしい。

 おそらく奈良県当局の指導があったのであろう。その後、三重県への合併運動ほおこっていない。しかし、一九〇〇年(明治三三)前後、上市郡役所で行われる町村長会に、下北山村長が欠席を重ね、その都度、郡役所から注意を受けている事実がある。このことは吉野郡役所の管轄下にあることの不満と、三重県へ合併希望がいぜんとして強かったことを示すものであろう(なお郡制は一九二六年から廃止される)。(下北山村史)

1953年(昭和28年) 市町村合併促進法施行 9868の市町村が3年後には3975に減少
1956年(昭和31年) 新市町村建設促進法
1965年(昭和40年) 市町村の合併の特例に関する法律(以下合併特例法)
1975年(昭和50年)

合併特例法延長

1985年(昭和60年) 合併特例法延長
1994年(平成6年 )11月22日 第24次地方制度調査会市町村の自主的な合併の推進に関する答申
1995年(平成7年)4月1日

市町村の合併の特例に関する法律の一部改正法施行                                               内容:10年間の延長 、住民発議制度の創設等

1997年(平成9年)7月 8日 地方分権推進委員会第2次勧告
1998年(平成10年)4月24日 第25次地方制度調査会答申
5月29日 「地方分権推進計画」の閣議決定
8月 5日 「市町村合併研究会」設置
12月18日 合併特例法の一部改正施行 内容:人口要件の緩和(4万人以上)
1999年(平成11年)7月 8日  地方分権一括法の可決成立(合併特例法の改正含む)
7月12日 市町村合併推進本部の設置(自治省)
8月 6日 「市町村の合併の推進についての指針」策定【平成11年指針】
2000年(平成12年) 合併特例法改正
6月 奈良県市町村行政体制整備検討懇話会設置
2000年(平成12年)6月議会一般質問 

野崎議員

                                               

議員 国は、町村合併について県に具体的な合併案を求めるなど、合併を推進している。合併に閣して村長は どのように考えているのか。

村長 

住民意識や社会的要請を注視しながらメリット、デメリットを検討しながら対応をしていく。広域連合内では市町村合併については極めて消極的である。(議会便り第3号)
7月24日 森総理から自治大臣、地方分権推進委員会へ市町村合併について指示。
9月 全国リレーシンポジウムin奈良
12月 奈良県市町村合併推進要綱
12月 行政改革大綱の閣議決定で「与党行財政改革推進協議会における」自治体数1000を目標とするという数値目標
2000年(平成12年)12月議会一般質問

北議員

議員 県の合併推進要項の素案が発表され、下北山村は吉野町・東吉野村・川上村・上北山村との合併案となっており、将来避けては通れない問題であると考える。今後この問題を考える上で、熊野市、北山村等を含めた合併も考えるべきだと思う。村長の考えを伺いたい。

村長 十二月六日に全国町村長大会があり、その決議・スローガンは、議長会と同じように「 強制するな市町村合併」と掲げた。現在のところ県では、市町村行政懇話会を作って町村の代表・或いは民間の代表等に委嘱をして懇話会を行っているが、その中で、特に本村のような遠隔地の村では、きめ細かな行政サービスが行き届かない恐れがあり、各市町村の自主的な判断をするべきであると意見を述べている。現在はそういう状況で今後はどうなるかわからない。

河村議員

議員 現在、国では町村合併が推進され、県も本村を含めた合併案(試案)を出し方向性を示している。最終的には上記のところへ収斂していくであろうと思われるが、村の基盤整備をどのように推進していくのかをお尋ねしたい。

村長  合併問題は避けて通れないとの事ですが、現在の状況は先に答えた通りです。二十一世紀に向かっての村の基盤整備については、林業、観光、道路とか、過疎の問題とかの諸問題を、今までの政策をそのまま進めていきたいと思う。

議員 いろいろな予想される問題をきっちりと抑えた上で行政を進めていただきたい。(議会便り第4号)

議会便り第4号 各議員の新春の抱負に見る合併問題。

中谷議員 

 全国的な取り組みとして町村合併による行財政の合理化・改革の波に飲み込まれようとしています。しかし、これからの十年間、いや五年間が勝敗の分岐点です。奥吉野の下北山がいつまでも光輝く活気のある村となるには、一人一人が行政や社会全体が持っている様々な情報を待っているのではなく、自らがいち早く取り入れることの出来るシステムの構築やそれらを使いこなす人材育成を図ることが、二十一世紀へ大きく羽ばたく一歩となるように思えます。

野崎議員 

 採算性や効率性を論点とした都市住民の声を背景に、過疎地への公共投資が減少していく中で国が推進している町村合併に下北山村はどう対応していくのか、TTと称されるインターネットやデジタル放送などの情報技術の進展は村民に大きな影響をもたらすものと考えます。これら多くの課題に、前向きな発想で積極的に取り組んで下北山の活性化のお役に立てればと考えています。

河村議員 

 地方分権、行政改革の重要課題として三千を超える市町村を千近くにまとめるという国の方針を受けて、県は最近「吉野町・川上村・東吉野村・上北山村・下北山村」を一つの行政区域とする試案を出しました。恐らくこの方向に推移していくでしょう。このことが現実化すれば、村は一地区になってしまう恐れがあります。このことを想定して、今後、村と民間が協力して基盤整備をしていくことが不可欠でしょう。

栗本議員 

 国が地方分権、市町村合併促進を掲げ、少子高齢化が進むなか、住民皆様との交流を多く持ち、地域活性化に取り組み、住むことを誇りに思える、活気に満ち溢れた環境づくりの「村づくり」を目指して取り組んでいく決意でございます。

2001年(平成13年)1月 4日 市町村合併相談コーナー設置
2001年(平成13年)3月議会一般質問

野崎議員 

議員 国や県は合併を迫っているが、下北山村における合併のメリット・デメリットについてどう考えているのか。

村長 下北山村は地理的な問題から、村民にとっては合併がマイナスになるのではないかということで賛成していません。

議員 県で言えば島根、鳥取は奈良県の半分の人口しかなく、人口規模だけで合併を進めていく危険性をもっと訴えて行かなければならないと思う。

奥村議員 

議員 町村合併問題について、私は「村長の町村合併反対の考え」に賛同するが

さて合併に同意しない市町村への地方交付税等の大幅な削減が予想されるが、村長はどのように認識しているのか。そして合併しないのであれば、削減されるであろう財源補填にどのような補填策を持っているのか。

村長 巷では、地方交付税等の削減と言われているが、極端にそういうことはないと私は思っている。進めていく上で色々な噂が出るが、そうではなく地域的に合併をしても意味が無く地方交付税等の削減は出来ないであろうと思う。また、するべきではないと私は思っているし、確信をしている。将来の問題としては、事情が変わってくれば国・県に要望をしたいと思う。

議員 私は何らかの痛みを伴うと覚悟している。その痛みを少なくするためにも、今から本気になって自立促進を図らなければならないと考える。そのためには次の4点が重要だと考える。@ 村づくりセンターを中心とした観光事業の健全化A 村行政の効率化B きなりの郷構想の推進による村内外、誰にも親しまれる魅力ある下北山村の構築C 林業の再構築であります。なお、反対をしている他の市町村と連携し「地方交付税を人質に取ろうとした市町村合併策に断固とした反対活動を要望いたします。」 村長の強いリーダーシップを期待する。

村長 ごもっともだと思うので、今後そういったことも考えながら進めて行きたい。(議会便り第5号)

3月19日 「市町村の合併の推進についての要綱」を踏まえた今後の取組(指針)策定【平成13年指針】
3月27日  市町村合併支援本部設置の閣議決定(本部長:総務大臣)
3月30日 21世紀の市町村合併を考える国民協議会設立(設立発起人代表:樋口廣太郎アサヒビール(株)名誉会長)
5月 市町村合併啓発パンフレットの作成「みんなの将来のために市町村のあり方を考えてみよう」検討資料として市町村の組み合わせの基本的なパターンを発表  
5月16日 奈良県市町村合併支援本部設置
6月 5日 合併重点支援地域の指定についての意見照会(各市町村長あて)
6月14日 地方分権推進委員会最終報告
6月 小泉内閣発足 後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(骨太の方針)の閣議決定
2001年(平成13年)6月議会一般質問

河村議員  

議員 小泉首相も市町村合併に関心と熱意を持ってこれにあたると言われています。国も県も市町村合併を実行する姿勢で動いていると思います。村民も将来に対しての不安があるようです。村として、どういう形で合併になるのか、研究しておく必要があると考えるが、村長の見解を伺いたい。

村長 市町村合併について、国や県も市町村にいろいろと指示をしているのが現状。基本的な私の考えは下北山村民へのサービスの低下につながる場合には、賛成できないと思っている。南和広域の1市13町村は地理的に不便な地域であり、住民サービスが低下すると認識をしており、国の指針は、市町村の自主的・主体的な取り組があくまでも基本であるということで、地域住民の意見を尊重するということであり、住民へのサービスの低下につながることには積極的対応はしかねる。

議員 全国町村会においても理念や目的を欠いたままで押しすすめるということには反対をしている。国が一旦方針を出した以上、引き下がってくれないと思う。将来、合併するということも想定しながら、いろいろな局面について対応を研究していく必要があると思う。

村長 研究が必要ということですが、まだ国の考え方も安定していない。南和広域(一市十三町村)でもそういう会議はまだ開かれていない。現在、どの市町村に話しかけるかという様なことは考えられない。どこからかそういう話し掛けがあって、初めてどのように取り組むかを研究してはどうかと思う。あくまでも最後は住民の意向ということになる。行政を預かる責任者としては、サービスの低下は絶対避けたいと思う。

議員 市町村合併については、国・県の方針がそういうふうに流れると今までの例からいくと食い止めようがない。反対なら充分意見を検討しておく必要があると思う。(議会便り第6号)

8月 6日   「合併協議会運営の手引」発表
8月30日 奈良県「市町村合併支援プラン」を決定
10月14日 市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウム2001in奈良(社会福祉総合センター)葛城青年会議所現況報告及びパネルディスカッション
10月22日〜11月 合併重点支援地域の指定についての要望意見再照会(関係市町村長あて)
11月19日 第27次地方制度調査会(首相の諮問機関)第1回総会
2001年(平成13年)12月議会一般質問

河村議員  

議員 合併は基本的にはしないほうがいいと思う。心配なのは村の財源が確保できないということになれば、村長を含め議会としても当然責任を負う形になる。合併によるデメリットもよく研究した上で、村民に示し村民にも考えて頂くことが重要だと思う。村長はどのように考えているのか。

村長 私も基本的には賛成ではない。県の市町村課から全県に対して、合併重点支援地域指定を要望するか意思表示を求めてきたが、当村としては「要望しません」と文書で答えた。当村のような遠隔の村では、きめこまやかな行政サービスが行き届かない事が、多分にあるということは、皆さんも考えていると思う。現在、大淀町・下市町・吉野町の三町で重点支援地域にしてもらおうという話が出ている。大淀町にしても、よそに寄っていくのではなく、自分のところが中心になり、周囲に寄ってこいというような考え方だ。吉野三町から下北山・上北山も合併に対して「入ってくれないか」と呼びかけがあった時、その時初めて住民の意向も聞かないといけないと思う。

議員 時期がくれば、村民とも合併について話し合いをしていかなければならないと思う。(議会便り第8号)

12月21日 吉野郡3町4村が合併重点支援地域に指定される。

2002年(平成14年)3月議会一般質問

山本議員  

議員 議員研修で府県を越える合併について、地域の要望があれば実現可能との話を聞いた。地域特性や経済・交通面を考えると下北山は三重県・和歌山県の影響が大きい。不動トンネルも開通するので、合併以前の問題として広域行政の枠内に北山村を入れた方策ができないか。又、合併やむなしとなった時には、選択肢の1つとして考慮すべきだ。

村長 他府県の町村との合併については、現在も将来も考えていない。奈良県人として誇りを持って、合併しても、しなくても奈良県人として進んでいきたい。

議員 合併問題について、何が一番重要かといえば、それがそこに住む人達にとって本当に良い事なのかどうかに尽きると思う。村が合併支援の対象地域に不参加を表明したのであれば、その理由なり問題点を村民にもっとよく説明するべきだ。村長には村の舵取り役として正面から取組んでいただきたい。

村長 行政の長として、国や県と喧嘩するわけにはいかない。しかし、いつも言っているように、村民が一番大事で、下北山を原点としていこうということには変わりはない。国が強制的に合併しろとなった場合引き止めるだけの力はないが、今後充分に検討をしていきたいと思う。先ほど言ったようになるべくならば現状でいきたいという気持ちには変わりはない。

野崎議員 

議員 本年度も基金を取り崩して予算編成をしているが、基金の取り崩し額は合計でいくらになるのか。

村長 本年度は約二億八千万円で、例年は、年度末に大部分を戻せたが、厳しい状況でどれだけ戻せるかはっきりしていない。

総務課長 十三年度から交付税の算定が見直しされ、交付税が減額された。十四年度以降も減額が見込まれる。また起債の返済は、十四年度〜十九年度までは、毎年五億円以上で、今後、大きな事業をしない限り平成二十年以降は四億円ぐらいになるという予測になっている。予算の約二〇%が借金返済で、経常経費を削減するなど工夫が必要だ。

議員 基金を取り崩しながらの予算編成がいつまでできるのか。経費の削減だけで本当にやっていけるのか心配をしている。そこで町村合併についてだが、総務省には大きな「アメとムチ」を振るって合併を促進する動きがある。県の素案の吉野市構想に乗っていくのが住民にとっていいのか疑問だ。財政的に立ち行かなくなるのであれば特例措置があるうちに合併する方がいいのではという気もするが、合併問題の勉強会を立ち上げたらどうか。

村長 合併特例法は十七年三月で期限が切れる。私見だが、合併をするなら、少なくとも今年度中に方向を明らかにする必要がある。合併に対しては、かねてから慎重な姿勢で臨んできたが、闇雲に合併反対ではない。現在のままやっていけるのであれば、村民のために一番いいと信念を持っている。国や県が言っている合併の必要性も充分解っているが、地域的に下北山は遠すぎるということでこういう考えできた。村民の生活を守っていく上で、どの道を選ぶかという選択が行政も村民も難しい課題になるのではないか。全国のほとんどの市町村が交付税を受けており、国の財政状況から減額をしてくることは当然であろうが、交付税が無くなるということではない。減額の影響で厳しい時代がくるという程度しか私も解らない。将来に向かって間違いのない選択をするためにも、我々は充分に研究をして議論をする時期でもあると思う。議会、行政、地域住民を含め、勉強会のようなものを立ち上げる時期に来ているのではないか、議会の皆さんに提案の呼び掛けと理解をしていただきたい。

議員 交付税が減少されていく中で、下北山村が存続していけるのかどうか真剣に住民を交えて勉強していきたい。(議会便り第9号)

議会に町村合併に関する調査特別委員会設置

4月23日 議会 町村合併に関する調査特別委員会

6月議会一般質問

野崎議員 

議員 村長は、県の合併素案では、下北山は一番遠隔の地でありメリットがないということから、合併問題に積極的な発言をしなかったと理解をしている。先般の勉強会でも合併をした場合、合併しなかった場合の将来像がまったく見えなかった。村からは、合併しなかったらどうなるのか、取り残されたらどうなるのか等について説明がなく、村民は不安を持っている。今後どのように進めようとしているのか。

村長 合併特例法は平成十七年三月に期限切れになる。合併特例法の適用を受けるには、十四年度中に合併についての決断を迫られるが、今までは具体的にどうなるかという不確定な要素もあり、村民に理解を頂く手立てはしてこなかった。村の将来を左右する重要な問題であり、村民への情報提供、意見の集約等、村・議会と一体となり、互いに協調しながら、あるいは住民の協力を得ながら前向きな体制を作り出していかなければならないと思っている。        

議員 他の自治体では、合併協議会から脱退したり、不参加を表明したり等、枠組みができつつある。私たちの村も合併が難しい村にあたると思うが、ぐずぐずしていると近隣町村との合併すらできなくなる。奈良県としての動きは見えないが、下北山が取り残されることのないようにもっと積極的になんらかの動きを見せて頂きたい。あまりにも悠長ではないか。財政的な見通しはどのように考えているのか。

村長 地方交付税は少なくなるが無くなることはありえない。合併についていろいろ言われているが、メリット・デメリットについての結論は簡単に出ないし、出すべきではないと思う。村を預かる者として合併を誘導するような発言は慎重にしなければと思っている。慎重すぎて何もしていないと言われれば致し方ない。私は、合併に反対だということではなく、本村は地理的に離れているということで、慎重に見極めていきたい、質素でもいいから現状で文化を守っていければと考えているが、村全体の問題であり、精力的に勉強をしていかなければならないので議会と知恵を出し合ってやっていきたい。

議員 小泉首相になってから効率一辺倒の動きが激しいが、下北山と良く似た地域にとっては非常に不利益をこうむる政策、極論からいえば地方に住むなという政策だと思っている。交付税の段階補正が見直され、減額されてきているが村財政の見通しを村民に説明する必要があると思う。一番情報が集まる行政幹部の方々で合併問題に関する研究会を立ち上げ、下北山の情報提供をしていただきたいと思う。

村長 行政と議会が一体となった研究会を立ち上げたいと思う。(議会便り第10号)  

6月6日

役場職員・議員・各区区長などを対象に合併問題に関する勉強会。(奈良県庁地方課の担当)

7月22日 和歌山県北山村村議会と合併に関する情報交換会(北山村)
9月7日 合併フォーラム(大宇陀町)
9月9日 下北山村合併問題検討委員会を立ち上げ
9月27日

時事通信9月27日 官庁速報 自民党地方行政調査会の「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」(西川公也座長) は、市町村合併について論点整理 ◎1万人未満は窓口業務に限定 =交付税の「段階補正」も減額= 市町村合併促進で自民PT

 自民党地方行政調査会の「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」(西川公也座長) は、市町村合併について論点整理をまとめた。人口一万人未満の市町村を「小規模自治体」と定義し、業務を住民票交付や転出入届の発行など窓口サービスに限定することや、人口が少ないほど手厚く配分される地方交付税の「段階補正」を見直すことなどで一致した。小規模自治体の権限を縮小することで、規模拡大に向けた合併の取り組みを促進させるのが狙い。同チームは、十月中旬にこうした内容を盛り込んだ中間報告を取りまとめ、政調審議会で機関決定した上で総務省などに実現を働き掛けていく方針だ。

 論点整理では、小規模自治体の窓口サービス以外の業務は、近隣の市町村または都道府県に肩代わりしてもらう制度を検討するとしている。段階補正の見直しは、人口四千人まで人口が減るにつれ徐々に割増率が高くなっている現行制度を、人口一万人で割増率の引き上げをストップする案を例示した。

 また、二〇〇五年三月で期限切れとなる市町村合併特例法は延長しないことを確認。同法に基づく市制移行に必要な人口要件の緩和措置(四万人を三万人に引き下げ)については、〇四年三月までの期限をさらに一年延長するよう求めることを決めた。

 このほか、都道府県にも協力してもらうため、知事に対し、市町村に合併協議会の設置を勧告できる特例法一六条第二項の規定の積極的な活用を要請する方針。同チームは、中間報告をまとめた後、都道府県の在り方、都道府県議会と政令市議会の関係などについてさらに議論する予定だ。

10月17日 議会 町村合併に関する調査特別委員会、村長の任意協議会加入の方針を了承
10月29日 議員研修 群馬県上野村(下北山村と同じように県境の村です。)黒澤 丈夫 (くろさわ たけお) 村長から、自民党の地方自治に関する検討プロジェクトチームの論点は憲法に抵触する疑いがあるとお聞きしました。

市町村の大規模合併論に反論する 黒澤 丈夫  プロフィール

大正 2年 群馬県上野村生まれ・昭和 6年 群馬県立富岡中学校卒業・昭和11年 海軍兵学校卒業・昭和40年 上野村長就任(現在10期目)

昭和60年 群馬県町村会長就任・平成 7年 全国町村会長就任・平成11年7月 全国町村会長・群馬県町村会長退任

著書 「道を求めて

-憂国の七つの提言-」、「過疎に挑む」、「山村は、いま」

 昨今、人口当たりの投資効果や都市的発想に捕らわれた考え方をする人達から、市町村を合併して、力の強い、人口の多い自治体をつくれとの声が高いが、私は、この合併論には、憲法に謳う、自治の思想を無視する暴論として、反論せざるを得ない。以下その理由を述べると、この合併を強行すれば、国土の約2分の1を占める山村や離島等に在住する国民は自治に参加する立場を、大きく失うことになる。地方自治の主旨は、地域住民に身近な政治行政は、その地域の住民の意志に基づいて、自分達で執行させることに在るが前記した人達の所論に従って生まれる新しい自治体は、市街地を中核とする市とならざるを得ず、その意志決定や執行は、多数決原理の下では、人口の多い市街地住民本位になり、人口の少ない山村や離島地域の住民は軽視される結果を招くからである。

 これは、理論による推論ではない。我々が、過去の市町村合併や農協、森林組合等の合併を通じて体験した結果によるもので、合併した地域の方が軽視されて、一般に衰亡が早いのである。合併を叫ぶ人は、投資効果を説くが、山村離島等の住民は、自治の権限を奪われて、投資を求める声すら小さくさせられるのであるから、自治そのものを失うのである。合併論を叫ぶ人には、主張する合併の結果、国土の広大な地域で、自治権を失う国民が出ることを考えてもらいたいのである。

人口当たりの投資効果論や都市的発想による自治体合併論は、地方においては、本来、住民に緊密に参加させる自治によって、きめ細かい政治行政をさせようとする、憲法に定める自治の思想と、相容れないところが多い。自治は同一の自治社会に在住する人達が、連帯協力して実行するもので、地域住民相互の間に、同一自治体の住民であるとの連帯意識が在らねばならない。而してこの連帯意識は、同様な環境下に居て、相互に激しく交流する中に生まれるもので、単に名目上、同一自治体に居住するだけでは生まれ難く、比較的小さい地域社会の中に生まれるものである。遠く離れて住む市街地と僻遠の山村離島の住民に同じ連帯意識を持てと言っても一般には無理なのである。

 また、地方自治は、住民が、己の属する自治体の政治行政の善悪に、利害を敏感に感じる範囲で行うべきもので、あまり広大な地域や大人口の下では、本来実行し難いものなのである。このことは、夙に地方分権を主張された石橋湛山先生が、大正14年に社説の中で説いて居られる。参考にそれを記すと、「地方自治にとって肝要な点は、その一体を成す地域の比較的小なるにある。地域小にして、住民がその政治の善悪に利害を関すること緊密に、従ってまたそこに住まっている者ならば、誰でも直ちにその政治の可否を判断することができ、同時にこれに関与しうる機会が多いから、地方自治体の政治は、真に住民自身が、自身のために、自身で行う政たるを得る。」(石橋湛山評論集、岩波文庫)ここに私が、前述してきた合併論を暴論だと呼ぶ論議がある。自治体に属する住民の一部に自治に関与出来ない様な合併論は、全く自治を忘れた暴論なのである。

 大規模な自治体は、都道府県に於ける自治と大差なく、真に住民が参加が出来る、国家の底辺を成す自治体とは成り得ない。住民が自治に関与出来る自治体には、前述してきたように、自ずから大きさに限度がある。従って、市町村数を大幅に少なくする様な合併論は、都道府県に国家の底辺の自治をせよと言うのと大同小異で、更に小さい自治体を、その中に必要になる。

 投資効果は、人口当たりで求めるだけでは解析不足だ。国家という概念の中には国土もあるのだから、国土面積当たりの投資効果論があるべきである。国土なくして国民生活はあり得ないのに、人口だけを重視して国土を忘れた自治体論議は、余りにも人に捕らわれて、人間生活を忘れた発想ではあるまいか。

11月1日

町村なくし市に再編 02.11.2朝日新聞 地方制度調査会西尾副会長私案

議論たたき台に

 地方分権の担い手である自治体のあり方を検討している地方制度調査会の西尾勝・副会長(国際基督教大学教授)は、

1日の同調査会の専門小委員会で、市町村合併の進め方に閲し、将来は市を基礎的自治体にして町村をなくしていくという案を提出した。合併特例法が切れる053月以降は、現在のような財政的な特典をつけず強力に合併を推進するとしており、「自主的合併」から「強制合併」への転換をうかがわせる内容だ。

 自民党の地方自治に関する検討プロジェクトチームも、合併せずに残った人口

1万人以下の自治体について、業務を窓口サービスに限定する方針を確認している。西尾実はこれと軌を一にしたもので、今後の議論のたたき台として、来年3月の中間報告の方向付けに大きな影響を与えるとみられる。「アメからムチ」への流れが見て取れることから、全国で進む市町村合併の動きに一層拍車がかかりそうだ。

 西尾案は、福祉や教育、まちづくりなどの事務をすべて処理する基礎的自治体として市を位置づけ、人口が一定規模に満たない自治体の解消を目標とすべきだとした。そのうえで、特例法の失効後は、合併によって「解消すべき」自治体の人口規模を法律で明示し、都道府県や国が指導するとした。案には明記されていないが、人口

1万人程度が念頭にあると見られる。合併せずに残った自治体については@新制度を創設して権限を縮小し、特例的に扱うA他の自治体に編入する、を提案している。

 @は、取り扱い事務を窓口サービスなどに限り、他の事務処理は都道府県に義務づける。組織や職員は簡素化し、首長や議会は置くが議員は原則として無給。助役、収入役、教育委員会などは置かないことなどを検討するとしている。

 Aは、離島など@よりもさらに規模の小さい市町村が念頭にある。基礎的自治体に複数の旧市町村が編入され、一定期間後は基礎的自治体の内部団体になる。 この日の小委員会では、「自主合併を基本とすべきではないか」などの意見が出たという。

地方制度調査査会・西尾案(要旨)

 地方制度調査会の西尾勝副会長が明らかにした「今後の基礎的自治体のあり方について」の要旨は次の通り。

 今後の基礎的自治体は住民に最も身近な団体として、都道府県に極力依存しないものにする。ある程度の規模の職員集団、事務処理に十分な権限、これを支えるに足る財政基盤が必要だ。規模はさらに大きくなることが望ましい。福祉、教育、まちづくりに関する事務や、市が現在処理している程度の事務は、基礎的自治体で処理できる体制を構築する必要がある。

 財政支援を盛り込む合併特例法が失効する

054月以降は、同法と異なる発想で、一定期間でさらに強力な合併を推進する。具体的には、合併対象の市町村人口規模(基準)を法律で示し、都道府県や国が基準以下の市町村の解消を目指し、合併を推進する。それでも基準未満の団体は、次のア案、イ案などで合併を検討する必要がある。

(ア)事務代行方式

 一定の人口規模未満の団体に、これまでの町村制と異なる特例的な制度を創設する。たとえば人口△△未満の団体は申請で、事務を都道府県に代行してもらう自治体に移行できる。それより少ない人口

00人未満は、これに移行するか、ほかの団体との合併を一定期日までに選択しなければならない。

 この団体の事務は窓口サービスなど一部に限り、義務づけのない事務処理を都道府県が行う。組織・職員は極力簡素化し、首長と議会(町村総会)を置くが、議員は原則無給で、助役、収入役、教育委員会、農業委員会は設置しない。

 (イ)編入町村方式

 人口××人未満の団体は、ほかの基礎的自治体に編入する。その内部団体(編入町村)は、名称は旧町村のままでも可能。編入先は市町村の意見を聞き、都道府県議会の決定をふまえて知事が決める。事務は法令による義務づけをなくし、条例で定める。組織は大幅に簡素化し、財源は基礎的自治体の移転財源をのぞき、住民負担でまかなう。

11月14〜15日 議員研修 長野県泰阜村・愛知県富山村。

泰阜村は交付税削減に対応できるよう、経費削減の一つとして、助役を置かない条例の制定や自民党地方行政調査会の「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」が、市町村合併をせずに残る人口1万人以下の「小規模自治体」の業務を窓口サービスに限定するなどの動きに、朝日新聞紙上で「自治体小規模ではいけないの?」と題する意見を発表するなど、地方自治を守る立場で積極的に情報発信している、松島 貞治(まつしま ていじ)村長にお話をお聞きするなど下北山村と同じように県境の村で頑張っておられる首長と意見交換を行いました。

助役を置かない条例を定めて 長野県泰阜村 松島 貞治(まつしま ていじ)

9月議会で助役を置かない条例を可決していただいた。今年の3月いっぱいで前助役が退任し、助役不在で村政を運営したきました。助役退任のときから、この財政状況では、一般職員ばかりに痛みを要求するだけでなく、特別職も考えないと、しかも何%かの報酬カットという方法でなく、特別職一名減することも覚悟しなければと思っていました。ちょうど8月が任期で、三度村長選挙へ立候補も決意し、その決意の中でも、特別職の減員についても多少は触れてきました。8月の選挙で三度当選することができましたので、私の決意を示す意味から「助役を置かない条例」を提案したところです。議会も村民もある程度予想していたことだったので、まさかこれほどマスコミ等で取り上げられるとは予想外のことだったと思います。

 さて、泰阜村の一般会計の予算規模は概ね25〜26億程度です。その内歳入の50%、約13億は地方交付税です。経済成長とともに若者が都市へ流失した地域では、高齢化が進み、自己財源の確保は極めて厳しい状況です。これは日本の政策的な問題です。一生懸命働いて、日本の労働力を作り出したいまの高齢者が安心して死んでいけるような施策を、地方自治体は展開しています。地方出身者が都市で税金を納め、それを地方交付税で還元し、その交付税で田舎の行政運営をするという相互助け合いのいい政治です。ところが、その地方交付税が地方、特に過疎の山村に手厚過ぎる、田舎は行政コストがかりすぎるという声に押され、交付税の削減が始まりました。泰阜村でも平成11年度から14年度までに1億4千万円の交付税が減額されました。それまで、UR対策、景気対策の補正予算等国の施策に協調して借金を重ねてきました。その借金返済もあり、村の財政状況は危機的状況です。泰阜村でも職員を減らすなど努力をしてきましたが、急激な地方交付税の削減で戸惑っています。ではどうするか。国が悪いといっているだけでは、解決できません。過疎の山村の行政コストがかかりすぎるという批判があるとすれば、我々も見直すべきは見直さなければなりません。人口2200人の村の特別職が4人いるのかどうか、いままでなら聖域ですが、そこまで踏み込んで考えよう、これが出発です。その他の聖域にも踏み込まざるを得ません。しかし、行政として守るべきものは「住民」が安全に、安心して暮らすことであり、幸せな人生を送ることです。高齢化率の高い泰阜のような地域では、高齢者福祉は必要です。医療過疎地にあって医療の提供も必要です。子育て支援も必要です。こうした行政の取組みがあるからこそ、日本という国が動いています。基礎的自治体の役割がそこにあります。自治体を大きくすればコストが安く、構造改革だ、その考えは過疎の山村で生きている人間からすると、それは住民不在の発想であるとしか思えません。財源が減らされても必要なことはやらなければなりません。村民に痛みを訴える前に、執行側がどこまで経常経費の削減が出来るのか。いまここへの挑戦です。助役を置かない条例が第一歩ですが、どこまでできるのかわかりません。収入役を設置しない村もあります。思いは同じかもしれません。

 我々の努力を認めず、基礎的自治体は1万人以上とあくまでいわれれば、合併しかありません。山深い地域もたくさんある日本が田舎を軽視し、効率だけを追及し、人間の幸せよりお金を大切にする政治を行うのなら、私の負けです。そんな日本でないと信じていますが・・・・・。

02.10.11朝日新聞 自治体小規模ではいけないの?

 自民党地方行政調査会の「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」が、市町村合併をせずに残る人口1万人以下の「小規模自治体」の業務を窓口サービスに限定し、地方交付税の優遇策も見直すことなどで一致したと報じられた。交付税の問題は別にしても、1万人以下の町村の権限を縮小し、是が非でも合併で規模拡大を図るという考え方にあぜんとしている。

戦後日本の急激な経済成長は、東京への一極集中などにより過疎と過密という不均衡な地域社会をつくり上げた。現在の小規模町村の多くは、若者が都市に流出し、残された親が介護を必要とする高齢者になっている地域だ。田畑を耕し、山の手入れをしながら国内の農業や林業を支えてきた、日本のふるさとである。

 私たちは昭和の大合併の経験から周辺部の山間地に人がいなくなり、どんどん荒れ果てていく姿を目の当たりにした。これに対して、たとえ人口が減少しても、そこが自分たちの住む地域である以上、代表を選んで地域のために汗を流す・・・・この自治のスタイルこそ憲法が保障する住民自治であり、民主主義の原点だと考えてきた。

 各町村は今、それぞれの個性を生かし、自治体ごとの実情に応じて住民ニーズに沿う施策を展開し、地域の発展のために不断の努力をしている。だからこそ小規模ながらも生き延びて、今日の国土を維持している。人口が少ないというだけで、自治体がその権限を縮小されることになれば、憲法が規定する地方自治の本旨を否定するものと言わねばならない。

 私の村は人口2200人の典型的な過疎の山村である。高齢化率が高くなった15年前から高齢化対策こそが最重要課題ととらえ、在宅福祉を中心とした施策を進めてきた。医療費を低く抑え、福祉を充実させるという努力を継続して介護保険の保険者として国に迷惑をかけず、安心できる老後を住民に提供している。

 一方で、近隣の町村には、高齢化率が低くて、福祉より環境に力を入れているところもある。それらの町村が一緒になれば、特色が薄れて独自施策ができなくなる。

 合併問題については、村は周辺17市町村との研究会で論議を重ねてきており、初めから「合併しない宣言」をするつもりはない。だが、小規模ゆえの行政コストが「お荷物だ」との批判には、経費節減の努力でこたえてきたつもりだ。

 村民に痛みを要求する前に、先の議会では「助役を置かない条例」を制定した。交付税の削減にも耐えられるよう、業務の外注や広域連合によるカバーなどで、行政のスリム化に努めている。人件費などの聖域にも切り込むつもりだ。

 しかし今回の方針は、こうした努力を重ねる町村の日立の道をも絶ち、「破産宣告」するに等しい。そのようにして、小さな町村を半ば強制的に合併させることが、本当に住民の利益になるのだろうか。

 小規模であっても村は存続させたい。それは、そうしないと村の住民が安心して老後を迎え、幸せな死を迎えられないからである。村の住民が幸せであることば、国民が幸せであるということに他ならない。

 政治の本来の役目は、行政効率論議より、国民の幸せをどう守るかでなければならないはずである。豊かになったはずの日本で、必死で努力している小規模自治体の権限を縮小し、地方自治を認めず、無理やり規模を拡大させて行政コストを下げることで、ほんとうに国民の幸せが守れるのであろうか。

11月18日 町村合併講演会(スポーツ公園 四日市大学教授 氏)
1121

 

「今後の基礎的自治体のあり方について(西尾私案)」に対する意見

全国町村議会議長会

会長  安原 保元

1

地方制度調査会の姿勢について

○西尾副会長は、

924日及び930日開催の専門小委員会において、地方分権推進委員会が合併に取り組むに至った経過について、「本来、地方分権推進委員会は合併に取り組む考えはなかった。しかし、第1次勧告の前後、政治の力で合併に取り組まざるを得なくなった。合併の震源地は政治の力である。」旨語り、地方制度調査会の姿勢について、「地方制度調査会程度では政治の流れに抵抗できるものではない。したがって、平成174月以降も、合併を推進していかざるを得ない。」旨語った。

○これは極めて重大な発言である。前者の発言は事実を語るものであり、過去のことであるが、後者の発言は現在審議が進行中の地方制度調査会の姿勢に係わることだけに、ゆるがせにできない。現在、各地で合併を巡って色々議論がある実態を直視せず、政治の流れの名の下に、更なる合併の推進を当然のものとする考えは承服できない。我々は、

925日に発表された自由民主党「地方自治に関する検討プロジェクトチーム」の中間報告案についても意見を提出するとともに、47都道府県において町村長と連携し運動を展開して

いる。我が国を代表する学識経験者で構成する専門小委員会は、政治の流れの如何にかかわらず、「あるべき地方自治のあり方」を堂々と論ずべきではないだろうか。そうでなければ、我々合併の渦中にある町村の声は一体どこで聞いていただけるのだろうか。是非、町村の意見に真摯に耳を傾ける姿勢を貫いていただきたい。

2

 基礎的自治体について

1)住民自治について

○憲法第

92条でいう「地方自治の本旨」は、団体自治(住民にサービスを提供する「行政体」)と住民自治(住民が民主主義を実現する「政治体」)の結合した概念と理解されている。確かに、明治以降、「行政村」つまり、「行政体」としての役割の増大を念頭に、市町村合併が推進されてきたことは事実である。しかし、今日においても、この延長線上でものを考えるべきかとなると、疑問である。地方分権推進委員会最終報告が、「自己決定・自己責任の原理に基づく分権型社会を創造していくためには、住民みずからの公共心の覚醒が求められている」とし、「公共サービスの提供をあげて地方公共団体による行政サービスに依存する姿勢を改め、(略)地方公共団体の関係者と住民が協働して本来の「公共社会」を創造してほしい」としているように、これからの自治を考えるに当たっては、住民の力を一層重視すべきものと考える。としたとき、今後の自治体運営に当たっては、住民そのものを、単にサービスの受益者と考えるのではなく、サービスの提供主体として位置付けていくことが求められていると思う。

○然るに、「私案」

p1p3にかけて述べられている「(1)充実した自治体経営基盤」の論旨は、終始、住民を相変わらずサービスの受益者としてのみ位置付けるものであり、それ故に、「今後の地方分権時代の基礎的自治体においては、(略)「行政村」として期待される役割が一層増大することが想定される」ということになり、「経営単位の再構成」の観点から現在行われている市町村合併を積極的に評価し、結局、「さらなる合併の強力な推進」に繋げていくという展開になっている。しかし、これは、明らかに時代に逆行する。今後の地方分権時代の自治は、人口の大小に拘わらず、むしろ、様々な行政分野において、住民が、受益と負担の自覚の下に、行政に積極的に参画していくことではないだろうか。つまり、これからは、より住民自治が注目されなければならないと考える。

○住民を公共サービスの提供主体と位置付けたとき、行政と住民の距離はできる限り近いことが重要である。したがって、住民自治や新しい公共空間の形成は、基礎的自治体の規模拡大をまって初めて可能とする考えには与し得ない。現に、人口は少なくても、行政と住民の協働により各種の事務を立派に実践している町村は多い。地方分権の時代の到来を待ち望んだ国民は、住民としての自己決定権が大いに尊重されるべきことを望んでいるはずである。

2)基礎的自治体の事務について

○現在町村が処理している事務と市が処理している事務との間に、基本的に大きな差があるとは考えていないが、仮に、現在町村に義務付けられていない事務であって住民にとって身近な所で処理する必要があるものがあるならば、町村長は、都道府県知事と協議して事務権限の移譲を受ければよく、その道は、地方分権一括法によって開かれている。まさに、こうした対応こそ、地方分権時代の自治なのではないだろうか。したがって、一律に、市の事務をもって基礎的自治体の事務とすることは自己決定・自己責任の原則に反するものである。

○「今後の基礎的自治体は、(略)都道府県に極力依存することのないものとする必要がある」との指摘があるが、如何に人口の少ない町村であっても、これまでも都道府県へ依存することなく、市町村同士の広域行政によって対応してきたことを忘れるべきではない。

○また、効率的な行財政運営についての指摘があるが、もとより重要なポイントであり、異論はない。しかし、この原則は、人口の大小に拘わらず、それぞれの自治体が遵守すべき原則であり、現に町村も、例えば議員定数を減ずるなど、積極的に行政改革に取り組んでいる。したがって、この原則をもって合併の根拠としようとするのであれば、それは間違いである。

3)結論

○現に、人口が少なくても、立派に自治を実践し住民自治を徹底している町村があり、これからも合併をしないで存続していこうとしている町村がある場合、そうした町村の「自治のあり方」は尊重されるべきである。然るに、かかる町村の意向や住民の意識とは無関係に、一定の基準を機械的に適用して「小規模町村」と位置付け、その「解消」を図るということは絶対に認めるわけにはいかない。

○もちろん、現在、我が国が未曾有の財政危機にあることは承知しているが、その危機は本来、市町村合併を手段として克服すべきものではなく、本道があるはずである。すなわち、地方分権推進委員会最終報告が「税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠の手段だといえる」と指摘しているとおり、「税財源の地方分権」こそが行われなくてはならない。

3

 第2次合併推進運動について

○平成

1741日以降、なお合併しない市町村を相手に、一定期間、財政支援策に拠らない強力な合併を推進すべきとあるが、以上述べてきたところからも明らかなように、合併をしないこと自体が住民の意思である以上、この住民の判断は尊重されるべきである。にも拘わらず、第2次合併推進運動を展開することは、地方分権の大原則である「自己決定・自己責任」を無視することであり、地方自治を否定する以外の何ものでもない。

○仮に、第

2次合併推進運動が昭和の大合併時の新市町村建設促進法の手法を想定しているとするならば、そうした手法を採ることは、合併をあくまでも関係市町村の自主的判断に委ねている都道府県知事の考えを抑え込むことになり、このことは、知事の自己決定権を無視し、地方自治の本旨に反するものである。

○山林は、現在、身近に山に入ることのできる山村の地道な努力があって初めて、荒廃を免れている。事務配分さえ、都道府県や再編された基礎的自治体に行えば、それで山林の崩壊が止まるとの認識は、間違いである。むしろ、山村が元気になるよう、知恵を絞って協力するのが都道府県や中心市の役割ではないだろうか。

4

 第2次合併推進運動後の方策について

1)事務配分特例方式について

○「解消」を前提とした一定人口規模未満の町村について、一定期日までに、合併か、この方式の選択を義務づけるとのことであるが、合併を拒否してきた町村にとって、残された道はこの方式を選択するしかないことになる。しかし、当該町村においてこの方式を選択することは、法律で義務付けられた事務については、基本的には窓口事務しか処理できないことになり、その大半は強制的に取上げられ都道府県に配分されるということになる。こうした選択を義務付けることは、人口が少なくても、現に法律で義務づけられた事務を広域行政制度等を活用しながら立派に処理してきている町村の実態を無視し、自治を踏みにじるものであり、到底認めるわけにはいかない。

○この方式を選択した町村であっても、任意の自治事務は処理できるから憲法上の地方公共団体であることに変わりはないとのことであるが、自治体の処理する事務の多くは法律によって義務付けられていることを考えると、結局、「憲法上の地方公共団体ではあるが基礎的自治体でない」という、まことに形だけの自治体を認めようとするものに過ぎず、到底受け容れることのできるものではない。合併を拒否してもよい、しかし後に残されている道は形だけの自治体だというのでは、まことに血も涙もない制度と言わざるを得ない。

2)内部団体移行方式について

○何ゆえに、一定規模未満の町村は、他の団体に強制的に編入し、「解消」しなければならないのか。当該町村が現に存続していることは、それなりの地理的事情、歴史的事情、住民感情等が横たわっていることを知るべきである。こうしたことを無視し、当該町村を「解消」することは、地方自治の否定である。

○編入先は都道府県知事が決定するとのことであるが、果たして知事は決定し得るものであろうか。知事をそこまで追い込むことは、知事の自己決定権を無視するものであり、地方自治の本旨に反するのではないだろうか。

5

 総括

○現在、我が国が未曾有の財政危機にあり、地方もその危機の克服に協力していかなければならないことは当然である。しかし、その克服の方途は、

2の(3)で述べたように、「税財源の地方分権」である。

○この税財源の地方分権の道筋が明確にされないまま、合併を強要することは順序が違う。まず、第

2次分権改革として、税財源の地方分権を実現させることこそ、先決である。そして、これを踏まえて初めて、市町村は、合併か存続かの自主的な判断が可能となるものと考える。

○こうした順序を経ずに、平成

174月以降、第2次合併推進運動を展開し、町村から基礎的自治体としての地位を剥奪し、町村を解消しようとする「私案」は、地方制度調査会のこれまでの輝かしい歴史を踏みにじり、自治を破壊する以外の何ものでもなく、絶対に認めるわけにはいかない。
11月20日〜12月5日 下北山合併問題検討委員会主催で村民に対して地区別説明会
12月5日 大淀町・下市町・黒滝村・天川村・吉野町・東吉野村・上北山村の7町村の任意協議会へ加入
12月12日 下北山村議会で市町村合併に関する意見書を可決

市町村合併に関する意見書

 21世紀が地方の時代であるとの認識のもと、平成7年に地方分権推進法が制定され、平成12年4月1日には地方分権一括法が施行された。これにより各自治体では「自己決定、自己責任」という地方分権の理念による、それぞれの特色を生かした地域づくりをおこなうべくその課題に取り組んできた。一方、今日、地方自治体が直面しているのは、行財政改革をはじめ市町村合併等の極めて厳しい現実である。小規模市町村の多くが自主財源に乏しく、これまで国によって手厚く保護されてきた地方交付税をはじめとする財源保証に頼るほかないのは事実であり、国の厳しい財政状況を背景に構造改革、行財政改革の一環として市町村合併が進められてきたことについても重々承知しており、その対処に鋭意努力しているところである。しかしながら、昨今、政府の地方制度調査会専門小委員会における西尾私案及び与党自民党地方行政調査会の論点内容は、これまで政府が唱え勧めてきた「自主的な合併」「住民主導による合併」の範疇を大きく逸脱し、地方自治制度そのものを根底から揺り動かす内容であり、到底容認できない。地球温暖化が世界的視野で憂慮されている折、わが国においてそれを防止する役目を果たしてきたのは、小規模町村の住民が営々と守り育んできた田畑や山林であることは疑いのない事実である。今、行財政の効率論や数の論理のみにとらわれた合併を強要するならば、小規模町村はその役目を放棄し、自ら崩壊の道をたどるほかはない。

 よって、政府においては、下記の事項について格段の配慮をされるよう強く要望する。                                                      

1 政府地方制度調査会や関係各機関にあっては、市町村合併の推進案等が憲法にある地方自治の本旨に反することのなきよう慎重審議に配慮されたい。

2 21世紀は人々の価値観がいっそう多様化する時代であり、地域社会もそれを受け止めるよう努力しなければならない。このときにあたり画一的な合併の推進は、かえって地域の個性を生かした分権型社会の創造に逆行するものである。市町村合併にあたっては、財政のみにとらわれることなく、真に地域の状況に合わせたものとなるよう配慮されたい。                                                     

3 離島、山間僻地等の合併しがたく、またその効果が望めない小規模自治体に対しては、諸般の事項を勘案し、合併を強要することなく自立できるよう制度整備をされたい。

4 国土の7割を占める市町村が、今まで果たしてきた国土や食と自然環境の保全、育成の役割は 21世紀の今日、再認識され、今後益々その重要度が増大しているところである。このようなとき、小規模町村の崩壊とその大いなる使命の放棄につながる強制的な合併は、断じて受け入れられない。よって、自然環境の保全と、小規模町村の存続は表裏一体のものであることを再認識され、その存続が図られるよう強く要望する。      

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成14年12月12日

                奈良県下北山村議会議長 久保利 良一

12月13日 12月6日開催の全国町村議長会役員会において、第27次地方制度調査会に提出された、いわゆる「西尾私案」への対応策が決定されました。

平成

14126日全国町村議長会役員会で決定した「西尾私案」粉砕のプログラム

 来年

3月末には、第27次地方制度調査会から、現在審議中の基礎的自治体論について中間報告がなされる予定である。しかし、我々(全国町村議長会)としては、中間報告が「西尾私案」に沿った内容になることは、絶対に阻止しなければならない。そこで、以下のプログラムによって阻止運動を展開したい。

@ 各町村において、この

12月議会もしくは臨時議会「町村自治確立に関する意見書」を採択し、自治法第99条の規定に基づいて政府・国会に対し提出する。

A 安原会長名で、全国紙(新聞)等に投稿し世論を喚起する。

B 自治法第

263条の3の規定に基づき、本会の名において内閣に対し意見を申し出、国会に対し意見書を提出する。

C 来年

225日に全国町村会と共催で「町村自治確立総決起大会(仮称)」を開催する。

D 総決起大会の前に、各

47都道府県において、地元選出の国会議員に対し、文書で「西尾私案」に賛成か反対かの確認を取る。賛成の国会議員に対しては、来るべき総選挙において応援できない旨、伝える。

E 総決起大会の前に、全国紙(新聞)等に一面全面広告を出し、世論を喚起する。

F 総決起大会の実行運動方法の一つとして世論に訴えるため、「デモ」を実行する。

なを意見書は、1 国は、地方自治制度の検討に当たっては、町村の自己決定権および住民自治を尊重し、町村自治の確立を前提とすること。2 早急に自治の基盤である税財政制度の将来像を明らかにし、税財源の地方分権」を早急に実現すること。

12月20日 奈良自治体問題研究所・市町村合併講演会(橿原市 京都大学教授 岡田 知弘氏。)この席でいただいた、市町村合併を考える−対応と視点−の小冊子が参考になりますので掲載します。

「市町村合併を考える」(奈良自治体問題研究所)

T何のために合併するか

1

 財政の改善を求めての合併

1)「貧乏な団体」が寄り集まって大きな団体になっても「金持ち団体」になるわけではない。合併によって解決はしない。ただし、裕福な団体に吸収合併されるような場合は別。

2)「合併に関する財政措置」の内容

 @ 交付税の算定替 10年間従来額保障、その後5年間漸減

 A特例債発行 元の団体の普通建設事業費の数年分にも及ぶ特例債の発行とその元利償還金の70%の地方交付税措置

 B その他の措置 比較的小額

3)「合併に関する財政措置」の評価

 @ 将来的には、交付税額は従来より減る。一時的な措置である。

 A 特例債については、現実に使える財源が増えるように思われるが、「地方債発行による公共事業の濫発」という失敗した財政運営の繰り返しになるのではないか。

 B これらの措置により地方交付税会計の赤字を膨らませ、それが地方の負担に跳ね返る。その点で地方財政の危機の本質的解決にはならないのはもちろんとして、現実に約束どおりの交付税措置が行われるかどうかも不確実である。

2

 規模拡大によるいわゆる 「一般的な合併のメリット」を求めての合併

(1) 一般的な合併のメリット・デメリット

メリット                            デメリット

 

行政の簡素・効率化

行政サービスの質的向上(専門性)投資の重点化

広域的事業の円滑化

都市規模の拡大

 

政治的代表の低下

地域格差の発生

負担格差の発生

地域生活体系の崩壊

福祉・防災など身近なサービスの低下

 

2)合併により期待されているのは、意思決定の効率化、行政のたて割専門化、都市機能集中、大型の施設整備等であり、当然、合併後それらが追及される。サービスは高いほうにそろえ、負担は低いほうにそろえ、各種施設は残して住民に不便をかけないようにするなどの対策は一時的なものに過ぎないだろうし、合併前の地域の意見を十分尊重するような仕組みを設けたとしてもいずれは形骸化するだろう。

3)合併後の同規模団体との比較から職員数削減による財政の改善が期待されているように思える。しかし、行政は、企業経営と異なり、規模の利益による効率のみ追求すればよいものではない。それぞれの分野で住民の状態や要求等を把握しより適切な行政サービスを行う総合性も大切。効率がサービスの質の低下となることもある。 管理部門の人員は、規模の利益を受け経費節減になるようにも思えるが、人や金の管理を行うものがより住民より離れるほど、実態がわからずより無駄な使われ方をするということもある。人員減による節減をあまり大きく評価すべきではない。

4)高度な専門性が規模の利益により期待されるとも言われるが、行政に必要なのは、高度な専門性そのものではなく、高度な専門知識を活用し、総合的に執行していく能力である。そうであれば、高度な専門性そのものは、他団体あるいは民間の能力を活用してもいいのではないか。

3

 「まちづくり計画」に基づく具体的なメリットを求めての合併

1) 自らの団体の中で住民参加の「まちづくり計画」の取り組みが行われており、その計画の中で、隣接市町村と合併することでよりよい「まちづくり」が展望される場合「合併協議会」の設立等の取り組みに進むことになろう。

2)「合併協議会」等で住民参加を保障しながらそれぞれの「まちづくり計画」のすりあわせを行い、双方にとって望ましい「まちづくり計画」が出来れば、合併へ向けて一歩前進することになろう。

3)そのような場合は、合併の具体的なメリットも期待されるであろう。いずれにしてもそれは、期限を切った政府主導の合併手続きとはそぐわない。

U 合併についての賛否の判断

1)基本的には、12の合併には賛成できない。3については、具体的に検討していくこととなる。

212の場合で合併手続きが一定程度進んでいる場合、基本的立場のみでの反対は説得性がないであろう。合併後の「まちづくり計画」を提出させ、判断することとなる。

3)判断の基準として、私たちの地域はこうあるべきだという自らの「まちづくり計画」が必要であろう。それがなければ、重要事項を押さえた「構想」だけでもいいから早急に作ること。

4)合併後の「まちづくり計画」は、少なくとも20年後を展望したもので、行政の各分野における重要事項・論議が二分されているような事項についての基本的事項が含まれていることが要求される。

5)合併後の「まちづくり計画」と合併の必要性との整合性はあるか。

6)最終的には住民投票の判断を仰ぐべきである。

V 市町村合併推進の底流にあるもの

 市町村合併が協力に推進されるのは、市町村の再編により府県を空洞化し、道州制を導入すること、それにより国の自治体支配体制を簡略化すること、それに地方交付税制度そのものを廃止するという国・財界の意向があるからである。

1) 分権化の名の下に国の業務を地方へおろし(財源移譲はなし)、国の業務をスリム化する。

2)地方の行財政基盤の強化の名の下に、地方交付税のアメとムチで市町村合併をすすめ、さらに道州制を導入する。

3)その結果、実質的には中央集権的なコントロールが強化され、財政の都市蘭への重点的投下を行い、財界の意向に沿った生産基盤の強化をすすめる。

4)また、この方向は、民間活力の活用や自助努力を強調する政治。行政の動向とも同一のものである。

W市町村にもとめられるもの

(1)これからの社会は、大量生産・大量消費で物量的な豊かさを追い求めるのではなく、持続可能な社会の実現が求められる。地域経済としても、それぞれの地域が大規模生産を生かす生産基盤として単純な機能に特化する方向を目指すのではなく、地域の福祉、保健、文化、生活・物資等の需要をまかなえる産業を守り整えながら、その地域の特性を生かした産業を全国に発信していくようなきめ細やかな行政が求められる。

2)「日常社会生活圏に対応した行政」ということが合併のメリットとして言われているが、「日常社会生活圏」にもいろいろな「社会生活」があり、また、行動範囲としても「歩行または自転車」「自動車」 「電車」で異なる。行政が特にきめ細かい対応を要請されるのは「歩行または自転車」の範囲が重要ではないか。

3)広域的に行われる地域サービスに県の参加を求めていく方策も考えてみる。

4)環境・水源税として、都市部から一定の税を徴収し、山間地域に資源保護の施策財源として還流するシステムを国に要求していくことも大切である。

2003年(平成15年)2月17日

吉野郡合併検討協議会(上北山村) この日に法定協議会へ参加するしないを表明します。

3月議会一般質問

中谷議員                                       議会便りに添付した「合併問題」のアンケート結果で、現在の「合併枠組」については反対である。合併によるメリット、デメリットなどの情報が少なすぎる。合併しなければならないとしたら、生活圏である「熊野市」と。などの要望や反対運動が起こっており、浦向区、佐田区、万年若の会連合会からは「合併の意思表示の場である住民投票」の実施を求める、要望書が議会、村当局にも出ている。村長は村民からの意見や要望をどのように行政に反映していくのか。               

村長 村民が真剣に心を痛めて心配してくれていることをひしひしと感じ、今後も、より一層真剣に取り組んでいかなければならないと思っている。           

議員 今議会で、私は議員発議として「住民投票に関する条例案」を提出するこを予定している。村長は、村民が心を痛めているということを言われたので、条例案を提出したときに村長としては「やるということは、約束はできない」という返答であると思うが、予算等諸々のことについて申し送りをする等、実施について明確な返答をお願いする。

村長 村民の意向を尊重して、申し送り等きちっとして行きたい。

議員 3月5日付けで万年若人連合会から3項目についての要望が出ており、これには、「懇談会以降、合併問題検討委員会や村から合併情報が提供されていない、このような情報不足の中での合併論議は断じて納得できるものではない。」という厳しい意見もある。情報開示、住民投票の実施について、今後の対応を期待している。平成15年度予算は予算特別委員会で充分審議したいと思うが、あえて一般質問をするのは、合併問題の絡んだ厳しい時期に、どちらに転んでもやっていけるように考えると、そうとう厳しい予算を組まなければ、2億円足らないから、やっぱり合併しないとやっていけないという流れが行政側に作られるのではないかと思う。1時間40分もかかる町村と合併してもいいのかということを踏まえ、「法定協議会」に入り勉強するということになっているが、途中で抜ける場合もあることも考えれば、村民が納得出来るような予算を組むべきではないかと思う。15年度予算は行政のチェック機関として議会の見識を注視していると思っている。情報公開条例も出来ると思いますので、もっとオープンに論議し村民にもっと情報提供をして頂くことを期待し質問を終わる。

奥村議員 

 村が「合併する・しない」は最終的に村民の意思で決めて頂くのが本筋であると私は思っている。下北山が法定協議会抜けるということではなく、他の町村が抜けけて現在の枠組みが崩れ、下北山が単独で行かなければならないことになった場合、財政的な面が大いに関係してくると思う。今回のアンケートを見ても、合併もやむなしも「5通」位あったがかなりの部分で「下北山が好きだから」このまま行って欲しいとか、「若者が住めなくなってしまう」等々たくさんの意見があった。そういうことから、村民の多くはできるならば「自立」でいって欲しいということである。昨年の12月の定例会で野崎議員の質問で、「単独でやらなければならないことも、一方で検討しておかなければならない。事務方はこういうことも想定した準備をして頂かないと村民が困る。」と言う質問に対して、村長の答弁は、「検討は進めていくのが望ましいと思う。」と言っているが具体的にどのように進めて行くのが望ましいかお聞かせ願いたい。

村長 おっしゃる通り「検討は望ましいと」言っており、それについては今も同じである。一番大事なことは財政の問題でこれについても、すぐにということにはならないが、村の方で検討をなるべく早い機会に進め、議会あるいは村民の皆さんに知って頂く方向で進めたいと考えている。

議員 答弁ではなるべく早くと言うことだが、今日からでも明日からでもはじめないと遅くなると思う。是非とも職員に対して「自立」出来るかどうかの研究・調査のシミュレーション作業を実施をするように指示して頂きたい。村民の多くは「自立」してほしいと考えているし、私もそう思う。そのためには何を削ればいけるのか、特別職の給与を71万円から70万円に減額したことを村民に納得してもらえるのか。村民はできるだけスリムな形のものを要求すると思う。そういう意味からも、更に前向きに村長の任期の間に職員に対して、具体的に「自立」できるかどうかの研究・調査を早急に実施するよう指示頂きたい。さらに前向きな答弁をお願いする。

村長 大事なことであり、先程から実施すると申し上げております。又「法定協議会」についても今入ったばかりで、これから2年間かけて「合併」する、しないかの問題について取り組んでいくスタートに立ったわけですから、シミュレーションも早急に取り掛かりたいと思っておりますし、シミュレーションを作るとしても正確なものを提出しなければいけないと思っております。村としては、あくまでも冷静にちゃんと財政的数値を調べて正確なものを提示する必要があり、行政を預かるものとしては適当な数字を公表する事で村を混乱させることにならないよう、慎重に対応していくので、議員のご理解をお願いしたい。又、今この場で指示をするという約束をと言われても大変難しい。

議員 「法定協議会」で、「建設計画や色んな擦り合わせ」して、村民に合併問題の情報を提供するが、一方の選択肢として「自立」出来るのか、出来ないのかも選択肢になってくると思う。今後、下北山の行く末を村民に決めてもらう方法として、住民アンケート調査や住民投票で決める方法があると思うが、その時には、村の財政的な面を含めてやっていけるかどうかの下準備をしなければならないと思う。議会のアンケート調査でもわかるように、将来、「自立」していけるのかどうかということが村民は一番心配をしているところであり、合併については2番目ぐらいに考えている。私はこの問題が最重要だと思っているので、しつこいようだが再度答弁をお願いする。

村長 気持ちは同じである。「合併協議会」からシミュレーシヨンとかの情報が流れてくるがこれは合併への情報である。村自体の選択肢を示せと言うこともわかるが、今日、明日発表できるということではない。より慎重に村民が理解して頂けるような正確なものは簡単にできるものではないと先程から申し上げているがなるべく早い機会に進めていきたいと考えており、真剣に考え取り組んでいくのでご理解を頂きたい。 

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